ホテルとロッジ

ベルが鳴ったので急ぐ。

この耳のおかげでベルの音を聞き逃したことは一度もない。


「こんにちは~」


「ああ、リョコウバトさん。

いつもご贔屓に、ありがとうございます」


"あの一件"以来、彼女は度々このホテルに顔を出すようになった。


「で...、今日はどうしたのでしょうか?」


「少しオオミミさんに相談がありまして~」


「相談?」


「実は、この前キョウシュウエリアに行った時、

あるフレンズがですね、ホテルに行きたいと懇願してまして...。

それで...」


すると。


「突然押しかけて申し訳ありません。

私、アリツカゲラと申します」


「実は、このアリツカゲラさんがですね、

ホテルの支配人をしたいと...」


藪から棒に、話が急すぎる。


「そんな突然言われても...」


「無理も承知です...。実は事情があって...」


彼女から事情を聞いた。


「...なるほど。まあ、そういうことですか...」


「私とあなたで1日だけ入れ替わる...。どうでしょう」


「お互いに刺激になって貴重な経験が出来る。

良い提案だと私は思いますわ」


リョコウバトもそう推し進めた。






「という訳で...、よろしくお願いします」


ホテルの面子に挨拶をした。


「おう」


「よろしくお願いします」



『まあ、ホテルの仕事と言っても、

ブタもハブも自分で考えてやってくれるんで、

心配ないと思います』


と、オオミミは言っていた。


「掃除とかは私がやっておくんで!

何か困ったらハブに言ってください」


「ああ、俺は忙しいからコイツに言ってくれ」


「...いつも何してるんですか?

土産屋をやってる所一度も見てない気がするんですけど...」


「嘘つけ。俺はこう見えてもやることが沢山あんの」


2人の言い争いで顔を引きつらせる。


(ちゃんと仕事をしてくれる人がいるんですか...

オオミミさんは大丈夫でしょうか...)







「ぎゃあああああああっ!!」


オオミミギツネは驚き、尻餅をついた。


「フフッ、いい顔頂き」


「あなたヤギね!」


(何だこの人たちは!?た、確か、メンドクサイ客が居るとか言ってたけど...

まさか!?)





一方...。


(静かですね...。悲鳴が聞こえる事もないし...)


「アリツさん...?どうしました?」


通りかかったブタが声を掛けた。


「いえ、いや、何でもないです!」


平気を装ったものの。

やはり、顔に出やすい体質なのか、

彼女はカウンターに身を乗り出した。


「やっぱ寂しいんじゃないですか?」


「...」


「怖がらせて来るから、色々呆れて、少し息抜きがしたい...。

そう仰ってましたよね」


「こっちは静かすぎるだろ?ちょっと騒がしい方がアンタにはお似合いじゃねえか?」


気が付けばハブも後ろの方にいた。


ーーーーーーー

【作者より】

12話が終わった直後、ロッジの面子とホテルの面子入れ替えたら面白くね?と思いましたが、気力が持ちませんでした。ごめんねタイリクオオカミ。



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