ねこの大冒険

蒲生 竜哉

ねこの大冒険

 ぼくルーちゃん。こねこのルーちゃん。

 ぼくね知ってる。なんでも知ってる。


 みんなはこねこっていうけれど、ぼくね、なんでも知ってるの。

 だってぼくもう大人だもん。

 ぼくは新町の公園で生まれたの。兄妹三人で遊んでいたら、なんだか人間に捕まっちゃった。

https://x.gd/bpJgt


 兄妹三人、ちりちりばらばら。それぞれ違うお家に貰われた。

 僕のお家は田舎のお家。お庭が広くて古い家。

 人間四人とそして猫。みんな優しくて、とっても楽しい。

 ご飯もあるし、何よりとっても暖かい。


 あのね、カサカサ。あの袋。

 ぼくね知ってる、あれの中。中には美味しいものが入っているの。

 だってこの前開けたもん。爪でひっかけたら穴あいた。あいた穴からカラカラ出てきた。とってもとっても美味しいの。だからたくさん食べちゃった。


 そうだ、あのね、ここにはね、キキ姉さんがいるんだよ。

 キキ姉さんは美人猫。グレーの毛皮にながーい尻尾。耳がなんだかくるっとしてる。

 僕と同じしましま尻尾。

 僕は茶色い猫だけど、キキ姉さんはグレーの毛皮。なんだかゴージャス、ピカピカしてる。

https://x.gd/VJF93


 キキ姉さんはとっても気高いの。とってもとっても気高いの。だから、僕は話せない。

 プロレスごっこがしたいけど、キキ姉さんは遊んでくれない。こどもの遊びはしてくれない。

 たまに飛びかかってみるけれど、シャッシャッ、パシッて怒るだけ。


 ある日、大冒険に出かけたの。

 いつもは閉じてる和室の障子が空いてたの。

 最初に出たのはキキ姉さん。するっと器用に外に出た。

 たいへん大変、これはたいへん。

 僕も遅れないように行かなくちゃ。


 お外の空気はとっても素敵。なんだかいろんな匂いがする。

 馬場さんちの犬のレオをからかいながら、ぼくらはお庭をそぞろ歩く。

 くんくんくん。

 今日もここは異常なし。お庭を回って表に回る。

 門を潜って大通りへ。

 ここは危ない、気をつけないと。宅急便が走ってる。


 でもキキ姉さんは慣れた様子。壁際歩いてお隣へ。

 ぴょんぴょん歩いて後を追う。

 置いてけぼりは大変たいへん。帰り方がわかんない。

 だから一生懸命追いかける。

 ぐるっと回って大通り。


 通りを歩くのとっても怖い。

 キキ姉さんはスタスタ渡る。でも、怖くてすぐには走れない。

 お尻をモズモズって振ってから、ぼくは一気に駆け抜けた。

 壁の前で急ストップ。勢い余って壁に乗る。


 塀の上から下を見る。キキ姉さんは手慣れた様子。座って尻尾を舐めている。

 斉藤さんちはすぐ隣。畑をやってていい匂い。

 トマト、とうもろこし、おナスにきゅうり。食べられないけどいい匂い。

 畑の匂い、土の匂い。

 とってもとってもいい匂い。


 斉藤さんちの縁の下、おしっこしてからまた外へ。

 慣れた様子で吉田さんち。

「あら、来たの?」

 吉田さんが笑ってる。

 笑うの大好き。笑ってくれるとみんなが優しい。

「お連れさん? 大変ね」

 吉田さんは鰹節くれた。お皿にどっさり、山盛りで。

 キキ姉さんと二人で食べる。

 ウニャウニャウニャウニャ。

 美味しいな。うちでもくれるといいのにな。かつ節大好き、美味しいな。


 キキ姉さんは歩くの早い。

 スタッと塀の上に乗る。

 たいへん大変、遅れちゃ大変。キキ姉さんの後ついて、一生懸命追いかける。


 乗っかったのはうちの塀。ぐるっと回っておうちの庭へ。

 カシ、カシ、カシ。

 帰りの合図。

 キキ姉さんが窓を掻く。肉球使ってガラスを叩く。


 大冒険はもう終わり。

 タタタタターって台所。

 山盛りどっさりいつものカリカリ。

 二人でもぐもぐたくさん食べた。

 たくさん食べて、もう一杯。

 もうお腹はポンポコリン。

 二人でソファの上にぽん。ぐるぐる回ってゆっくり休む。


 もうすぐテレビだ。ニュースの時間。

 ぼくは起きるとママを見た。

 ママも、パパも笑ってる。倫ちゃんも曜君も笑ってる。

 笑うの素敵。とっても素敵。

 

 ぼく、このうちにきてよかったな。

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ねこの大冒険 蒲生 竜哉 @tatsuya_gamo

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