第15話 気持ちいい!

 冒険者たちが村に滞在してから村の生活が一変していった。


まずは冒険者達が魔物を狩ることで、村に食肉や素材があふれる。もちろんクラークが毎日のように魔物を狩っていたが、一人が狩る量とは違い、人数が多いとかなり違ってくる。


魔物を村側が買い取る。

儲かった金で村の物を買ってもらう。


今なら保存食の乾麺のパスタやうどんとか木炭が良く売れるが、魔物からの素材で作る、防具や武器などの用具類もよく売れる。

もちろん作り切れない素材は都に売りに行く。


あと食事の方は、村が用意するのは、基本は元々この村で食べられていた最低限の食事不味い料理だけだ。

俺の発明した食事を、初日にたらふく食べた冒険者たちは、普通の食事には不味い食事満足できなくなり、俺の考えた食事を求める。


村人たちはシール指導の下に、俺の考えた食事を作って冒険者に販売している。


冒険者たちも、他の町や……。いいや都ですら存在しないレアな商品が手に入り、食べたことのない美味しい料理に舌鼓をうつ。

パスタやベーコンやハムとかの燻製とかの美味しい保存食は、冒険者達に欲しくてたまらない商品に違いない。


もちろん木炭もだ。

魔法使いが、精霊魔法の火魔法を使うためには、火が近く無ければ使用できない。

魔法使いは火の確保はかなり重要だ。松明などなら短時間しか使用できないが、木炭なら長時間の維持が可能になる。しかも火が燃え上がらないから獲物に気づかれにくい。その上火が松明に比べて消えにくいと来たら冒険者なら誰でも欲しいだろう。

そして野営時の調理に火が出なく、煙が出ない炭は魔物に気づかれにくいので、便利この上が無い。


冒険者達は魔物を狩って村に売り、自分の懐も潤うし、都よりも美味しい食事をして装備を良くしていく。

村人は冒険者たちが買い物をして金を落としていくから、どんどん儲かっていく。

さらには近隣の魔物を狩ってくれるから、村の安全性が高まる。


もうwin、winな状態!


それまでの村はたいして産業もなく、あるといったらわずかな野菜と麦に近い作物と、クラークが取ってくる魔物の素材を加工して都に売りに行っていただけ。

俺の発明で儲かりかけていた村は、一気に景気が良くなっていく。



誰がこの計画を立てたかって?! 村長ぺぺに悪知恵を吹き込んだ、この黒幕は誰かってだって!!!


そう‥‥‥見た目は子供、頭脳は大人、その名も『神童 ラーク』!!!!






「なにやっているんだ? ラーク、稽古終わるぞ!」


クラークは不思議そうに俺を見つめる。

俺は木刀を天高く掲げてポーズをとっていたからだ。


ふう‥‥‥軽く自分の頭の良さに酔っていた。


「ラーク、なにニヤニヤしてんだ、いいことでもあったか?」


ラッシュも俺との、朝錬に参加し出してから結構たつ。今ではお互いに本気にならない程度の打ち合いの訓練をする仲になった。


彼らは毎日キマイラ探しをして、ついでに魔物を狩り。夜はうちに泊まりモナと‥‥‥ゴホン…ゴホン。


まあ仲良くなってくるのは当然だろう。


「別に」


「なんだよ!教えろよ」


ラッシュがヘッドロックをかけてくる。

兄弟がいなく冒険者として年上達と普段生活していたラッシュは、まるで俺が自分の弟みたいに、接してくれる。

俺も兄貴が出来たら、こんな感じかなと思ってしまう。


「痛いって、なあに、新しい料理を思い付いただけだよ」


「なに!! 試食したい」


「どうしようかな」


「お父さんも入れて」


‥‥最近は俺とラッシュと仲良くすると、なぜかクラークが入ってくる。

ヤキモチ嫉妬か?


‥‥きもいぞクラーク。










「リリックいる?」


俺はリリックの元を尋ねた。


「ああ、こっちだよ」


窯の方に向かうと炭で真っ黒になっているリリックがいる。

木炭の製造方法を村に公開したが、窯を作ったりいろいろなタイミングが必要になって、結局のところうまくできるのが、リリックしか出来なくて専門の仕事になっていた。

乾麺のパスタやうどんの方は村人でも簡単に作れるから、そっちはリリックは完全に手を引いたが、村長ぺぺには約束通りの報酬をもらっている。


「忙しそうだね」


リリックはいやいやと、首を振って。


「そうでもないよ、木の伐採とか運搬とか、いろいろな面倒なことはラークが、手配してくれているし、後はただ燃やしているのを見守るだけだしね」


いろいろ温度管理が必要なのだが、リリックは職人肌だから簡単そうに言うな。

まあ孤独に作業するのが好きと言っていたし、天職だろこれ。


「ならよかった、ところで頼んだもの出来そう?」


俺は新たに依頼したものを聞いた。俺の簡易的な図と説明でできるかどうか思っていた。


「できてるよ」


もう、どっかのドラマのバーテンダーみたいに軽くいうな。けっこう大変なはずのだが?




「これこれ、もう天才!」


想像以上にいい出来栄え。

これは俺の念願だったものが出来た。


「ラークって本当にすごいな、俺にはどんなに考えても思いつかないわ!」


俺には前世の知恵があるからだよリリック。実現するあんたの方がすごい。

















「はううううううっ気持ちいい!」


俺は家の庭先で風呂に入っていた。

そうリリックに作ってもらったのはお風呂。しかも木の桶風呂。


木の断面を揃うように合わせて削り、つなぎ合わせて水漏れをしないように弾性がある木を使い組み上げ、縛って固定する。端には銅を加工したパイプを取り付ける。スライムからとった体液と木の樹脂を混ぜて使い、わずかな隙間をふさぐ。パイプを沢山曲げてそこに火があたるようにする。それを取り囲み、薪で加熱すると中に入れた水がお湯になって沸いてくる。


この世界は水浴びとかの習慣はあるけど、お湯を貯めて風呂に入るとかと言った習慣はない。

しかも身体を洗うのは川に入るのだから、冬は寒くてかなわん。普段はせいぜい水を含ませた布で身体を拭くぐらい。

魔法使いなら水魔法を使い身体を洗うのだが、一般人にはそれをすることが出来ない。


そんな現状は日本人だった俺は、この7年間不満だった。

魔法ですれば簡単に風呂ができるが、魔法を使えることを秘密にしているから、家族には内緒クラーク達には内緒で魔法で地面に穴を掘り、お湯を入れて風呂を作り、誰にも知られないように隠れて入っていた。

でもこれなら堂々と入れる。なんせ魔法使っていないからね…‥‥もう最高!!!!!

ちなみに運ぶのはリリック(身体強化の魔法は使える)とクラークに。水はシールの魔法で入れてもらっている。






「おっラーク、なに裸でなにしてんの?」


「気持ちいいよ」


ラッシュ達が狩りから帰ってきたか!大丈夫だぜ入っても、みんなで入れるように大きめにリリック作ってもらったからな。


「なにこれ? お湯?お湯に入っているの?水ではないんだ?どんな感じ?」


不思議そうにしているラッシュ。


「入ればわかるよ」






「あったかい……これ!気持ちえええっ」


その場で全裸になり即入ってきたラッシュ。


フフフ……。

ラッシュもこの気持ちよさがわかるか?水風呂しか体験したことなかったから初体験だよな!!!


正直、この世界の人は臭い人が多い。なぜなら水浴びさえもしない人が多いからだ。

まあ冷たい水の中に入るのは嫌だもんな。

でも清潔にしてないから皮膚の病気も実際のところ多い。だからこの世界は、いろいろな病にかかりやすかったり体温を上げることをしないからして、生存率が低かったりもする。


だからこれ量産して都で売れば、すごいことになるかもな……。



「いいなあ、お父さんも入る!」


クラークも服を脱いで入ってきた。おい息子をチンコを息子にくっつけるな!!!


「おっ?じゃあ、俺も」


マッシュまで全裸になって入ってきた。限界だ!そこまではでかくは作ってない!

狭い風呂におっさん達が入ってきたからもう地獄絵図だろ!!


こらマッシュも俺にチンコをつけるな!!


ラッシュも!!!

















そして………。




滅多に身体を洗わない男たちが、風呂に入ってきた後のことを想像してください。






風呂には大量の垢が浮いていた。



きたねーな!おい!

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