第14話  一つ提案がある

 タルテが神妙は表情で口を開いた。


「皆さんがもうご存知の通り、この世界には魔法があります」


 そんな言葉から切り出された声は、非常に暗い音をしていた。

 こちらまで沈んだ気持ちにさせられる。


「そしてこの地域は魔法によって成り立っています。家の光も、服や食べ物も、全てが魔法ありきの生活なのです。光を点けるにも魔力が必要ですし、料理をするのにも魔力が必要です。そしてこの村は、魔力の少ない人たちで形成されています」


 なるほど、ここは生活弱者が集う村なのか。

 どうりで身なりもみすぼらしいわけだ。


「そしてこの村の人たちの仕事は、作物を育てること。このように」


 タルテはそう言いながら、先ほど修復した畑に一粒の種を植える。

 そして手を差し出す。

 魔方陣が出現し、光は放たれた。


 その光を受けた種は、すくすくと育ち、立派な草をへと成長した。


 その草に今度は別の魔法を放つと、土の中からもこっと何かが出てきた。

 ジャガイモのような芋がたくさん出来上がっている。


「このように魔法で育て、収穫し、それを売ることでお金を得ています。ですが、魔力が少ないので、生活する分までの魔力は残りません。なのでお金で魔力を買うことになります。そのため常にお金の少ない生活をしています」


 タルテは辛そうな表情で言葉を紡いでいく。


「そしてその原因として、ノルマが大きすぎるのが原因で、足りていないときも多々あり、減給は当たり前ですし、あまりにも守られていない場合、今日のような罰もあります。彼らがしっかりと作らないと、王国に住む人たちのご飯がありませんから……」


「弱者から搾取するのがこの王国のやり方ってわけか……」


 オレのそんなつぶやきに、


「はい……」


 とタルテは心苦しそうな声を出した。


「んで、てめぇはそれを見て見ぬふりしてたってわけだな?」


 そんなタルテに、非情にも追い打ちがかかった。

 タルテの青く染まった顔が、黒闇を捉える。


「んな顔して、こいつらを助けようともしなかったんだろ。そんで飯を平然と食ってんだ。てめぇも加害者だろうが。被害者面してんじゃねぇよ。むなくそわりぃ」


「わたしだって……わたしだって助けたいと思いましたよ! でも……わたしには何もできないんですよ……。そこら中に王国の息がかかってるんです! それに、悔しいですが、わたしには力はありません!」


「それでもよぉ。てめぇは思っただけだ。この村を本気で助けようとして、殺されてったやつだっていんだろ? でもてめぇは何もしてねぇ」


「……っ…………」


 タルテは悔しそうに唇を噛み締める。

 何も出来ない。

 それは弱いものの宿命であり、しょうがないことだ。


 しかし弱いなら弱いなりにやりようはある。

 失敗し、犠牲を出しながらも、王国に対立し、いつかは王国を打ち倒すことだって可能かもしれない。

 タルテのように感じている人間も、たくさんいるはずなのだから……。


 前に進む強さがなかった。

 これが弱者であり。弱者たるゆえんである。


 弱肉強食は自然の摂理。

 いつだって、どの世界であっても、それは真理だ。


 そしてそれを堂々と行っているのならば、王国側は文句は言えないはずだ。

 まぁ、実際は言ってくるだろうが、そんなものはどうでもいい。


「一つ提案がある」


 オレのその声に、視線が集まる。

 一人一人が、今何を感じて、何を想っているのかはわからない。



「この世界を……征服しよう」



 だがオレはこの時、本気でこうしたいと思ったのだ。






  ***********


 六軌の分析ノート


 №11  ロール・プレイング・ゲーム

 超能力 ゲーム


 攻撃力:A

 防御力:A

 機動力:B

 応用力:SS

 回復力:SS


 総合戦闘力:A

 レベルは300オーバーらしい。

 大半のことはそつなくこなす。

 物が大量に入るストレージやマッピング機能などなど、たくさんの機能が備わっている便利能力。

 スキルや魔法も多数所持していて、その詳細の全ては把握できていない。

 オートフェニックス(自動蘇生)など強力なスキルが大量にあると予測している。

 そして何よりも驚異的なのは、まだまだ成長の余地があることだ。

 彼の能力はどんどん強くなっていく。

 彼とは戦いたくはない。

 なぜなら勝てるビジョンが浮かばない。だからといって負けるビジョンも浮かばないが。

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