9月14日 -黒い日記-

外が騒がしく目を覚ました私は、眠っている少女を起こさないように家を出た。


向かいの家の婦人と数人の男が泣いていた。


私は何事かと聞こうか迷ったが、そのまま家へと入り、起き抜けの少女と少し遊んだ。


隣の家の子供は相変わらず婦人の言うことを聞かないようで、怒鳴り声が響いていた。


私は手と服を洗い、仕事に出た。


同じ仕事場の男に昼飯を誘われたが、私は立ちんぼの女と握り飯を食べた。


私の家はどちらかと言うと裕福であった。


国の為に貢献しない成金とは違い、私は国に尽くした。


軍部の事情には詳しいが、生活は困窮している。


あの女と一緒にいると、そのような煩わしいことは全て忘れられた。


女は私の家に来たいと言ったが、私は断った。


女に煙草を一本渡した。


家に帰り、私は庭に桜の木の苗を埋めた。


いつか綺麗な桜が二本咲くだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る