第96話 英雄は庶民の中に その1

 ナータからのメッセージが届いて五分もしないうちに、さっき別れたばかりの冗談社の代表取締役からメールがきた。もう会社に着いたらしい。ある人からのメールを添付してあった。


「先ほどはお疲れ様でした。久々に会えてうれしかったです。

友人の友人から送られてきたメールです。

以下は、原発の現場で働いているご家族からの依頼だよ。


『……………………………皆さん

どうかお願いがあります。

みなさんからの祈りをお願いします。


今、福島原発で、

命がけで我々の国この日本を、

日本国民を、

あなたを、

あなたの家族を救う為に、

懸命に仕事をしている人々がいます。

どうか祈って下さい。

作業が成功することを。


自衛隊特殊化学防護隊の隊員たちは志願者です。

しかも年齢は55歳から上で、

もう子育ても終わったので、

思い残す事は無いと志願者となったようです。

その様な志願者が50名。

時事通信社の記事があります。

東電が全国の電力会社、協力企業に助けを求めました。

志願者です。

決死隊として原発の内部作業をする原発関係者のベテランを募ったのです。


中国電力の原発勤務40年というある男性が、

この作業は自分達のようなベテランがやるべきだ、

自分は定年まで後一年であるし、

子育ても終わったとして志願したそうです。

ご家族は、

静かに思いを語る自分の夫であり、

子供たちの父親の決意に、

何も言えなかたそうです。

その方の娘さんは、

今までと違う父のもの静かな顔を初めて見たそうです。

翌朝、いつも出勤する時のように、

じゃあ、いってくると言って玄関を出たそうです。


原発での作業中は、放射線による被爆があります。

国が定める限界被爆単位100ミリシーベルト。

それが250ミリシーベルトになりました。

何故なら彼等が望んだからです。

100ミリシーベルトではすぐ時間が経ってしまい数分では作業ができないからです。

だから彼らは国に250ミリシーベルトに上げてくれといいました。

その為の自分たちへの被爆量は覚悟の上です。

そのおかげで、

昨日、あと一歩で臨界点と言う所で臨界が止まったのです。

もし臨界点に達していたら…

私達は今、

この時を

この時間を

過ごしていません。

家族と恋人と仲間、

友人とこの時間が無かったかもしれないのです。

半径300キロ生物の生存率は、

限りなくゼロに近かったんです。

今のこの時間は、

彼等のおかげなのです。

お願いです。

みなさん祈ってください。

作業が成功するように

祈ってください。

みなさんの思いを送ってください。

今日 放水作業が無事終わりました。

明日の作業も成功するように…。

隊員たちが無事であるように…。

どうか祈ってください。

どうかお願いします。

そして家族、友人、仲間、一人でも多く方々に

知ってもらい、

祈って欲しいので伝えてください。

お願いします』


以上」


 渚沙は胸を打たれ、さらに多くの一般人が傷つくことを許してはいけないと思い、SNSで紹介したいと申し出た。冗談者の代表取締役は、依頼主であるご家族からきっと喜ばれるでしょうと承知してくれた。

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