第14話 警官殺害事件

 翌朝、TVを見ていると昨日の事件を言ってる。

「公園横で、若者4人が死傷する事件が発生しました。この若者は最近、発生している強盗団と見られ、警察は仲間割れによるものと見ています。

 仲間のうち、3人は死亡、残った1人は怪我をしていますが、仲間割れとなった原因については、分からないと話しています」


 カナレが掛けた念術によるものだろう。

「カナレ、念術を掛けるとその間の事は忘れてしまうのか?」

「ええ、そうです。私たちと会った事は覚えているでしょうが、念術を掛けてからの事は覚えていないでしょうから、自分が何故、人を殺したかも分からないままで、今、動転しているでしょう」

「だが、やつは3人を殺した。死刑になるか、ならなくても無期懲役だろう。

 ただ、裁判で俺とカナレの事が出てくると、警察から何か聞かれるかもしれないな」


 俺はカナレと一緒にアパートを出る。

 俺は大学に、カナレは勤め先であるケーキ屋に行く。

 大学に着くと、同級生からTVのニュースの事を聞かれた。

「TVで言っていた、強盗団の死傷事件って、石田の家の近くだろう。

 大丈夫だったか?」

「ああ、夜は警察官が多くなって、なんだか怖い感じになっているけど、俺はどうにか大丈夫だった」

「そう言えば、以前も河川敷で、野犬に襲われた人が居たんじゃないのか。

 なんか、あの辺りって最近怖くなって来てないか」

「うーん、そうかな。住んでいると分からないけど。でも、他の場所でも殺人や強盗ってあるじゃないか」

「まあ、それはそうだな。TVで放送されて目についているだけかもしれないな」


 大学が終わると、そのままレストランのバイトに向かう。

 俺がバイトする店では、昼のランチタイムは近所の主婦がバイトに来ているので、その人と交代になる。

 バイト先に着いた俺は、裏口から店のロッカー兼控室に入る。

「あら、一くん、来ていたの」

 声をかけてきたのは、昼のバイトに来ている主婦の香苗さんだ。

「香苗さん、お疲れ様です」

「それじゃ、後はお願いして、私は帰るわね。子供がそろそろ学校から帰ってくる頃だと思うの」

「最近、物騒だから気を付けて下さい」

「それはこっちのセリフよ。一くんの方が帰りが遅いんだから気を付けてよね。

 そうそう妹さんも帰りが遅いんでしょう。なるべく、一緒に帰ってあげてね」

 香苗さんも既にカナレの事は知っている。

 最初に会った時は香苗とカナレで、名前が似ていると盛り上がっていた。


 だが、強盗団の死傷事件があってから、最近は警察もパトロールを強化したりして、平和になってきた。

 コンビニ強盗やおやじ狩りも聞かない。

 だが、それも長く続かなかった。

「昨夜、河川敷で2人の警察官の死体が発見されました。二人は喉を掻き切られた跡があり、野犬に襲われたと警察は見ています。

 なお、二人の拳銃には弾は残っておらず、野犬に向けて発砲したと思われており、警察は怪我を負ったとみて、野犬の行方を追っています」


 俺は朝のTVでそのニュースが流れるとカナレを見たが、カナレは昨夜は俺とずっと一緒だった。

 と、いう事は、カナレ以外にも大型の獣が居る事になる。

 俺がカナレの返事を待っていると、カナレも俺が返事を待っていると思ったのか、口を開いた。

「多分、それは例の狐じゃないかと思います」

「あの、狐が人に憑いたというのか?」

「あのストーカーも狐に身体を乗っ取られ、狐に変身出来るようになりました。

 あの狐が人に憑いたと思った方がいいでしょう」

「そうなると、どういう欲望を持った人に憑いたのだろう」

「そこまでは分かりませんが、その場所に行くと憑かれた人の臭いとか残っているかもしれません」

「後から、行ってみようか」


 カナレと俺は、大学に行く前の時間に散歩を装って河川敷の方に来た。

 まだ、警察が規制線を張って現場検証をしているし、野次馬も来ている。

「やはりTVで放送したから野次馬も多いな」

「そうですね」

 俺とカナレは二人で現場検証をを見ていたが、カナレが俺の袖を引っ張った。

 帰りながら、話をする。

「カナレ、どうだ」

「ええ、臭いはありました。今度憑かれた人は多分女の人です」

「女の人?」

「そうです。お化粧の臭いがしました」

 アパートに帰った俺とカナレは、それぞれ大学と勤務先に向かう。

 TVでは、警察があの河川敷で大型犬が居ると想定して、探索をすることになったとニュースが流れており、野犬が見つかるまで河川敷は立ち入り禁止になったらしい。


 そして、夜になるとカナレは俺のバイトをしているレストランに来た。

 裏口から入って、着替えてから、ウェイトレスをする。

 マスターもただ働きは悪いと思ったのか、カナレにも2時間ほどではあるがバイト代を支払っている。

 だが、カナレがレストランで働くようになってから、お客さまが増えている。

 特にカナレが入る時間から男性客が増えているし、注文も多く入る。

 俺が対応しても男性客からは、余りいい顔をされないのは、カナレがやはり美形だからなんだろう。


「お疲れさまでした」

「ああ、二人とも、気を付けて帰るんだぞ。昨日も警官が殺されたばかりだから」

「でも河川敷の方には近づきませんから」

「ああ、でも公園をショートカットするんだろう。

 あそこも夜は暗いから、変な奴が出てくるかもしれないからな」

「分かりました。気を付けます」

 俺とカナレはバイト先の店を出て、アパートに向かった。

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