焦燥
連絡を受け駆け付けたかばんは
倒れたイエイヌに近寄り、腕やらを触った後、深く息を吐いた。
「残念ながら...、もう...」
「どうして...、こんなことが...」
ただの絶望というより、信じられなかった。
こんな平和な所で、誰かが自然的要因ではなく、作為的に殺されたというのが何より衝撃的だった。
「練炭による一酸化炭素中毒による自殺に工作したみたいだね」
彼女は冷静に分析を始めた。
「工作した...?」
「この道具、島では見つからない中々レアな代物なのです」
「これを使うのには火が必要なのです」
かばんが連れてきたフクロウ二人が言った。
「順を追って説明するね。
まず、死因だけど首を絞められた跡がある。
これが直接的な死因。
犯人は、イエイヌさんを殺害した後、どこかから持ち出した七輪と炭で、この部屋を煙で蔓延させて一酸化炭素の中毒死に見せ掛けた可能性が高いってことだよ」
彼女なりにわかりやすく説明したのだろうが、
キュルルにはあまりよく理解できなかった。
「犯人は多少賢いヤツなのです」
「火を使えるヤツはそうそういないのです」
「そう、この原理がわかってて、
炭に火を付けるための知識がある子が犯人ってこと...」
「火を扱える賢い子...」
ゆっくりと思い当たる節を考え始めた。
「ねえ」
いきなり声を掛けられたので驚いた。
「な、なに!?」
「いや、ずっと黙ってるからどうしたのかなって...」
「え...、いや、何でもないわよ...」
一瞬不思議そうな顔をしたサーバルだったが、
深入りした質問は飛ばさなかった。
「なんかね、火が使えて賢い子が犯人みたいだよ」
「へえ、そうなの...」
「私は火が怖いけど...、
確かカラカル、火使えたよね?
キュルルちゃんに頼まれて夜外に出掛けたとき、かばんちゃんに借りたランプに火を...」
「あたしが殺したとでも言うの!?」
そう言って彼女を睨みつけた。
「い、いや...、そういうわけじゃ...」
サーバルはひどく萎縮してしまった。
「友達を疑うなんて、あんた最低ね」
そう台詞を吐き捨てた。
「ちょっと、どこ行くの!?」
「一人にさせて」
森の方へ歩いて行った。
「ハァ...」
溜め息が出た。
あんなに緊張したのは初めてだ。
最初は爪で引っ掻きビーストのせいにでもしてやろうと思ったが、
自分が返り血を浴びる可能性もあったし、
傷跡から犯人が特定されてしまう可能性を思って、首を絞めた後、七輪と練炭を使い彼女が自殺したかのように見せ掛けた。
しかし、ことごとくその思惑は空振りになってしまった。
前々からイエイヌに対して、憎悪の感情があった。キュルル達の目を盗んでは独自で下調べを念入りに行っていたのに。
“殺す”という手段は最終手段だった。
彼女が自分の感情を逆撫でするような事を言わなければ、こんなことにはならなかった。
万一、自分が殺した事がバレたら。
徐々にその恐怖が、彼女自身を包み込もうと
していた。
「どうすればいいのよ...」
自分の拳で木の幹を叩いた。
「オマエ、他のフレンズを殺したのか」
「オマエ、もう元の道には戻れないナ」
そのおちょくったような口調を聞き振り返った。
「あんた達...」
やけに一部分目立つ色...。
フウチョウの奴らだ。
「オマエは既にクロい。この私達よりも」
「その汚れた心で何時までも歩き続けるのか」
「...」
「ソンナだと嫌われるぞ」
「最愛のヒトに」
「あんたらはどうしろって言いたいのよ」
「モチロン、正直に打ち明けるべきだナ」
「隠し通すより、そっちの方が良いナ」
「くだらない...。聞いたこっちがバカだったわ。自分で考える」
「フフ...、オマエの事言ってもいいんだぞ」
「まあ、すぐにネタバレはしないがナ」
そう言われた瞬間、寒気と共に恐怖心が襲った。何故なら、あいつらに自白しなきゃバラすと脅迫されたのだ。
そういう解釈で間違いはないだろう。
「ちょっと今なんて!」
振り返った時にはもういなかった。
取り残されたのは、バレてしまうかもという
恐怖心だった。
(ヤバい。アイツらをほおっておいたら...
あたしのやったことがバレるじゃない...)
早急に手を打たなければ。
しかし、自らの手で何かするのはダメだ。
これ以上怪しまれたら、余計不利になる。
「そうだ...」
突如、ひとつの名案が思い浮かんだ。
「サーバル...、あれ?カラカルは?」
キュルルが尋ねた。
「えっと、一人になりたいって...」
「どういうこと?」
「私がいけないんだ。私がカラカルのこと、
疑っちゃったから...。親友を信じられないって最低だよね...」
「サーバル...」
キュルルも一度カラカルのことを疑ってしまったことを内心反省した。
イエイヌと最初にであったときのこともあってか、良からぬ想像をしてしまった。
口には出さなかったものの、彼女の話を聞き
考えを改める。
「私、絶対カラカルは関係ないと思う。
謝らないと...」
「僕も一瞬疑っちゃったから謝らないと...。だけど、カラカルの為にイエイヌと協力して、
サプライズパーティーを開こうと思ってたのに、こんな風になっちゃうなんて...」
「なっちゃったものは、しょうがないよ。
キュルルちゃん...」
励まそうとサーバルはそう言葉をかけた。
ーーーーー
【作者より】
何故か2話のデータしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます