誰もが一度は夢見た、ヒーローものの世界がここにある。
でも待って欲しい。この物語は、私たちが知っているそれとは少し違う。
最初は王道のヒーロー物語として始まる。宇宙人が現れては地球を荒らし、イズミくんが颯爽と現れて人々を救う。そこまでは、誰もが想像できる展開だ。
しかし、物語は思いがけない方向へと歩み始める。
なぜ宇宙人は地球に来たのか。ヒーローの恋人は何を想うのか。使命と愛の間で揺れる若者の姿は、どこか私たちの日常を映し出しているようでもある。
特に心を打つのは、最後まで涙を流し続ける宇宙人の存在だ。
彼の涙に秘められた想いは、読者一人一人の胸の中で、異なる色に輝くことだろう。
王道のヒーロー物語の中に、これほど繊細な感情を描き出した作品に、私は出会ったことがない。
読み終えた後、あなたはきっと誰かに話したくなる。それは、この物語が私たちの心の奥深くに触れるからなのだ。
短編のラブコメですけども、個人的には詩に近い印象を受けました。だからでしょうか読んでいる瞬間よりも──読み終わって一息ついた瞬間が一番楽しい、そんな作品です。
文体は柔らかく、暖かいものでするっと頭に流れ込んで来ます。絵本を捲っているような感覚と文字に包まれる感触がしました。
しかしただ『読んだだけ』で終わって欲しく無いと強く思います。もしもこのレビューに目を通して下さった方がいましたら読後に考えて頂きたいです。
貴方にとってヒーローとは何ですか? 宇宙人とは何ですか? 人々とは何だったのでしょう。
イズミくんとは──何だったのでしょうか?