夏服の少女、奇跡
何処へ行っても
誰といても
たった一人の少女は
薄い夏服で
戦闘機が飛び交う青空の下をゆっくりと歩いていた
腰まで伸びた長い髪
それを風に揺らし
整髪剤の偽りの花の香りが纏わり付いた
しかしそれは少女が自分で選んだ物ではないのだ
少女を見つめるわたしはもはや壊れてしまっていて
この世界で
ようやく微笑むことが出来る予感がしていた
頭がおかしくなったのではない
そうではない
少女はたった一人でそこにいて
吹き付ける風は生ぬるかったし
それが気持ち悪くて
まだ壊れずにそこにいたけれど
わたしは次の質問を投げ掛けずにはいられなかった
(……あと何秒?)
(……あと何秒そうしていられるのさ?)
奇跡のように少女を避けて落下する爆弾だった
けれどそんなものは錯覚なんだよ
いい加減、目を覚ませよ
柔らかい肌は何も拒めず
ただ黙って受け入れるだけ
少女よ
少女というその物質よ
その先に何が待ち構えているのか
想像することが出来ないのか?
死んでしまうよ
それでは駄目なんだ
そのやり方はもう通用しないんだ
わたしは既に先に壊れてしまっているからわかる
きみはまだ生きていかなくてはならない
この世界で
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