03:45
幸いがあるという虹のねもとにゆけば、きみがいるかとおもったけれど、どれだけあるいてもたどり着くことなどできはしなかった。
丘をこえてかなたへゆけば、きみに会えるかとおもったけれど、けっきょく一周まわってここへ戻ってきてしまった。
うつむけば地面はぼくのあしもとがいちばん暗くて、見あげれば空はぼくの頭上がいちばん青くて、気づけばきみはどこにもいなくて、いつだってぼくはここからうごけなかった。
ぼくにはここしかなかったけれど、それでもここがあったのだと、幸福は、ここ以外のどこかにあるのではなく、ここにいられるということこそが幸福だったのだと、気づいてもいなかったあのときが、幸福そのものだったのだと、あれもこれもそれもぜんぶ、ぼくはつねに遅すぎて、こんどもやはり、気づくのは、すべてなくしてしまったあとだった。
「ねぇ、幸福はいつかこわれることをしってしまったら、ずいぶんとおくびょうになってしまったよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます