行動を顧みる者

21

「兄貴、どしたん。誰かを、女の子を助けるなんてさ?」

「…………」


(――俺はなんであの時助けたんだ)


 黒髪の青年は、さっきの行動をかえりみ、悩んでいた。


(――いつもなら、助けないはずなのに)


 ―――第一、女なんか大嫌いなのに。


 彼は女性に強請ねだられる機会が多かった。それは彼が生き延びるためにはではある。しかし、当時の彼には強制されておらず、任意でとってもいいこうどうだった。そうであったにも関わらず、女性たちは彼を目にすればしつこく追いかけた。これが原因でいつしか女を毛嫌いするようになってしまったのだ。



「兄貴もやっと…!」


 彼の隣にいる、長い茶髪を結いあげた赤目の青年が、自身の兄の変化に期待し目をルビーのように輝かせている。


「カイ…。なんだ、貴様…」

「おっ!兄貴が久しぶりにオレの名前呼んでくれたぁ!」


 カイ。それは茶髪の青年の名。

 カイは久しぶりに貴様などと言われず、名前で呼ばれたことに対して、幼いこどものようにキャッキャと喜んでいる。


 ―――ドカンッ!!!


「うっひゃあっ!!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る