あべこべの世界(17)
目覚ましのアラーム音で目が覚めた。
アラームを止める時にはっきりと見える視界に昨日コンタクトをつけたままで寝てしまったことに気づく。
そうだ、昨日はあれから健二の行きつけというイタリアンレストランで食事をして、その後やはり健二の行きつけというバーでカクテルを飲んだ。
バーなんてほとんど行ったことのないわたしは緊張していつもの倍のペースで名前も知らないカクテルを何杯も飲んだ。
頭が痛い。
バックからスマホを取り出す。
残りわずかなバッテリーマークが赤く表示されている画面に指を這わせる。
孝志からのメッセージがたて続けに入っていた。
最初は待ち合わせ時間を四十分ほど過ぎた頃に一度。
敏ちゃん、今日残業になっちゃったのかな?
次は一時間半後。
とりあえずぼく、今日は帰るね。
最後は夜の十一時過ぎ。
敏ちゃん、ぼく何か敏ちゃんを怒らせるようなことしちゃったかな?
ごめん!孝志。
すっかり孝志との約束のことを忘れていた。
スマホを投げ出しわたしは深呼吸をしベッドの上に正座した。
昨日から起きていることを整理してみる。
なんだか全ての認識があべこべになってしまったようだ。
わたしが美人だとかタバコが肌にいいとか。
三回目の深呼吸で目を閉じる。
健二の視線を思い出す。
健二がわたしを食事に誘うなんて。
突然笑いが込み上げてきた。
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