第8話 化け物に襲われた!

  


さすがのアーサーも、思いっきりのゴールデンキックを食らってうずくまった。


「ううっ・・・」


大ちゃんも思わず股を押さえそうになるほど痛そうだ・・・。


しかし同情している場合じゃない、たぶん3分は再起不能、全治3分間。逃げるチャンスである!


大ちゃんは全速力で走り出した。




森の中をとにかく走ると、小さな湖が見えた。が、それに気を取られて、足元の木の根に引っかかり大ちゃんは派手にすっころぶ。


ドサッーーー!!


「ああっ!」


足をくじいた上に腕をけっこう切ってしまった。ズキンズキンと痛むキズから血が流れ出た。


「痛い・・・」


傷口をギュッと抑えると同時に、血が流れ、この痛みがあるということは、やはり夢じゃないんだと思う大ちゃん。


気が付くと森は少し暗くなり始めている。一人で暗い森にいたことなんて、ない。



いつの間にか小鳥の平和なさえずりは聞こえなくなっていて、代わりに、ウグルルルという唸り声のような聞きなれない音が聞こえる。


傷の痛みで座り込んでいると、背後でガサッと音がした。


茂みのほうを振り向くと、葉っぱの中で二つの目が光る。


動けないまま凝視していると・・・葉っぱが揺れて・・・


オオカミのような生き物がのそりと出てきた。




ただし、首は長すぎて、口は大きすぎて、


頭が二つあった!


「うわああああああ」


大ちゃんは湖のほうに走り出すが、くじいた足が痛くて走れない。よだれを垂らしたオオカミの化け物にほとんど追いつかれている。


万が一の可能性、バケモノが水が苦手かもしれないということに賭けて、大ちゃんは湖に飛び込んだ!

というかほとんど落ちた!!




しかしここで、良いお知らせと悪いお知らせがある。




良いお知らせは、この獣はどうも水は嫌いであったという賭けの成功、悪いお知らせは、大ちゃんが泳げないという重大な事実であった。


まるでカナヅチというわけではない(途中で足をつきながらようやく25メート泳げる程度)が、足もをじいている今、意外に深かった湖でおぼれるのは必至である。


「だれかたすけて~~~っ!」


大ちゃんは叫んだ。



ギャウンっ



大ちゃんの視界のオオカミの化け物が瞬時に吹き飛ぶ。


バシンッ!



見えない速さでオオカミはもう一太刀くらい、森の奥へ逃げていった。



そしてそこに立っていたのは、もちろん



アーサーだった。



大ちゃんが恐る恐る見たアーサーの瞳は、怒りに満ち満ちている。


「優しくしてやろうと思ったけどね」


アーサーは湖からおぼれかけの大ちゃんを引っ張り出した。





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