8.

 ”シコウ”にやって来る人間は実に多種多様だ。誰がどのような姿であっても誰も咎めない。以前、此処は唯一自由な世界なのだと語る老人がいた。此処でない何処かは自由ではないのか。そのように尋ねると、随分悲しい顔をして頷いた。だから自分は繰り返し此処へ来るのだと、そう呟いて頷いた。


 「思い出は実に効果的な檻ですわね。」突然女に声をかけられる。


 「精神的に縛られるのですもの。きっと死ぬまで抜け出せないのだわ。」言葉と裏腹に嬉しそうな印象をうける。

 「一生終わらない想いなんてそうそう巡り会えるものじゃないでしょう?」さも可笑しそうに答える。

 「中途半端に愛されるくらいなら、殺されるほど憎まれたいの。」艶やかに身を翻し女は去っていった。


 愛されないなら憎まれたい。殴られたような気分になるが、不思議と嫌ではない。貴方も狂っていらっしゃるのね。くすりと笑われたような気がした。

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