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第0話 マティアス・レンミンカイネン氏の講演
2025年4月、アメリカ第47代大統領トランプ氏の関税政策が世界中に混乱を招いている最中、著名な経済アナリスト、マティアス・レンミンカイネン氏は日本で講演を行った。
「トランプ氏は考えています。関税25%をぶち上げたところ、株価急落、各地でデモ。しかし気にしません。世界一の国の首長です。法外なディールを持ちかけても各国が妥協してきます。発動の日も90日延期、ということは実際には発動しません。あくまでディールです。これからのトランプ氏の考えを語ります。
2025年4月、トランプ氏は、世界経済を揺るがすような高関税政策を打ち出したものの、その後の展開を冷静に見極めているようです。株価の急落や各地でのデモにも動じず、あくまでも自身の「ディール」戦略の一環として捉えているでしょう。
トランプ氏の頭の中には、以下のような考えが渦巻いていると推測されます。
•「アメリカ第一主義」の徹底:
世界一の国の首長として、アメリカの国益を最優先に考えているでしょう。高関税政策も、アメリカ経済を立て直し、雇用を創出するための手段と捉えていると考えられます。
•交渉術としての高関税:
高関税は、あくまでも各国との交渉を有利に進めるためのカードに過ぎないと考えている可能性があります。実際に発動するかどうかは、各国の出方次第であり、より有利な条件を引き出すための駆け引きと捉えているでしょう。
•世界経済への影響力:
アメリカの経済規模を背景に、各国は最終的にアメリカの要求を受け入れると確信している可能性があります。一時的な混乱はあっても、最終的にはアメリカに有利な形で世界経済が再編されると見込んでいるかもしれません。
•国内世論のコントロール:
株価の急落やデモに対しても、自身の支持層には「強いアメリカ」をアピールできると計算している可能性があります。一部の反発はあっても、最終的には自身の政策がアメリカ国民の利益になると信じているでしょう。
•ディールによる政治的優位性
発動日の延期は、あくまで取引の駆け引きであり、各国とのディールを最大限に引き出すための戦略です。
今後のトランプ氏は、高関税政策をちらつかせながら、各国との個別交渉を進めていくと考えられます。各国がどこまで譲歩するのか、そして世界経済がどのような影響を受けるのか、予断を許さない状況が続くでしょう。
日本については、石破首相が電話会談を申し込んできました。日本にはこのように対応していくつもりです。トランプ氏の考えを続けます。
トランプ大統領は、石破首相からの電話会談の申し出に対し、以下のような考えを持っていると推測されます。
•二国間交渉の重視:
トランプ大統領は、多国間交渉よりも二国間交渉を好む傾向があります。日本との個別の交渉を通じて、アメリカに有利な条件を引き出そうとするでしょう。
•強硬な姿勢:
トランプ大統領は、日本に対しても強硬な姿勢で臨む可能性があります。特に、自動車や農業分野における市場開放を強く求めるでしょう。
•ディールの可能性:
高関税をちらつかせながら、日本からの投資拡大やアメリカ製品の輸入拡大など、具体的な譲歩を求めるでしょう。日本がどこまで譲歩できるかが、今後の交渉の鍵となります。
•アメリカの利益優先:
トランプ大統領は、あくまでもアメリカの国益を最優先に考えます。日本との友好関係も重要ですが、アメリカの経済的利益を損なうような妥協はしないでしょう。
•政治的利用:
日本との交渉を、自身の支持層へのアピール材料として利用する可能性があります。日本から譲歩を引き出すことで、「強いアメリカ」を印象付けようとするでしょう。
具体的な対応としては、以下のようなものが考えられます。
•高官による交渉:
トランプ政権の高官を日本に派遣し、集中的な交渉を行う可能性があります。
•特定の分野への圧力:
自動車や農業など、特定の分野に絞って圧力をかけ、日本からの譲歩を引き出そうとするでしょう。
•二国間貿易協定の締結:
高関税を回避するために、日本との間で新たな二国間貿易協定の締結を目指す可能性があります。
今後の日米交渉は、非常に厳しいものになることが予想されます。日本は、アメリカの要求にどこまで応じられるのか、難しい判断を迫られるでしょう。
日本や台湾の防衛については、こう考えています。
•「アメリカ第一主義」の防衛政策:
トランプ大統領は、アメリカの国益を最優先に考え、同盟国にも相応の負担を求める傾向があります。日本と台湾に対しても、防衛費の増額やアメリカ軍の駐留経費の負担増を求める可能性があります。
•中国への対抗意識:
トランプ大統領は、中国の軍事的台頭を強く警戒しており、日本と台湾を中国への対抗勢力として重視するでしょう。日米同盟や米台関係を強化し、中国を牽制しようとする可能性があります。
•地域安全保障への関与:
トランプ大統領は、アメリカの軍事的関与を最小限に抑えたいと考えていますが、東アジアの安全保障がアメリカの国益に大きく関わることも認識しているでしょう。状況に応じて、柔軟な対応を取る可能性があります。
•日本への期待:
トランプ大統領は、日本に対してより積極的な役割を期待するでしょう。日本の防衛力強化や地域安全保障への貢献を促す可能性があります。
•地域安全保障協力:
日本や台湾、その他の同盟国との連携を強化し、地域安全保障における協力体制を構築する可能性があります。
•防衛費の負担増:
日本と台湾に対して、防衛費の増額やアメリカ軍の駐留経費の負担増を求める可能性があります。
今後の東アジアの安全保障は、トランプ政権の政策によって大きく左右される可能性があります。日本と台湾は、アメリカとの連携を強化しながら、独自の防衛力を高めていく必要があるでしょう。」
1時間の講演が終わった。
講演を終えたレンミンカイネン氏は夕刻、講演のプロモーターに案内されて、宿舎に当てられた皇居前パレスホテルに戻り一息ついた。
客室のバルコニーから皇居が見える。皇居に向かったビルには一切の看板、サインが見えない。天皇に遠慮してそういうものを付けない慣習になっているのだという。
目に心地よい景色を眺めながら、部屋の冷蔵庫から出したビールを飲み、本日の講演を振り返った。
レンミンカイネン氏が主眼とし、最も力点を置いたのは防衛問題だった。トランプ大統領が進める現代のモンロー主義ともいえる政策は、言葉を変えれば割拠主義といってもいいものだ。アメリカの圧力がなくなれば、次に何が起こるかを、レンミンカイネン氏は日本人に気付いてほしかった。各国が勝手次第にやってくれと突き放されたら、まずは中国が、ついでロシアが日本にちょっかいを出してくるのは時間の問題だ。
レンミンカイネン氏は、皇居を眺めて長いため息をついた。ずいぶん待った。おのれもそろそろ80だ。親父殿から受け継いだ仕事もいつ本番が来るか来るかと待ち構えていて早60年。ついに待ちかねた戦雲が訪れようとしている。
レンミンカイネン氏はスリーパー、所謂潜伏スパイだった。密命を受けた親、マッティ・レンミンカイネンがフィンランドから日本に来て翌年に生まれ、いつしか仕事を受け継ぎ、3度目の大戦を待つうちに平和な時は滔々と流れてしまった。
長かった。
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