22ページ目 12月2日
今日は児童文学の部屋にいる。
目玉焼きやコーヒーの話も、板チョコ片手にシダの葉を掻き分け進む話も、相変わらず心踊るものだ。
あの、以前見掛けた山積みのパンケーキを頬張る子供の話も面白い。
だが、以前はそれを読みながら思っていたように、自らも口にしたいなどとは最早思わない。
本を読めば、それだけで十分味わえるからだ。
素晴らしい、天国のような暮らしだと思う。
空腹になったら、上質な本を文字通り貪るように読めばそれが私のご馳走になる。
友と語らいたければ、感情表現豊かな物語や随筆集を読めば良い。
自然を眺めたくなったら、科学の本や写真集。
世界を歩きたくなったら、地図や百科事典や冒険のページを気の向くままにめくるのだ。
おまけにかつてのように、返却期限に追われて結局読み切ることが出来ないなどということも無い。
返却期限?
そう、確かに昔はそんなものがあったような気がする。
何故私がそのようなものを気にかけていたのか、今ではよく分からない。
毎日、今日読みたいだけの本を読み、読み終えたらその中身を煮込んだシチューのような夢を見るために眠りにつく。
そんな私の一日とはどうにも時間がずれてしまっているので、時計の時刻は前ほどしっかり見なくなった。
ただ、朝に読みたい本、夜に読みたい本はあるので、起きてから読む順番だけは気を付けている。
そして昨日からは、眠る時にあの地下の扉の前で横になることにした。
ごぉおおうん…と唸る低音が耳に心地良い子守唄となることに気付き、私のこの幸せな図書館での日々は、更に上質なものになっている。
いつか中にも入ってみたいが、鍵が見つからない限りは難しいだろう。
あの音のすぐ側で、本でも読めたら言うことなしなのだが。
こうした生活の何かを、ここに来たばかりの私は、非常にまずいことだと思っていたような気がする。
だが、今となってはそれの何を危惧していたのか、思い出せないし思い当たらない。
本を読むことには支障が無いので、さしあたって問題があるわけではないが、過去の自分が大切にしていたもののような気もするので、念のためここに書き留めておく。
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