第24話 その赤い陽に背を押され

 よく憶えてないが、妙な夢を見た。ぽっかり目を開けて、また閉じる。一度目を開けただけなのに、もう眠りには戻れそうになかった。

 遮光カーテンの隙間から差す光が床を赤く染める。壁の時計は六時前。けれど今が朝か夕か分からない。一晩中働いて帰って泥のように眠っていたし、この時期は朝日と夕日が判別しづらい。

 意を決して起き上がり、枕元の水を飲む。一つ体を伸ばしカーテンを開けた。

 夕方だった。

 西の端へ沈む太陽、走ってランドセルを揺らす小学生、その横でベルを鳴らす自転車、家路を辿る車で渋滞の道路――。

 秋の夕べは、皆なぜかしら急ぎ足だ。

 起き抜けの私は、ベランダに出て水を飲む。温い水が胃に落ちて、乾きを満たした。


改行・スペース抜き297字

Twitter300字ss企画 第六十八回 お題「夕」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る