マシュマロ破壊器

雨矢健太郎

絶望の森




森の最深部で

もうこれ以上は歩けないと思っていた

それでも日々は続いた

夜は冷気が増し

星が死んでいるから不快だ

狼が

そう遠くはない場所で何かを叫んでいた

何を言いたいのかさっぱり解らなかった

いつだって死ぬよう眠りに落ちた

（もうこのまま目覚めなければいいのに……）

そう思っても

また朝になれば歩き出さなくてはならなかった

自分が何処へ行こうとしているのか？

そもそもこれは本当に前進なのか？

それすら疑い始めたらもう何もやる気が無くなってしまう

呼吸をする度、身体の何処かが痛んだ

小雨が降り続き

体温をそっと優しく奪っていった

風は吹いていたのかどうかよく憶えていない

記憶は繊維のよう分断され

歩き続ける自分の足元をまるで初めて見る物のよう眺めていたこともあった

（わたしは誰なのか？）

そう思ったこの想いは一体、何なのか？

何一つ理解することは出来ない

（全てが終われば良いのに）

ぬかるむ泥を踏む度そう思った

遥か昔、恋人を殺された若き詩人はこの世界の全てを呪ったらしい

だがそいつは異常性欲者だったためその時ひどく勃起していたそうだ

もう何もかもどうでも良い

それ以外には何も無い



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう！

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録（無料）

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る