第8話
「実湖、遅いな、また追っ手が来てるとかじゃないよな?」
その頃氷夜は時間の巻き戻しも終わり、実湖の帰りを待っていた。
ふと、近くの茂みがガサガサと音を立てた。
咄嗟に身構えると、実湖が茂みをかき分けて戻って来たところだった。
「戻ったよ。遅くなってすまない。」
「いや、大丈夫。随分遠くまで行ってたんだな。」
「そうだね、森の入り口あたりまで行っていたから遅くなってしまった。」
実湖は氷夜から目を逸らしながら言った。
「そっか。それで、これからどうする?」
「…氷夜はどうしたい?」
「俺は、親父を殺したあの家を潰したい。」
「復讐、ってこと?」
「そうなるのかな?親父はいつも俺のことを庇ってくれてはいたけど、俺と言葉を交わすことはなかった。親父も俺の事なんかどうでもよかったのかも知れない。」
「そんなことない!」
思わず大きな声が出てしまったようで、氷夜が驚く。
少しボリューム落として取り繕うように言い直す。
「そんなことないと思うよ、どうでも良いんだったら庇ってくれたりもしないでしょ?」
氷夜は静かに頷いた。
「私は氷夜に協力するよ。でも1つ聞きたいことがある。」
「なに?」
実湖は少しの間虚空を見つめたあと、口を開いた。
「氷夜の家を潰して、復讐が終わったら、そのあとはどうするつもり?」
「その後のことが決まらないうちは復讐なんてしないほうがいい。」
「そうしないと、復讐が終わった後には何も残らない、ただの復讐に取り憑かれたモノになってしまう。」
「氷夜はあの家に復讐して、その後どうするの?」
実湖の重い問いかけに、氷夜は俯いた状態のままどう答えるべきか、悩んだ末にこう答えた。
「この世界から能力を無くす。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます