ホラー

ある画家に纏わる都市伝説

Twitter300字SS第27回お題「絵」より(300字、改行含めず)


 ある著名な老画家の惨殺死体が、アトリエから見つかった。

 傍らに遺作と思われる油彩が一枚あったが、老画家が死しても尚握りしめていたペイティングナイフで、彼の体と同様に無惨に切り刻まれていた。


 その後、彼の最期の作品を蘇らせようと腕利きの職人たちが総出で修復に当たり、何とか元の姿を取り戻したその絵は、何年も前に行方不明になったという画家の若い妻を描いた肖像画だった。

 未完成ながらも優しく微笑む美しい妻。

 しかし彼女の真白い手には、画家のものとは明らかに違う、拙くそして真新しい筆致で、血塗られたナイフが描かれていた。


 あれから幾年も経ったが、未だに画家を殺した犯人も、画家の妻の行方も、杳として知れないという。


【了】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る