第46話 ロール・プレイング・ゲーム①
僕は弱者だった。
生まれながらに体が弱く、外出することは少なかった。
外に出ることといえば、学校へ行くときと、病院に行くときくらいなものだった。
いつも外で元気に走り回る、同じクラスの友達を眺めていると、とても羨ましい気持ちとともに嫌な感情が心に芽生えていた。
僕は子供ながらにそれは良くないことだと理解していたから、その感情は必死に押さえつけていた。
だけどまだ小学一年生だったころの僕がそれを我慢をするのは難しくて、いつもおばあちゃんに苛立ちをぶちまけていた。
両親は僕の医療費を稼ぐためか、夜遅くまで働き詰めで、会うことも少なくて寂しい思いをしていた。
だけど僕のそばにはいつもおばあちゃんがいてくれたから、まだ救われているほうだと思う。
おばあちゃんは僕が泣きながら怒りをぶつけても、いつも優しく頭をなでてくれていた。
悪いことをすれば、僕はおばあちゃんに叱られたりもした。
寂しさを発散するためだけに、窓を割ったこともある。
それでもおばあちゃんは僕のそばにいてくれた。
どんなにわがままなことを言っても、どんなにいたずらに物を壊したりなんかしても、決して見放すことはなかった。
僕にとっておばあちゃんは、大切な存在だった。
そんなおばあちゃんが、授業参観へとやってきた。
周りはお母さんやお父さんが来ている中、おばあちゃんが来たのは僕だけだった。
だけど僕はちっとも寂しくなんかなかった。
むしろちょっとだけ誇らしげでもあった。
僕のおばあちゃんを自慢したい、そんな気持ちだってあったからだ。
だから僕はあれが僕のおばあちゃんだと友達に教えたり、授業で積極的に手をあげて、いいところを見せたいと張り切ったりもした。
いくつか答えて、正解もしたから僕は嬉しかったし、おばあちゃんに後で褒めてもらえると思うと、気持ちが高揚した。
授業が終わって、帰り道。
しわしわの手を握っていた。それは僕の大好きな手だった。
「僕、正解したよ!」
我慢しきれなくて、自分からその話題を切り出したのを覚えている。
「すごかったねぇ。おばあちゃんも嬉しかったよ」
「えへへへ」
おばあちゃんは僕の髪の毛を梳くようになでてくれた。
それが嬉しくて、僕はもっと勉強をがんばろうと思った。
振替で休みとなった月曜日が過ぎ、火曜日がやってきた。
僕はいつにもましてやる気に満ちていた。
だけどーー。
「お前、かーちゃんいないの?」
友達から放たれた言葉によって、僕のやる気はしぼんでいった。
そしてそれだけではすまなかった。
「ママに見捨てられてるんじゃねー」
「あのババアがお母さんさんだったりして!」
クラス中に笑いが広がった。
そして僕の我慢は限界を超えた。
「僕のおばあちゃんを笑うな!」
僕は拳を握りしめ、振りかぶる。
「いってぇ! なにすんだ!」
僕は体が弱くて小さい。
そして僕が殴った相手は一回りも二回りも大きかった。
それでも僕は大きな子に立ち向かう恐怖よりも、怒りが勝ってしまったのだ。
体格の差があり、当然ながら僕はあっけなくやり返された。僕はそれでも必死に戦ったけど、一方的にボコボコにされた。
それは当然の結果だったけれど、たとえ同じような体格だったとしても、僕は勝てなかかっただろう。
だって、僕は弱いから。
先生がやってきて、喧嘩を止められ、やがては保護者に連絡がいった。
やってきたのはおばあちゃんだった。
先生から成り行きを聞いて、頭を下げているおばあちゃんを僕は見ていることしかできなかった。
おばあちゃんが何度も何度も頭を下げていたのをはっきりと覚えている。
家に着くと、おばあちゃんは僕の目をしっかりと見ながら、口を開いた。
「どうしてあんなことをしたんだい?」
「先生から聞いて知ってるでしょ」
僕はおばあちゃんから目を逸し、そっけなく言葉を返した。
そんな態度を取る僕に、おばあちゃんは優しく声をかけてくれた。
「ゆうくんの口からちゃんと聞きたいのさ」
「先生が言ってたのと同じだよ」
これは、僕がまだ、ロール・プレイング・ゲームという名になる前の、
超能力者たちは異世界でもチートだったので世界を征服することにした しろいろ @siroiro961
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。超能力者たちは異世界でもチートだったので世界を征服することにしたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます