人魚は戦争がしたい
小さな音とともにロックを意味する赤い表示が解放を意味する緑に変わりました。同時に機外のスイッチが九〇度回り、与圧がはずれて吹き出すように空気が抜けて、装甲板を跳ね上げました。
干上がった海の外れで、少年は操縦槽からほうほうの体で脱出しました。実際のところ、小便がしたくてたまらなかったのです。オゾン濃度が低くなるまで待ちなさいと人魚こと、くはし大太郎法師のミズハに言われて、それで困っていたのでした。
機体から五歩のところで一物を出して勢い良く放尿する中、ミズハは二〇m近くある大きな機体をくねらせて見ないようにセンサーを手で顔を覆いました。
--バカー! 乙女の前でなんてことしてんのよ!
--うっさい。お前の中で漏らさなかっただけいいだろ。はー。
湯気を前に少年はとろける顔をしました。ミズハからはビービーと警告音がなっています。
--水分がもったいないとか思わないの?
--うっさいなあ。水分回収装置作る時間がなかったての。
なにが気にくわなかったのか、ミズハは器用にも体育座りをしてぶつぶつ文句を言いました。
少年は無視して小便をしました。事が終わって体を揺すっていると、ミズハは文句のボリュームをあげて、少年にも聞こえるように文句を言いました。
--私、あんたの名前だって聞いてない。
--聞かれてないし。
--名乗るが礼儀でしょ。あと隠して。
--失礼な! 隠してるだろ!
--熱源探知にひっかかるの!
少年は何言ってんだこのロボットと思いましたが、つい笑ってしまいました。女の子というものは、こういうものかもしれないと思ったのでした。
--何で笑っているの! 変態なの! 変態さんなの!?
--ちげえよ。俺の名前は和久。それにしても腹減った。おむすび食べたい。
--ワクムスビ?
--変な略しかたすんな。まあいいや。そんじゃな。元気で暮らせよ。
もとより荷物があるでなく、和久はそのまま機体から離れて行きました。
すぐにミズハは立ち上がって歩行を始めました。
--ちょっと! 私と戦争しないでどこに行こうっての?
--とりあえず食べるものを探しに。そんでまあ、女の子に会いに行こうかと。
--はっ?
--なんかお前見てたら女の子も悪くないなって。
近くの砂丘がレーザーによって爆発四散しました。ミズハの胸部対物レーザーでした。
--意味分かんねえな
--分からないのはこっちの話! 私と戦争しようと約束した!
--するわけねえだろ。
少し考えたあと、和久は口を開きました。
--俺の親だって戦争さえなければ俺を何度も捨てようとまでは思わなかったろう。だから戦争は嫌いなんだ。
--一緒に戦ったでしょ。あの調子でいけばいつかは私とも互角に戦えるパイロットになる!
--戦ってどうすんだよ。
--お互いを高めあうの。戦争は技術を豊かにするわ。
--まあ、機械はそうなのかもしれないけど、俺違うし。
ミズハは冷却器から湯気を吹き出しました。とても怒っているようでした。
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