きっと、怪獣のいる非日常も、妙に居心地の悪い空白も今だけだ。
やがて終わりがやってきて、この非日常は遠のいてしまう。
四年一組だけの怪獣当番。
序盤でクラスメイトが「やられた」事実が明かされ、不安になった。
人を襲う怪獣の世話なんて小学生には荷が重いのではないか?……と、そんな間違った解釈をしたせいで、教室や光景に驚いた。「当番ってなにするの?」と、物語にのめりこめた。
当番は「忘れる」システムがあるらしいが、説明はない。だってみんなにとってそれは既に知っているものだから。
また、覚えているクラスメイトの会話に「アポロ」というワードがでてくるが、説明はなし。
だから読者は物語を読み進めていくことで、なんとなく流れを掴むようなつくりになっている。
この「読者のために解説する親切」を省くことで、「当番制のある四年一組のみんな」と「あくまで物語を傍観しているだけの読者」の区別を明確にしている。
読み始めこそ、読者は置いてけぼりにされたような気持ちを感じるが、この感覚があとで主人公の亘くんとリンクするのが面白い。
亘くんは四年一組の児童なのに当番が始まる前と変わらない日々を過ごしている。あと一歩、「一致団結」に入れない。その一歩があまりにも離れていて、しかも自分の意思で近づけるものではない。
また、それなりに理不尽な立場にいるのに、助けを望んでいない。「助けて」と言ってもバチはあたらない立場なのに別にいいやと許容している。
自分ではどうすることのできない流れを受け入れている姿が目に焼きつく。
最終的に亘くんはどうなるのだろう。