第13話 学校作業員
「
「そうです、仕事の内容は、学校の掃除、庭の手入れ、用具備品の管理と修理等です。」
つまり、学校の用務員って事?
俺は、此の世界を理解して、自分が何をして行かなければならないかを、知る為に、此の世界で仕事をする事にした。
その為に
運命を星に決めて貰う事にした、
星が選んだ仕事は、ちょっと今の俺の識字力では理解出来ないので、その募集番号と同じ番号札を持って、受付のカウンタの列に並んだ。
暫くして、俺の順番になり、俺の担当の三十代位で真面目そうな男性職員は、俺が異国人だと分かって、仕事の内容を丁寧に教えてくれた。
内容は学校に住み込みで、学校の管理と掃除等をする人、つまり前の世界では
専用宿舎と三食付きの二十四時間勤務。
此の仕事の番号は999、番号は募集の古い順から数字が大きくなる、つまり、此の仕事は相当前から募集しているけど、誰も応募して無い事になる。
何故だ?
俺は受付の人に聞いてみた、
「此の仕事、住み込みが条件だけど飯も宿も支給で条件は悪く無いのに、何故、誰も応募して無いんですか?」
受付の人は簡単に、
「ランク4だからです。」
「ランク4?」
受付の人が言うには、給金の支給条件で、一週間事にランクが設定されていて、ランク1が一番早い一週間、一番遅いのがランク4の四週間、つまり一月は支給されない。
その上、此の仕事は学校を管理する教魔省の募集で、給金は民間の半額で安い、だから宿舎と食事が支給される、のだそうだ。
前の世界では月給が当たり前だから俺には違和感が無いのだが、此の国は週給が普通なので、月給は人気が無いそうだ。
彼が言うには、魔導省以外の役所からの仕事は国の予算の関係で全て月給なんだそうだ。
そう言う事か、俺にロートスグループの事をいろいろと説明してくれた親父が言ってた、魔導省の仕事が人気あるって事と、金払いが良いって言った意味。
受付の人は更に、俺に警告する、
「一度応募し受理されると、そのランクの指定期間は、他の募集の応募が出来なくなります、更に、その期間前に受理された仕事を辞めたらその間の給金は支給されません、御理解下さい、宜しいですね。」
彼はランク4、つまり一月が危険である事を俺に念を押した。
彼が言ってる事は簡単に言うと、此の仕事を引き受け、その当日に辞めたら、四週間は仕事を紹介しないよ、
其に、二十七日間働いて辞めたら、一日足りないので給金無しねって事だ。
確かに、一月はリスクがある、此の条件じゃ不当解雇が横行しないか?
俺は、その事を彼に聞いてみた、
彼が言うには、だから一週間なんだそうだ、仕事を辞めるのは、雇う方、雇われる方、両方に問題が有り、複雑で、不服の申し立て制度は有るんだが審査に半年かかり、その間、新規の応募が出来ないから、殆どの人が使わないそうだ。
成る程、
うーん、
どうしよ、
・・・
・・・
此の仕事は、星達が俺の為に選んでくれた、
だから、たぶん、何か、
意味が有る筈だ!
きっと、
俺は、結局、此の『
俺が、その事を受付の担当者に告げると、
彼は、俺に魔導回路が書き込まれた、黄色い前の世界のクレジットカードサイズの金属板を、俺に渡してくれた。
「此れは?」
と俺は彼に聞いてみた。
「其は、貴方の
「
受付の彼は、笑顔で、
「貴方の雇用契約を保証する
不払いって!
有利って事は、反対に不利も有る分けで、その不利ってのは、給料が払って貰えない可能性も有るって事か?
ふーっ、
俺は、ため息が出た。
勿論、その面接で不採用になる事も有る、って事も、彼は付け加えた。
そして、異国人の俺に応募した学校の説明をしてくれた。
彼が言うには、思想教育の関係で、此の国の学校は全て政府が運営しているそうで、其を管理しているのが『
だから、此の国には、俺の前いた世界のように私学は無い。
そして此のバルセリアには、二つの
北西の牧場地帯に有るのが、此の街の殆どの子供達が行く、
此の学校は、自ら、生産販売をしているから、資金も豊かで、
だから、此方は待遇も良く、人も足りてて、募集は無いんだそうだ。
で、問題は、俺が応募した学校で、此方は街の東に有り、此の
此の
勿論、寄付を募れば、直ぐに豊かになるんだが、学校への寄付は法律で禁止されているので、誰も出来ない、
だから、此の仕事、待遇は悪いけど、頑張ってね、と彼に言われて、
「ああ、頑張るよ。」
と答えた俺は、
此の街は、東から西に穏やかな高低差が有り、東の国境は長く広大な山脈で仕切られている。
東の山脈に降った雨水は、線路沿いの河に流れて、西のホルテル湖と呼ばれる、俺が最初に現れた湖に流れ、そしてその湖から、更に南へ流れている河が有り、その河は南の海まで流れているんだそうだ。
大通を登る事、十五分、俺は汗だくと息切れで、ぜぇはー、言いながら、その目的地である、バルセリア
学校は古い建物で、此の街の洋式が、前にいた世界の古典主義の建築物が主流であるのに反して、此の学校の建物は、前の世界のビクトリア調、
分かり易く言えば、茶色のレンガ積みの外壁に、小さな白い格子窓、赤茶の尖り屋根が有る、古いイギリスの建築洋式だ、
まんま、イギリスの古い学校建築、
正面の建物は、真ん中がエントランスになっていて、大きくくり貫いて有り、其処から大きな中庭が見えた、その中庭を囲むように同じ洋式の建物が建っている。
そのエントランスに、薄緑色の服を着た高齢の老人が、椅子に座って寝ていた。
守衛さんだよな?
俺は、寝ている彼を起こして、
彼は、驚いた顔をした後、俺を正面の建物のエントランスの横にある、来客用の部屋に案内し、今、担当の者を呼んで来るから、其処で待っててくれと俺に告げて、部屋を出て行った。
来客室は床と腰壁が焦茶の板貼りで、腰壁の上は白い塗り壁になっていて、天井も、段の有る豪華な仕様になっていた。
其は、此の国で、今迄、見てきた質素な内装と違い、装飾制の高いやはり、前の世界のビクトリア調の内装に似ていた。
真ん中に有る皮のソファに座りながら、寛いで、そんな事を考えていると、廊下側のドアから、ドタドタってな音が聞こえて、
バーン!
とドアが空き、
俺は、きいたーーーあ!
待望のメガネっ娘!
きいたーーあぁ!!
と、ちょっと嬉しかった。
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彼女は、見た目は二十歳前半、たぶん、そして丸顔にショートスタイルの黒い髪を、力の抜けた、ラフでアンニュイで、絶妙なバランスのウェーブスタイルにしている。
更に、良く似合っている黒い縁の大きなメガネ、そのメガネの先に有るのはガラスのような青い瞳、
服装は、さっきの守衛さんと同じ薄緑のジャケットにロングのスカートで、
手には書類に黒い箱を持っている。
でっ、困った事に、彼女は真っ赤な顔してジィーッと、ドングリ
仕方がないので、俺は彼女に、
「俺の顔に何か着いてますか?」
と定番の発言を彼女にし、彼女はハッてな顔して、
「すっ、すみますん!てっ、てっきり、お年寄りが、
うーん、まぁ、実際は俺は何千歳かもしれないけど、見た目は小太りの二十歳過ぎだからなぁ。
「御年寄りが、良かったんですか?」
俺は彼女に聞いてみた、そしたら彼女は慌て、俺が座っている前のソファに座りながら、
「い、いえ、いえ、貴方で宜しいんです!、貴方が良いです!だって普通、
彼女、慌ててるから、本音が出てるよ。
「あのー、お名前は?」
俺は彼女に名前を聞いた。
彼女はまた、ビックリした真っ赤な顔して直ぐに立ち上がり、
「すっ、スミマセン!そうですよね!私、名乗らずに座って、私、此の
彼女は手を差し出す、俺も立ち上がって、彼女の手を握りながら、
「俺は、『スグル・オオエ』です、宜しくお願いします、エルさん」
その後、お互いソファに座り、エルさんは直ぐに、
「其で、スグルさん、何時から働いて貰えるんですか!!」
えーと、最初は、仕事の説明とかして、其に面接だから俺の事聞いたりして、しないの?
「其って、採用って事ですか?」
彼女は、また真っ赤な顔して、首を縦に振りながら、
「採用!採用!即採用!!、
・・・
大丈夫か?
俺が変な人だったらどうするんだ。
変な人じゃ無いけど。
「申し出は、嬉しいんですけど、まず、仕事の説明とかしてくれませんか。」
彼女は、更に赤い顔して、
「そっ、そうですよね、ゴメンナサイ!」
・・・本当に、大丈夫か?
ようやく、彼女、エルさんは俺に学校を案内しながら、仕事の説明を始めた。
学校は、来客室と同じ内装で床、腰壁は焦茶の板で、壁は白い塗り壁、長い片側廊下に、教室が並んでいる作りなんだが、
此の学校、兎に角、汚ない、窓の桟や棚はすっごーく埃だらけ、床は泥だらけ、白い壁は落書きだらけ、
どうしたら、こんなに汚くなるんだ?
トイレは、とても説明出来ない、
彼女が
今年は、たまたま、此方にルーナ殿下がいるから、突如、『教魔省』から、ルーナ殿下と一緒に新学期を査察するよって、連絡がきて、
・・・ルーナさん、本当に偉い人なんだ、俺は感心した。
其で、彼女は、ビックリして、なんせ、此の学校、一年前から
俺は、エルさんに聞いてみた、
「子供達に、掃除とかさせないんですか?」
彼女は驚いて、
「えっ!掃除をですか!無理です!此の学校の子供達は、
「じゃ、先生とかは、」
彼女はおもいっきり、首振って、
「絶対無理!此処の先生達は魔導士様達ですよ!プライドの高い魔導士様がする分け有りません!」
・・・まぁ、先生は確かに掃除はしないけど、生徒はするんじゃないのか?
少なくとも、前の世界の学生はそうだった、トイレ掃除はしないけど、
「じゃ、私の仕事は、此の学校の掃除なんですね。」
エルさんは首を大きく振って、
「はい、其も、新学期に間に合うように、綺麗にして下さい!」
俺は呆れて、
「此のデカイ学校を俺、一人で? 其も一週間で?」
彼女は小さな声で、
「はぃ・・・」
「もっと人を雇うとかは?」
彼女は、更に小さい声で、
「此の学校、・・・お金無いんです。」
彼女が言うには、今年は五年に一回の監査の年で、膨大な書類を『教魔省』に提出しなければいけなくて、
其れなのに、自分の上司と先輩二人が一月前、引き抜きでお隣の
残った自分に、
結局、エルさん一人で、提出する書類を不眠不休、休日返上で作成していたら、
教魔省から、査察の連絡がきて、
その時、彼女、本当に、此の学校、終ったと思ったらしい、
「終わるって、学校が?」
エルさんは、暗い顔して首を縦に振りながら、
「はい、教魔省も予算が
評価の低い学校は、廃校にして、評価の高い学校に予算を回す、そう言う理由らしい、
エルさんが絶望感に打ちひしがれている時、
・・・
其って、
俺は、エルさんに聞いてみた、
「エルさん、エルさんはもしかして、助けてって、星に願いませんでした?」
エルさんは、茹で蛸のような顔で、
「ええええええええ!何で、何で、スグルさん、その事、知ってるんですか!!」、と大声で、
・・・
やっぱり、
そう
星達が俺に彼女を助けて、
と言っている、
だから、俺に此の仕事を薦めたんだ。
・・・
そうだな、
・・・
やってみっか、
俺は、エルさんを見詰めながら、
「分かりました、此の仕事を引き受けましょう。」
その瞬間、エルさんは真っ赤な顔で、今にも泣きそうな笑顔で、俺に深く御辞儀をしながら、
「有難う御座います!」
と言った。
ガチャ!
黒い魔導機の箱が、俺の
来客室に戻った俺は、エルさんに俺の
エルさんは、嬉しそうに、
暫くして、魔導機から、ガチャって
此れにより、俺は、正式に一月の間、バルセリア
月給は、7万
貰えるのは、一月先、
勿論、その間に学校の廃校が決まったら、其も貰えない。
俺の掃除に、俺の給料が懸かっている、
手が抜けない仕事だ。
その後、俺は、エルさんに宿舎を案内して貰った、宿舎は学校の北側の広大な森の一角に建っている、小さな白い木造の平屋で、
此の木造の宿舎も、荒れ果てていた、窓のガラスは全て割れていて、やはり、白い壁には落書きだらけ、中は、家具やドア、キッチンの設備等は、ほぼ全て壊されていた、
あまりの酷さに、エルさんも唖然とし、俺は、
「子供達の仕業ですよね。」
エルさんは済まなそうに、
「・・・たぶん、」
「ヤンチャ、ですね。」
エルさんは、顔を伏せながら、
「そんな子ばっかでは無いんですけど、一部、魔導術を覚えて、ハメを外す子が、」
ハメの外し過ぎでしょ、
まぁ、どっちみち、此処に住むのは一週間後だ、学校の掃除は、学校に泊まり込みでするしかないし、此処は、その後で何とかしよう。
そして、最期に、食事、
「えーっと、此れだけですか?」
仏頂面で
「ああ!其ぐらいしか、金貰ってねえー!文句が有るなら、食うな!!」
食うなって、
俺とエルさんは、此の学校の食堂に行った、食堂はエントランスの正面の北側の建物の一階と二階に有り、一階は大きな学生食堂になっていて、二階は先生達の食堂になっているんだそうだ。
中央の廊下から入ると直ぐにカウンタになっていて、そこで、ランチを受け取り、好きなテーブルで食べる、
中庭に面した、サンルームのような場所が人気で、子供達にとってはお昼の場所取りが大変らしい、
一応、此の国の方針で、ランチは無料なんだけど、国の支給する費用ではあまり、おいしい物が作れないので、
お金持ちの子供達は、豪華な御弁当を持ってきて、此処で食べ、食堂のランチを利用するのは貧乏な子供達だけなんだそうだ。
流石に、食堂は綺麗で、料理長と二人の料理人が何時も掃除しているらしい、その料理長だが、名前はボーゲン・ハーグナと言う、先に言った、ガタイのデカイ人。
名前が
職員専用の食堂は厨房の裏手にあり、俺やエルさん達はそこで食事をする事が決まりで、学生食堂は利用出来ない、
丁度、昼なので、ランチを出して貰ったんだが、確かに見た目が良くないし、量が少ない、
コッペパンのようなのが一個に、野菜らしき物が少し入ったスープ、其に小さな肉らしき物。
前にいた世界の小学校の給食の方がまだ多い、
で、思わず此れだけって言ったら、食うなと言われたが、気にせず、食った、なんせ朝飯抜きで、二日酔いも治って、食欲が出てきた。
で、食べてみると、味は悪くない、嫌、結構、旨い。
俺は、
「そっ、そうだろ!俺が作ってるんだ、旨いに決まってる。」
と言った。
何で、照れる?
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