夢から覚めない




おれは将軍だった

（そうだよな？）

誰かに問い掛けたかった

だが手頃な側近がいなかった

おれは将軍だった

そして素っ裸にブリーフといった格好の一万五千の足軽を引き連れていた

（一体、何のために？）

宿敵、山下を討つのだ

（そうだよな？）

軍は森を歩いていた

段々、腹が減って来た

腹が減っては戦は出来ないとか言ってみた

ハーバード大、出身の参謀もそれに同意した

参謀は自分の懐からおむすびを取り出すと早速むしゃむしゃとこれ見よがしに食べ始めた

将軍の自分には一口もくれなかった

「ええい！　寄越せ！　寄越すのじゃあ！」

無理やり奪って食べた

「将軍……少し休みましょう。将軍は馬に乗っておられますが多くの兵は徒歩でございます。なにとぞご慈悲を」

その時おれの目の前を痩せた犬がゆっくりと移動した

（こいつ旨そうだな）

直ちにブリーフ弓矢部隊へ伝令を出した

「あの痩せ犬を大至急、捕獲せよっ」

ブリーフ弓矢部隊はまるで豪雨のような矢を野犬へと向かって発射した

それは森の反対側で待機していたブリーフ竹槍部隊へと見事に突き刺さった

敵との戦が始まる前に味方の三分の一の戦力が失われた

「……なんということだ」

おれは呻いた

「将軍、降伏いたしましょう」

ハーバード大、卒の参謀は知能が高くそもそも戦場でブリーフを履いただけの兵士の存在を完全に否定していた

全くその通りだった

（おれはどうしてブリーフしか履いていない連中と一緒に戦っているのだろう？）

そして目が覚めた

「なんだ夢か……」

道理で辻褄が合わないわけだ

上半身を起き上がらせた

目の前には残りのブリーフ部隊がしゃがみ込み暇そうに雑草をぶちぶちと引っこ抜いたりしていた

みんなおれからの指示を待っていた

夢から覚めたらまた夢の続きが始まった

おれは相変わらずブリーフ部隊を指揮しなくてはならない立場の存在らしく

全くこの現実ってやつにうんざりさせられた

死ぬまで続くのだろう

だが死ねば終わるのか？

（……山下、お前は今、何を考えている？）

お前もおれと同じ気持ちか？



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