しゅがーあいどる

のほほんとした陽気がパークを包み込む。

そんな昼下がりの図書館。突然駆け込んでくるフレンズがいた。




「ねえ、博士!助けてッ!!」


雷鳴の様な声、机をドラムの如く叩く。


「ウルサイです。図書館は静かにしてください」


嫌そうな顔を浮かべて博士が出て来る。

後ろ髪を掻きながら。


「ふぁー...。

おやあなたはジェンツー...、どうしました。そんな怖い顔をして」


呑気に欠伸をしながら、尋ねた。


「助けて...。変な子に襲われてるの...」


「はあ?」


今度は耳を穿りながら、返事をした。


「私のことずっと...、ストーカーしてる...。

今もいるかもしれない...。助けて...、お願いっ!!」


博士の肩を持って激しく揺さぶった。


「...落ち着くのです。

お前の言ってることが支離滅裂でわからないのです。

どこの誰に追いかけられてるんですか?」


「セルリアンの様にしぶとくて、私に恐怖を植え付ける。

私もう・・・」


両手で顔を覆う。その時だった。


「ああ、ジェーン・・・、こんなところにいたのね」


「全く・・・」


追いかけてきたのか、プリンセスとイワビーだった。


「一体どういうことなのです?」


「・・・・」


ジェーンは完全に黙り込み、イワビーに連れられ、外に出た。

プリンセスは博士に事情を話した。


「いつくらいかしら。ジェーンの様子が変になったのは...。

今日も、突然黒い影に襲われるとか言い始めて、ここまで逃げてきたの。

なんていうか・・・、その・・・」


「被害妄想的な思想を多くするようになった?」


軽く頷く。


「正直言って彼女、おかしいわよ...」


「助けてっ!!離してっ!!」


「ちょっ!暴れんなって!」


騒がしい声が聞こえた。

博士たちが様子を見に行くと、

イワビーがジェーンに馬乗りになり、力づくで押さえつけていた。

アイドルらしからぬ、見苦しい光景だ。


「やめてっ!!ストーカー!!」


「ちげーよボケ!」



「2人ともみっともないことはやめなさい!」


プリンセスが仲裁に入る。止む終えず、ジェーンの方を抑えた。

彼女は舌打ちをし、


「この...、このキチガイ...」


毒を吐き捨てるように言った。


「それはおめえだろうがクソ」


もはやイワビーにも、アイドルとしての威厳はない。

いや、元々威厳は無かったかもしれないが。


腕を組みその様子を見て博士は


「...これはひょっとすると、まずいかもしれませんね」




後日、博士はマーゲイの元を訪れた。

ジェーンの症状を伝える為だ。


腕を組み、単刀直入に病名を告げた。


「彼女は統合失調症かもしれません」


「な、なんですかそれ?」


彼女はわかりやすく困惑して見せた。


「簡単に言えば、心の病です。

アイドルという特異な事をやっている身、

少なからず、ストレスを溜め込んでいたのかもしれません」


「治るんですか?」


「それは人によって異なるでしょうね。

けど、この病には一時期症状が軽くなる時期があるのでそこで手を尽くそうかなと思います。その時までは辛抱強く、配慮が必要になります」


「じゃあ...、最悪治らないって事も?」


「本人と周りの環境次第ではないでしょうか。

ヒトとフレンズ、どう違うのかはわかりませんから」







その日、ジェーン以外のメンバーを集め話をした。


「はあー...、世の中には怖え病気もあるんだな」


「参ったな...」


コウテイは頭を抱えた。


「やっぱり、5人揃ってのPPPじゃないですか?私の意見としては足並み揃えて、ジェーンさんの回復を手助けしてあげた方が良いのではないかと...」


「ちょっと休息も必要よね。マーゲイに賛同するわ」


「えぇー...、アイツの看病すんのかよ」


「…ゴホン」


コウテイが業とらしく咳払いをし、冷たい視線を送る。アイコンタクトで受け取ったイワビーは俯き加減に少し頷いた。


「ところでフルルは?」


「...あっ」


マーゲイはハッとした表情を見せた。




「ジェーン...、一緒に食べようよ」


フルルが差し出したのは2つに分けたじゃぱりまん。その誘う声は、いつもより少し小さい声量だった。


「...はぁ?」


「...?」


「そうやって私を毒殺しようとする。セルリアンの仲間でしょ?」


「...」


「やめて。消え失せてよ、バカ」


「...」


返答せずその場を立ち去ってしまった。


ーーーーーー

【作者より】

平成31年8月17日、集団ストーカーによりアイデアを奪われました。取材の為にジェンツーペンギンを盗撮していたらジャパリパークを出禁になりました。毒入りじゃぱりまんをラッキービーストに食べさせられました。水は怖いので、ボトルの外側に付着した露を飲んでいます。

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