そのヒントが、日本神話に隠されちょるとよ

「そっか……。母智丘もちおってピラミッドやったんか……」

じゃないかなじゃらせんどか!? 神社ン人に聞いたっちゃけんど、周辺の山も幾つか、頂上に似たような巨石がゴロゴロしちょるらしいど。勿論、何の調査もされちょらんやろけど」


 雄治の話によると、山頂母智丘神社の背後には、数十トンクラスの巨石が人為的に半円形に並べられている。それがどうやら御神体っぽい。周囲からは大量の縄文土器が出土し、太古より信仰の対象だったのではないか、という。


 実は日本中にそのような遺跡(!?)が多数存在し、「日本のピラミッド」と呼ばれているのだとか。

 中でも広島県の葦嶽山などは、キレイに加工された巨石が多数配置され、素人目にも人工物だと判明するらしい。古代人はどうやって、巨石を山頂まで運び上げたのか。


「そイだけじゃねえ。秋田の黒又山なんかは、科学調査によって山全体が人工物やと判明しちょる。調べれば他にも沢山あるかもしれん」

「そうなんだ。日本もスゴいね……」

「じゃっど~。他にも高知の唐人駄場やら、巨石文明の痕跡は色々あっど。与那国の海底遺跡とか」

「お、出た。与那国海底遺跡!!」


 へ~~~~。

 日本の古代史、ホントに面白いじゃん。

 ガッコの歴史教科の先生とか、どうしてそういう話をしてくれないんだろう。――


「でもやっぱり、日本の古代史って海外に比べると派手さがないよね。なんでだろう……」

「そのヒントが、日本神話に隠されちょるとよ。あ、そイはオイの想像やっちゃけんど……」

「どういうこと?」


 雄治は店員を呼び焼酎のお代わりをオーダーし、解説し始める。


「ニニギノミコト御一行様が、高天原かイ高千穂峰に降臨しっせ、宮崎だか鹿児島だかに下りてっとよ。そしたらコノハナサクヤっちゅう別嬪べっぴんさんを見つけたらしい。で、『まぐわひせむ!!』ち口説いた」

「なにそれ~!? エロいんだけど(笑)」


「そイで、コノハナサクヤの親父おやっさんに『嫁にくれ』ち頼んだら、『姉のイワナガもワンセットでもろてくれ』っち頼まれた。姉妹共娶るのががこの地方のルールや、と」

「あははは」


「じゃっどんニニギどんは、『不細工なイワナガはいらん。妹のコノハナサクヤだけでよか』っち言っせ、姉イワナガを拒否ったらしい」

ヒドいね……(苦笑)」


「そしたら親父おやっさんとイワナガが怒った。『弱っちいコノハナサクヤだけを選択した以上、貴方がた天孫の御子孫は今後、ひ弱で寿命も短くなる』っち捨て台詞を吐いたらしい。で、寿命が何万歳もあった天孫……つまり天皇家は、そイから寿命が百歳位に縮まったっちゅう逸話やっちゃけどな」

「……」


「『ノハナサクヤ』に、『イワナガ』じゃろ? つまり太古の日本人は、巨石建造物の文明を捨てっせ、木造建築を選択した歴史がある。コノハナサクヤのエピソードは、そげな歴史を示唆しちょっとやないか……ちオイは思ちょっとよ」

「あっ!!」

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