55、スマホすら一人では持てない

 文化祭一日目を友達と満喫した私。自分の出演もつつがなく終え、ご飯を食べたり、かわいい缶バッジを買ったり、それなりに楽しく過ごしました。前日の荒波が嘘みたいに、心は凪いでいました。

 文化祭二日目は参加しませんでした。母の家に呼ばれていたからです。スマホという連絡手段を失うことは、かなり致命的な痛手でした。未成年では保護者同伴でないと契約することもできず、母に頼るほかありませんでした。(本当は別日がよかったのですが、「文化祭とこれからの生活どっちが大事なの」と叱責されました)

 

 母の家は、再婚相手のおじさんは出張で留守でした。私の突然の来訪に弟たちはとても喜んでくれ、一緒にDVDを見たり、抱っこをしてあげて遊んだりしました。

 夜、子供たちが寝静まってから、母と話をしました。母からもらったアドバイスは、

「保険証の類は、お父さんが保管している。どうにもならないのだから、お父さんに頭を下げて使わせてもらいなさい」「あなたにも非はあったでしょう」「子供のあなたには何もできない。お母さんは家を出た経験があるからよくわかる」

 といったものでした。保険証を父が持っている、という事実は、私にとってショックそのものでした。こっそり取りに帰ることもできないのです。母は「ゆきこのことが心配なんだよ、子供を愛していない親なんていないんだから」「何かあった時のために持っておいてくれてるんだよ」と言いましたが、私には嫌がらせとしか思えませんでした。

 その後母は事あるごとに「私の方がひどいことをされた」とアピールし、私は曖昧に頷くことしかできませんでした。

 父の様子も母に遠回しに尋ねてみました。しばらくは「どこまでやっていけるか見ものだな」などと嘲笑っていたようですが、最近になって「あいつ寮に入ったのか」と見直したようだ、と言われました。(だから、頭を下げれば協力してくれるだろうし、学費だって出してくれるだろう、と)

 それを聞いた瞬間、ぞわっと鳥肌が立ちました。なんで私が寮に入ったことを知っているの? どうして? と混乱していると、母が「LINEのプロフィールの近況報告を見たらしい」と言っていました。父のことはブロックしていたはずですが、LINEの仕様上、ブロックした相手にもプロフィールの変更は表示されるようでした。クソが。

 母は「お父さんだって心配なんだよ」「応援してくれてるんだから素直に受け取りなさい」と謎のフォローをしていましたが、気持ち悪くて仕方ありませんでした。しばらくプロフィールを「覗きとか本当無理キモい」にしておいたところ、「煽るようなことをするのはやめなさい」と窘められました。なんで母は、同じ痛みを知っているはずなのに逐一父の肩を持つのだろう、と思いました。


 翌日。母の名義で、新しく格安SIMを契約しました。料金については完全に私もちでした。

 母は父と「経済的な援助はしない」という約束を取り交わしていたらしく、私に対して生活費や学費の補助はできないとはっきり告げました。それでも、お小遣いと称して数千円程度渡してくれたり、帰り際に大量の常備菜を持たせてくれたりしました。


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