第26話 からすの呉服屋さん

 烏の呉服屋さんに行こうよ、と妹が言ったので支度して出かけることにした。持って行くのは、貯め込んだ胡桃や拾ったお菓子。山を登り、着いたときには夕方で、薄闇の中で商品がきらきら光る。

 烏の呉服屋さんはとてもおしゃれ。その上私たちが持ってきたものの代わりに素敵な装いを見立ててくれるのだ。


 妹は、さらさらした桃色の端切れをつやつや光る緑のボタンで留めてもらった。

 私は、ビロードのような真紅のマントを金のコインで留めてもらった。


 とても可愛いよ、と言ってくれた烏の呉服屋さんは、真っ黒の体に一つだけ、羽の形をした銀の飾りを付けていた。きれいですね、と言うとにっこり笑って、鋭いくちばしでお菓子の袋を引き裂いた。


改行・スペース抜き298字

Twitter300字ss企画 第七十回 お題「服」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る