それはとっても気持ち悪いなって
ガバッと開かれた分厚いその魔道書は、重厚な本革の装丁でかなり年代物のようだった。見開かれたページには底がなく、その深い奈落から巨大な牙を剥き出しにした口だけが顔を出していた。
それは、魔導書そのものが生きているというよりは、貝殻を被ったヤドカリのように、その本に寄生した何か得体の知れない何かだった。禍々しく身の毛のよだつような魔力を垂れ流し、不気味にニタリと笑う。
『とりあえず、これお試し用っス!』
そう言うとその謎の魔道書は、長くてヌルヌルしたベロを伸ばして『貸し出しカード』を差し出した。
唾液でベトベトになったカードを手渡され、シオリは「うわぁ…」と迷惑そうな顔をする。
「この貸し出しカードって……魔法学院の図書室のと同じ……」
カードを見ると、貸し出し期限は学校の他の本と同じ一週間のようだった。
貸し出しカードにも魔力を秘めているのか、ボンヤリと光を帯びていた。
どこかのカードをキャプターする魔法少女であれば、それにレリーズ1週間分の魔法力が秘められいる事に気付いただろう。「まずはお試し用サンプルで、1週間の効果をご確認ください」という感じだ。
シオリは困った表情で、いかにも怪しそうなその魔道書をチラリと見た…。
本の帯には「全米が泣いた!魔道士が選ぶ今年度No1!」の売り文句に、巻頭には謎の怪しい『袋とじ』まで付いていて、見れば見るほど怪しさマックスだった。
「……あの…もう助かったので…要らないんですけど……」
まだ本棚の下敷きになり踠いているシモンを横目で確認し、シオリはそう言った。
『えー? どんな願いも叶うんすよ?そんなこと言わずにお願いしますよぉ。
…例えば、そうッスねぇ』
魔道書は大きな舌でベロンと唇のまわりを舐めると、頭に直接語りかけるその不思議な声でシオリの耳元で甘く囁いた。
『気に入らないヤツらを、消し去る……とかどうッスかねぇ?』
……一瞬、クラスのイジメっ子達の顔が思い浮かぶ。
シオリは慌てて首を振り、それを否定した。
彼女達のことが大嫌いだったが、だからといって憎んでいるわけではなかった。
出来ればかまってきて欲しくない人達だったが……だからといって…本当は仲良くなりたくないわけでもなかった。
すぐに今の映像は、この魔道書がシオリに見せたイメージだと思った。
「……そんなチカラなら…いりません!!」
『ねぇ〜。そんなこと言わずに、契約して魔法少女になって下さいよぉ。魔法少女の…純潔な処女の魔力が必要なんスよぉ〜』
「フザけるなぁっ!!シオリは『ニップレスほわいと』に変身して、私と結婚するんだぁっっ!!!」
「ひぃっっ!!??」
いつの間に抜け出してきたのかシモンがシオリの背後に立ち、彼女の見た目よりも細い腰に抱きついた。
頭から大量の血を流し鼻血を吹き出させながら、ゼェ…ゼェ…と息を弾ませ、シオリの体を後ろから締め付ける。
その力は人間離れしていて、シモン本人も力のコントロールを失っているようだった。
「せ、先生……うぅ……苦しぃ……」
胃液がこみ上げるほどの力で締め付けられ、シオリの顔が苦しそうに歪む。
チラリと背後に見えたシモンの目は、魔族のように赤く変色し、以前の面影は消え去ってしまっていた。
シモンの中で、大人の闇に汚染された歪な魔力が爆発しそうに高まっていた。
ドス黒い力が彼の下半身から聳り立つのを感じ、シオリは発狂しそうなほど恐怖した。
「まったく、教え子がこんなイヤらしい身体してたら……授業中、気になって仕方ないだろ…… 教師を誘惑するなんて…何て、いけない娘なんだ……お前は……」
…完全な言いがかりだった。
何とか言い返そうとしたシオリだったが、ブラを剥ぎ取られ無防備になった胸を、シモンが欲情した目で見つめているのに気付いた。
そのネットリとした視線に、胸元をナメクジが這いずり回るような生理的不快感を覚え、彼女は結局言葉を発することが出来なかった…。
「きゃぁっ!?」
ついにシモンの手が、必死に隠していたシオリの胸に伸びた。
シオリがいくら懸命に逃れようとしても、男と女の力の差は歴然だった…。
「ぁ……んっ……!」
シモンはシオリの抵抗など軽くネジ伏せると、汗ばんだ胸元をじっくりと舐るように揉みまくった。
むにゅりと柔らかい彼女の柔肉は、まるで突き立てのお餅のように、シモンの指が埋もれるたびにぷるんと波打ち揺れた。
生まれて初めて触れる本物の女性の乳房に…それも大きさも形も極上ランクの巨乳に、シモンは頭の奥が痺れるほど興奮していた。
「お前が悪いんだ……ずっと『あやねちゃん』一筋だったのに……
なのに、毎晩…寝る前にお前の事を考えると……くそっ!!」
「せ、先生……いやぁ………」
憎しみの言葉を発しながら、シモンはシオリの抵抗を払いのけ、彼女のたわわな胸を夢中で揉み続けた。
「もう、こうなったら……『あやねちゃん』への純愛を守るには、シオリが『あやねちゃん』そのものに……『ニップレスほわいと』になって……私と結ばれるしかないんだ………」
…無茶苦茶な理屈だった。
『五条あやね』そのものにシオリがなれば、純愛という名の下にエッチしてもOK!…という、ご都合主義の屁理屈。
そんな理由で、恥ずかしいところをニップレスで隠しただけの格好をさせられ、初めてを奪われてしまうシオリのトラウマは計り知れないだろう。
「ひやぁっっ………!!」
乳房をもみくちゃにされ、悲鳴をあげるシオリ。
焼きたての食パンのように真っ白で、ほっこりと柔らかい彼女の乳房は、触れているだけで指先から甘く美味しそうな感覚が伝わってきた。
中身のたっぷりと詰まったその特大ミルクパンを、背後から抱きかかえ鼻息を荒げるシモン。
触れているだけで高まる性的興奮に、シモンの愛撫も次第に乱暴に…暴力的になる。
「あぁ……指が……おっぱいに吸い込まれるっっwww」
もはやヨダレを垂れ流していることにも気づかずに、奇声をあげシオリの胸を揉み犯すシモン。
「お、お願い先生……そんなに、強く揉まないで……下さい……うぅ……」
強靭な力で後ろから抱きかかえられ、逃げることは愚か自力で立っていることすらままならないシオリ。
自分のおっぱいを男に揉みくちゃにされる初めての体験に、シオリはただ震えるしかなかった。
「あのぉ〜? やっぱ、契約したほうが良くないっスかねぇ?」
状況を見かねた魔道書が、そうシオリに提案してきた。
「……で、でも…!?」
しかし、魔道書の言葉を信用できなくなってしまったシオリが、返事に詰まり固まる。
シオリはその本に、得体の知れない…良くない邪なものを感じていた。
「じゃぁ…ここは間をとって……
シモン先生が『ニップレスほわいと』になるってのはどうッスかね?」
……予想の斜め上をいくご提案が来た。
「……え?」
言っている意味がわからず、シオリが思わず聞き返す。
「なるほど!! その発想はなかったわッ!!!」
その提案に、なぜかクワッ!!と思いっきり食いつくシモン。
「くくっ…そうか!!私が変身して、『ニップレスほわいと』になればいいのかっ!!!」
「………え…? ………ええぇっっ!!??」
シオリは素っ頓狂な声をあげていた。
……もう意味がわからなかった。
どういう理屈で彼は、そういう答えに辿りついたのだろうか。
てか、この人いったい何がしたいのだろう……。
「そんじゃぁ、その『貸し出しカード』に、血判でサインして貰ってイイっすか?」
ニタァーと含み笑いを浮かべ、魔道書がシモンをたきつける。
「いいだろう!私は人間をやめるぞ!シオリ──ッ!!」
シオリからクシャクシャになった貸し出しカードを奪い取ると、シモンは雄叫びを上げた。
「そして二次元キャラそのものになり、アニオタを超越するッ!シオリ、おまえのショジョの血でだァ──ッ!」
「な……何で私の血……なんですかぁ!?」
「私は自分の血を見るのが苦手なのだっ!!!」
当たり前のようにそう言い放つと、シモンはシオリの指先に小さな傷をつけ、貸し出しカードに彼女の指を押し付けた。
「…痛っっ!」
思春期の魔法少女の処女の血には、エントロピーを超越する魔力の力が秘められている…と、どこかの誰かが言っていた。
シオリの指先から流れた血の雫は、貸し出しカードに付着するとすぐに中に吸い込まれていった。
「おおおっっっ!? この力はっ!!!??」
次の瞬間、シモンの体が宙に浮き、背景が少女チックなお星様いっぱいのキラキラシーンになる。
そして、光のリボンのようなものが彼の体に巻きつき、半裸状態でクルクルと踊り回転しながら『変身』し始めたのだった……。
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