3

結局、レイナはロムの料理の手伝いはせず、レーミュの家庭教師をする事になった。

「レイナお姉ちゃん、これは?」

「これはね・・・。」

教えてみると、意外と難しい学校の宿題だが、レイナは自分の知識で何とか教えることが出来た。

「・・・こんな宿題、何年振りかしら。」

「レイナお姉ちゃんの時も、宿題あったの?」

「ええ、あったわよ。こんな宿題。」

そう言って、レーミュが書き込んでいるノートを見る。

「どこに行っても、算数と理科と魔法は変わらないから、しっかり勉強しようね。」

「あー、学校の先生もそう言ってた!」

レーミュはにこやかに笑い、それにつられてレイナもほほ笑む。

「でも、私は運動が一番好き!」

「そうなんだ。私は苦手だったなぁ。どちらかと言えば、魔法の勉強が好きだったわ。」

「レイナお姉ちゃんの魔法、すごいもんね。」

「ふふっ、ありがと。」

そう言って、レーミュの頭を撫でるレイナ。レーミュは目を閉じて嬉しそうだ。

「二人とも、食事の準備が出来ましたよ。」

レーミュの部屋に二人を呼びに来たロム。

「レーミュ、行きましょうか。」

「うん!あとで遊んでね。」

「ええ、いいわよ。」

レイナがレーミュの頭を撫でながら、そのお願いを聞き入れた。

「じゃあ、食事にしましょう。」

「うん!」

レーミュが元気に部屋を出て、食堂へ向かう。その後をゆっくりとレイナがついて行った。


食堂では、ロムが食事の準備を整えていた。今日のメニューはレイナのリクエスト通り、肉のスープとパンだ。

「レーミュ、ちゃんと宿題はできましたか?」

「うん!終わったよ!」

「レイナ、お疲れ様です。」

「いいのよ。私も久しぶりだったし。」

レイナとレーミュが目を合わせてほほ笑む。

「それでは、いただきましょうか。」

ロムは食事を前に手を重ね、神に祈りをささげる。それを二人が真似する。

一通り儀式が終わった後、三人は食事を口に運ぶ。

「やっぱり、美味しいわね。ロムの料理は。」

「ありがとうございます。」

あっという間に平らげるレーミュ。そして、レイナをじっと見つめる。

早く食べて遊ぼうと言う無言の圧力だ。

「レーミュ、早いわね。私はもう少しゆっくり食べるわよ。」

「うぅ。」

レーミュは少し寂しそうな表情でレイナを見つめる。

「レーミュ、少し遊んだら、お風呂入りなさいね。」

「はーい。」

元気よく答えるレーミュに、レイナがほほ笑みかける。

「じゃあ、後で一緒に入ろうか。」

「うん!」

一気に楽しみが増えたレーミュは、今までで一番元気のよい返事をレイナに返した。

「さて、レーミュ、先にお話して置かなければいけないことがあります。」

ロムがレーミュに真剣な表情を向ける。それを見て、レーミュは静かにロムを見る。

「明日、私とレイナは朝早く出発する予定です。そして、夜遅く、もしかしたら翌朝まで帰ってこないと思います。」

「・・・うん。」

「私たちが居ない間は、信徒の方が来られて、この教会の留守番をしてくれることになっています。レーミュも、いい子で留守番出来ますね?」

「・・・うん。」

さみしそうな顔で頷くレーミュ。

「ありがとう、レーミュ。」

レイナがそう言って、レーミュの頭を撫で、ぎゅっと抱きしめた。

「明日一日、お姉ちゃんを借りるね。」

「うん。」

「よし、じゃあ。これからお休みまで遊ぼっか。」

「うん!」

レーミュは再び元気を取り戻す。その声を聴いて、二人は安堵した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る