第3話
下卑た笑い声と共に囲みを徐々に縮めてきていた、ゴブリンの
群れが甲高い悲鳴をあげて次々撃ち抜かれ地面に転がっていく
その光景を『緊急救援』依頼を引き受けた冒険者パーティは、
ただ唖然として見ている事しか 出来なかった。
「な、なんだこりゃ!?」
そう思わず叫んだのは冒険者パーティメンバーの1人だ
夢でも見ているのかと思い、目を擦ったり頬を叩いたりして
現実か確かめるが状況は変わらずにいた
さっきまで優勢なゴブリンの群れが、鼓膜が千切れそうな
凄まじい轟音が響くたびに、次々紙くずの様に吹き飛ばされては、
撃ち倒されていく
その全てが頭部を弾丸に貫かれて絶命していた
冒険者達にとってその光景は異様過ぎる光景だった
「な、何が起こってるの!?」
次々と緑の体液をまき散らしながら肉塊となって、崩れ
落ちていくゴブリンを女性冒険者は呆気に取られ
戸惑いながら視る事しかできなかった
鼓膜を突き破ろうとするほど甲高い金属音と共に、ゴブリン達の
頭部や胴体が貫かれ吹き飛ばされていくその光景は、経験した事
も見た事もない初めて見る光景だ
これが戦闘と呼べるものなのかすらわかず、ただただ
立ち尽くしかなかった
だが、状況判断して動いている冒険者も少ならず存在していた
それはまるで、この闘いを把握し自分がどこに立ってどのような
戦い方をすれば良いのか、を理解しているかの様だった。
状況判断して動いている冒険者は、 戸惑って動きを止めている
冒険者に近づいては何事か指示をしていく。
戸惑っていた冒険者達は、その指示を受けるとそれに
従い動き始めた
その様子を確認していた端正な貌立ちの若い『冒険者ギルド』職員の
後ろから、誰かが右肩に手を置いた
思考に耽っていた『冒険者ギルド』職員は飛び退くように後ろへ
振り向くと、そこには身体にぴったりと合った動きやすく音の立たな
い軽装の上に革製の防具を身に着け、背には大きな弓を背負った男性がいた
身長180cmほどで、首の下あたりできっちりと髪を刈りこみ、切り
そろえてある
短い黒髪が特徴的な人物だった
何処か 気弱で物静かな好青年に見えたが、全身からは精強な
戦士を匂わせる 何か異様な雰囲気を漂わせていた
「・・・・ただいま加勢にきました」
口調は、柔らかく丁寧な物言いだが何処か含みを感じさせる
言い方だった
思わず『冒険者ギルド』職員は 彼の何かを味わい深いという気配に、吸い込まれ
そうな気分になりかけながらも自身を諫める
見たところ斥候を担う冒険者や屈強そうな戦士ではなさそうだが、
一目見た瞬間から何か異様なものを感じていた
それは、まるで迷宮の闇の奥からこちらを伺っているような
不気味な気配だった
「加勢?」
『冒険者ギルド』職員は、おもわず聞き返してしまう
「我々は、
『冒険者ギルド』から正式な『緊急依頼』を引き受けて来ました」
相手は身分証として首に下げている認識票を提示してきた
それは 2枚の同じ『青銅』の認識票が2枚重なっており、認識票には
文字の様なモノが刻まれている
1枚目は『冒険者』等級の身分証明書となる認識票で、もう1枚目は
2つの認識票に共通しているのは、『冒険者ギルド』によって個人的な
業績を表彰するため制定されている文字も刻まれている事だ
その文字には特殊な魔術が施されており、偽造や変造する事は
出来ないようにもなっている
2枚の身分証を見比べて『冒険者ギルド』職員ギルド職員は驚いたが
ユニオン《連合》『漆黒の銃士隊』については、この辺境地の『冒険者ギルド』の
『ギルドマスター』より、情報は聞いていた
「あなた方が噂に聞く・・・」
『冒険者ギルド』職員が安堵した表情を浮かべつつ、そう
短く答えた
だが、状況が呑み込めていない幾人かの冒険者は、身体を動かさずに
視線だけで周囲を見回して、状況確認を行っている
「ゴンザレス!!
加勢に来るのはいいが、この音はやかましすぎるぞ!?
新人共が何がどうだかでパニック状態になって右往左往している!?」
40代前後の野生的といった風情の風貌を漂わしている、白髪まじりの
短髪の冒険者が左耳を抑え右手に棍棒を担ぎながら駆けつけなりに
そう大声で叫んだ
「ん?
何だ、アーネスト、『救援依頼』に参加していたのか?
てっきり『救助なんて下らねぇ』とか言ってサボってるのかと思ってたぜ」
ゴンザレスはそう答えつつ、苦笑を浮かべた
アーネストの見た眼は、街道や路地裏で非道を行う野盗や
悪党の類の風貌だ
だがその実、面倒見がよく情に厚い人物で冒険者達からは
兄貴分の様に慕われていた。
「『金』等級以上は『強制』参加だ!
俺様はあいつらのお守りだよ! ・・・ん?
お前、半年も『冒険者ギルド』に貌を見せない間に少し痩せたのか?」
棍棒を担いでいるアーネストが、ゴンザレスの貌を見て思わず
呟くように言った
アーネストが尋ねた通り、半年前に見かけて以来ゴンザレスの姿を
見ることはなかったのだ
「事前説明を『冒険者ギルド』で受ける前にも、何人かの
受付のお嬢さんや待機組のコルテスとスマイリーにも同じような事言われた
『少しお痩せになりましたか?』とか『ちゃんと飯は食ってるか?』とか、
はては『罪を犯して炭鉱労働に廻されたの?』やらなんやら
説明するのがややこしいから『失恋して寝込んでたんだよ』とか答えたら、
それはそれで余計な心配をさせてしまった」
ゴンザレスは、微妙な表情を浮かべて答えた
「そう邪険にするな。
お前らの『事情』を知っているモンほど心配してるんだ
あと、どうせ『失恋して寝込んでたんだよ』と真顔で応えたんだろ?」
アーネストが顎髭を摩りながらニヤリと笑いつつ、そう言い終えると
その場から離れていく
「・・・本当にお前は、見た眼と中身の性格がまったく違うよな」
ゴンザレスは横目でアーネストの背中に視線を投げかけながら言う
その言葉に聞こえてないはずないが、振り返りもせずに手を
ひらひらさせながら返事して離れていった
『ふぅ』と息を吐いたゴンザレスは、後ろを振り返った
視線の先には、一目見ただけでも『奇妙な集団』がウィンチェスターM1866の
先端を中ほど握り腰の位置で構え、横2列で直立不動の姿勢で立っていた
それはまるで、軍隊の隊員の様に見えるのだがその
存在感が異質だ
白いワイシャツ以外全て黒で統一されたビジネススーツを身に
纏っている
銃床は地面に着けず浮かせ、肩には革製のホルスターに収まった
コルトM1991A1自動拳銃を、まるでアクセサリーの様にぶら
下げている
その出で立ちは、『現世界』で存在自体が一種の都市伝説や陰謀論となって
ハリウッド映画作品シリーズとして定着している『MIB』エージェントの様な
格好だ
まさに独特の威圧感と存在感を発しているため、まるで一個大隊の精鋭部隊が、
戦場で整列しているような雰囲気をかもしだしていた。
大規模なゴブリンの群れとの闘いが未経験な、幾多の冒険者もその
異様な光景に表情が強張っており、不穏な空気を漂わせている
そんな冒険者達にはアーネストが近づいて、強張りを解くような
冗談を飛ばして緊張を和らげさせた。
「落ち着け! こいつらは仲間だ!
焦らず慌てずに生存者を下がらせろ!!
生き残って旨い飯と酒をたらふく喰って飲めるように頑張れ!!」
アーネストが大きな声で指示を飛ばすとその指示に反応した 冒険者達は、
まだ緊張の面持ちを浮かべているものの 落ち着きを取り戻した。
外見通り様々な修羅場を潜り抜けてきているのか、アーネストの声には
重みと迫力があり、そのひと声で一気に場の雰囲気を引き締めた。
またアーネストも大きな失敗を経験しているからこそ、その言葉には
重みが増しており、冒険者たちの身体に沁みいる
生存率を上げるために懸命に檄を飛ばし、頬に汗を流す様子を
ゴンザレスは視ると口元に笑みを浮かべた
『実にベテラン冒険者らしい』と、ゴンザレスは思った
しかし彼の意識は、すでに戦闘モードに切り替える。
ゴンザレスはアーネストの方を一度だけ視線を向けると、再び直立不動の
『召喚人』達に視線を戻した。
その『貌』は、いずれも銀幕で活躍している有名ハリウッド俳優だ
一体目は、『ブルース・ウィルス』
一体目は、『ロバート・デニーロ』
一体目は、『キアヌ・リーブス』
いずれも『実物本人』より推定年齢二十代~三十代後半という容姿と雰囲気だ
映画やドラマでお馴染みの名優が、眼の前に立っていると錯覚をしてしまう
存在感がある
それぞれが同じ『貌』で、10体で隊列を組んでいるため、壮観だ
「まず、『ブルース・ウィルス隊』『ロバート・デニーロ隊』は、
俺と同じく生存者が馬車に乗り込むのを確認後、後退してください
続いて全員が脱出するまで、急襲してくるゴブリン共の露払いを頼みます
『キアヌ・リーブス隊』は『ドルフ・ラングレン隊』を引き連れて、
生存者探索を続けているナナシの援護をお願いします」
ゴンザレスは、『召喚人』達が著名人揃いのハリウッド俳優『貌』で
あるためか、まるでハリウッド映画を撮影している監督の様に
指示を飛ばしている
その口調はとても落ち着いており冷静だ
『了解! ボス』
『召喚人』達は、一斉に返事をすると素早く手に持っていた
ウィンチェスターM1866の撃鉄を親指で起こし、配置について
準備をし始めた
その動きと立ち振る舞いは1体1体が正確に個性があるものの、さながら
歴戦の特殊部隊を彷彿とさせる
その一糸乱れぬ動きと統率力は、なまじハリウッド俳優『貌』であるためか、
絵になる姿を醸し出している
ゴンザレスはその様子を見て、改めて軍隊の様だと内心唸った
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