何より素晴らしいのは物語の地形が見える点。
初期の拠点となる神殿都市ヴィナバード。そこから北西に向かえば主人公が木こりをしていた雪深いレスティカーザ。北東には数多くの河川で分断された豊かなママドゥイユ。
ヒロインの故郷に目を転じると、敵国から侵攻と占領を受けた地峡の街イルグネ。極地の氷神都市メタレチカ。
かの有名な4KゲームCivilization、あるいはそのファンタジー版ModであるFall from Heaven(通称FfH)のマップが目に浮かんでくるかのようです。ママドゥイユなどは食料資源豊富な氾濫原エリアでしょう。ゲーム序盤に見つけたらテンション上がる地形です(ちなみに私はCivilizasionは4を自分でプレイ、FfHはつー助教授の動画で履修しました(どうでもいい情報))。
作者ご自身が「設定厨」と称されている通り、綿密な世界設定が行われているのでしょう。
地形は戦術の基盤であり、文明の歴史が依って立つもの。
それをきっちりと固めた上でこれだけの長編を編まれる手腕は脱帽と言うほかありません。
加えてヒロインが黒髪ポニテともなれば☆三つ評価はもはや不可避。
是非このまま完結まで突き進んでいただきたい。
ヒロインが4話まで登場しないことは特には気になりません。そこまで読み進めれば彼女は待っていてくれるのですから。
デートの待ち合わせ場所に行くために電車に4駅乗るようなものさ。そうだろ?
主人公の少年、ロベルクは、両親が森妖精でありながら人間との混血の姿で生まれたため、同族から「不吉の子」として迫害されます。
これに起因して、2度の喪失体験をします。
一人目は、唯一心を許した義姉ラルティーナ。ここはそこまで詳細な描写はないのですが、二人目の愛する同居人ミゼーラを「妖精狩り」によって失うシーンは読んでいてとても悲しかったです。ミゼーラを失ったことで、ロベルクの「怒り」と「喪失感」が氷の王シャルレグの暴走という形で表現されていて、壮絶な断罪シーンとなっていると感じました。
その後傷心の主人公の心が、ヴィナバードという自由の街で再び熱を取り戻していく様を描く王道のファンタジーです。彼が過去の喪失を乗り越え、生きる意味をまた見つけられるのか、続きが気になる作品です。