45話
エレーンは一人舞踏会場で悩んでいた。
ニコルを送って行った兄のギルバートを待っているにしても、あの様子では馬車の扉の前まで送り兼ねない。公爵子息で、尚且つ役を持つ上級騎士でもある兄に名乗られれば、ニコルの両親は恐縮しきりに相手をせざるを得ないだろう。ニコルに貴族の階級は何足るかを常々言われて、最近はエレーンも心得ているつもりだ。つもりだからこそ、無自覚だろう兄の素直な行動に……一抹の不安が過る。これは自分も共に行くべきだっただろうか?兄の事だ。何か大きな問題にならなければ良いのだが。迷った末に人混みを避け会場の端へと向かう。まだ、今から追いかければ間に合うかも知れない。ニコルに大量の文句を言われるだろう恐れがあるけれど。
「エレーン、久しぶりだね!一年振りかな?」
声を掛けられ振り向くと、従兄弟のベルンハルトがニコニコとエレーンの後ろに立っていた。母方の従兄弟、つまりノーマン家の嫡男であるベルンハルトは、兄のクロードよりも五つ年上で、落ち着いた雰囲気がある。体格はノーマン家特有の背の高いがっしりとした体躯で、ギルバート同様、舞踏会場では頭一つ分大きく目立っていた。金の髪を品良く整えて、緑色の瞳からは優しい雰囲気が滲む。
「お久しぶりです、ベルンハルト兄様!!」
「エレーンの成人の誕生会以来かな?すっかりと大人の女性になって!」
「そう見えますか?それなら嬉しいです。」
ノーマン領は国の最北地。マルシュベンは最も端の東南に位置する為に、ノーマン家の親戚に会うのは滅多に無く、またマルシュベンが社交会に一切顔を出さないものだから、自然とその回数は極端に減る。二人が顔を合わせるのも、エレーンの誕生会以来で、これでも一年とは言え比較的には日が浅い方だ。放っておけば、会わずに五年……など当たり前に過ぎてしまう。
「さっきギルバートには会ったんだけど、あいつも相変わらずだね。ますますうちの爺さんに似て来たけど、クロードは?娘が生まれたって?」
「クロード兄様も相変わらずですよ。そうです、クリシュナはとっても可愛いらしいんですよ!ベルンハルト兄様にも是非顔を見て頂きたいです。」
「そうなのか、是非見たいけど……家のオーディーの成人の誕生会に招待するよ。後三年かな?」
「もうそんな歳でした?滅多に会わないと、小さい頃の記憶が印象強くて……元気にしていますか?」
「元気過ぎるよ。何でこう、ノーマン家は武芸馬鹿と言うか何と言うか……」
「……まあ、家も人の事は言えませんから……」
「ギルバートは典型的だけど、クロードもね。勝手に他領の賊退治したって?」
「聞きました?」
「勿論!それに、何か面白い事やってるじゃないか、エレーン。」
煙草の調査だろうか?ノーマン家は北の王城、並びに国境の砦と隣接しているために、昔から王族との関係は深く、女王ベアトリクスも今は北の国ダルトリッドとの小競り合いに対応する為に、北の王城に隠りきりなのだ。そこから話しが通っている筈だ。
「ハウエル子息とやりあったって?もう、聞いた時は大笑いだよ。」
「何故それを?!」
まだギルバートにも話していないのだ。それが遠い地のノーマン家に伝わっていると言う事は……他の家にも伝わっているのだろうか??……淑女としてはあまり喜ばしい事では無い。いや、自分は騎士なのだから、そこまで気にする程でも無いのだろうけど。
「ノーマン家も王城騎士団に知り合いは沢山居るからね。最初は許嫁を本当に探すのかと思ってたけど、いや、マルシュベンらしくて良い。ハウエルだろうが、ノーマンの事は気にせず、存分にやると良いよ。」
お墨付きを貰ったところで、エレーンは内心複雑だ。出来れば、レイニードとはあまり関わりたくは無い。増して、自分の癇癪の様な行動だったのだ。あまり思い出したくないのが本音だ。
「はぁ……、ありがとう……ございます……あまり知られたくありませんでした……」
「こうやって、女性騎士は噂が飛び交い、家によっては申し込みが殺到したりで、逆に婚期が遅れる原因でもあるんだけどね。でも、エレーンの心配は要らない様だね?」
「そうですか?」
ベルンハルトはにっこりとした笑顔を更に表情深くした。少し屈んで、エレーンの耳に顔を近付ける。
「うん。で、どっちが本命なのかな?オレリアス殿下は飛びきり良い男だけど、意外に可愛らしいアレクシス殿下だったりして?」
「!!」
何故それを?!と口から出しかけて、エレーンは思わず口元に手を当てた。しかし、自分の行動がバレバレだと気付いて、さっと手を下ろす。けれど時既に遅し。ベルンハルトは満足そうに頷くと、エレーンの正面に向き合った。
「顔に出しては社交としては、まだまだだよ?エレーン。もっと、毅然としていないと、聞きたい話しも聞けないよ?マルシュベン家はこういう所は過保護なんだからなぁ。」
「……精進して参ります……。」
「その位で勘弁してやってくれ、ベルンハルト。」
ニコルを無事に(と、思いたい)送り届けたのか、ギルバートが側に来ていた。
「ギルバート、お前もだ。お前はもう少し……こう、淑女に対しての気遣いが足りない。」
「……こういった場にあまり顔を出す機会も無いしな。俺はこのままで良い。ベルンハルト、親父さんはどうした?」
「イザベラ叔母と陛下とその他で個室に移動したよ。我らは子供扱いって奴だ。全く、先代達が元気過ぎるといつまでも席が空かず困ったものだよ。」
ベルンハルトはそう言いながら、肩を竦めて見せた。その表情は、少しも気にした素振りは見えないが。
「まあ、もう少しご婦人方に話しを聞いたら、俺も引っ込むよ。その前に、エレーン、一曲踊ろうか?」
「わ、私ですか?……上手く無いですよ?」
「大丈夫大丈夫、殿下二人にあんなに堂々とお相手したんだ。足を踏んでも怒らないから。」
「そんなに下手でもありません!」
ベルンハルトは大きく笑い、そのままエレーンの手を取った。それを見届けると、ギルバートは遠くに知り合いの姿を見付けたのか、さっさとそっちへ行ってしまう。一応彼は今日のエスコート役なのだが、黙ってエレーンの帰りを待つ事は無いらしい。社交的なのかそうでいないのか……相変わらずのマイペースに呆れつつ、エレーンは会場の真ん中、次のダンスを待つ人垣へと手を引かれ足を進めた。その中で曲の切り替わるのを待ちつつも、今踊っている人々をぼんやりと眺める。なんとなく何処かで見た様な黒髪の男性に視線を追っているとー
バチッ
不意にアレクシスと視線が交わる。目で追っていたのはアレクシス本人だったのだ。本当に無意識だったので、自分はそこまで……と苦笑いを禁じ得ない。どうやら、彼は押しきられてどこぞのご令嬢と踊っているらしかった。……少々複雑だが、こんな時はどうすれば良いのか分からず、曖昧に笑顔を向ける。アレクシスはと言うと、驚いた表情で此方を見ていたが、相手に何か話しかけられ、何でもないように視線を外した。その様子に、胸がチクリと痛む。これは云わば仕事の一環であり、仕方の無い事とは思いつつ、それでも、と、エレーンは組んで無い手を胸にそっと当てた。エレーンは曲調が変わると同時にベルンハルトに手を引かれて更に真ん中へと足を踏み入れた。
ベルンハルトもアレクシスに気付いていたのか、はたまた二人のやり取りを見ていたのか、気遣わしげにエレーンを見詰めて踊っていたが、エレーンの方も気を使わせまいと必死に笑顔で踊って見せた。これで気持ちを落としている場合では無いし、せっかく久々に再会した従兄弟とのダンスに水を差せない。何より自分自身動揺して見せるなど騎士として心持ちが問われる気もする。しかし、アレクシスと気持ちは通じあった……ものの、その前の数ヶ月での出来事がことのほか堪えていたらしい。結局最後は、ベルンハルトに諭される始末になった。
「こういった場では仕方ない。分かるね?」
「……はい。」
もう自分の気持ちがベルンハルトにバレバレだったが、それよりも落ち込む自分自身に落胆してしまい、取り繕えない。いつから自分はこんなにも弱くなってしまったのだろうか?以前の自分はもう少し我慢強いものだと思っていたのに。アレクシスが令嬢達に囲まれていた時は、少し思う所はあったものの平気だったのに、ダンスしている姿を見かけただけでこんなに動揺するとは。
「もう曲調も変わって来た。舞踏会も残す時間は後僅かだね、今日はもう戻って休んだら?イザベラ叔母には俺が言っておくから、今ギルバートを呼んで来ようか?」
「いいえ、自分で小兄様を探します。まだ挨拶していない方もおりますし……」
まだニコルの挨拶をカレイラに伝えていないのだ。ついでに自分も挨拶をしておきたい。ここでベルンハルトの手を煩わせるのも気が引ける。彼とて、ノーマン家嫡男として調査意外にも社交で他家に顔を売りたい所だろう。
「……やっぱり、俺もエレーンがまだ小さい頃のイメージが残っている様だ。ほら、ギルバートの所へ行くよ?」
そう言うと、彼は腕を上げ、エレーンの前に肘を突き出した。
「……お時間大丈夫ですか?」
「大丈夫、可愛い従姉妹を一人置いて行く訳が無いだろう?さ、お手をどうぞお嬢さん?」
「……ありがとうございます。」
最初のお世辞は何処へやら。すっかり子供扱いされて、内心複雑なものの、差し出されたベルンハルトの腕に手を添え、二人は頭一つ飛び出しているだろうギルバートを探す為に歩き出す。こういった時は、兄の体格は便利である。勿論隣の従兄弟も。少し会場内をキョロキョロしたかと思えば、早速見つけたらしい。エレーンは人混みに埋もれてしまい、何処に兄がいるかも分からなかったが、どんどん進むベルンハルトの腕を必死に掴んで、付いていく。……程なくして、やけに賑やかな人の輪に辿り着いた。
「これは、随分賑やかだね。主役はギルバートかな?」
「え?」
輪の中に半ば強引に足を踏み入れれば……
「随分久しぶりだ、夏の試合以来か?砦の皆は変わらずか?」
「何時になったらこっちの騎士団に入るんだ?団長から話しが入ってるだろう?」
「西の国境はどうだ?最近何か動きは無いのか?」
「…………。」
ここは舞踏会の筈だが、話しだけ聞いていると、騎士団の控え室にいる様だ。ギルバートは話しを聞いているのか曖昧に首を振るだけである。無論、次々話しかけられ、対応も追い付かない上に、若干面倒そうでもある。
「……ギルバート?まだ残るのか?エレーンをお願いしたいんだけど。お前、一応今日のエスコート役だろう?」
ベルンハルトが声を掛けると、人垣が一気にエレーン達に向けて左右に避けた。直ぐに目の前には人に囲まれた一本の道が出来る。その流れはある種圧巻の一言に尽きた。
「…………!!」
あまりの動きに、エレーンは固まってしまう。一斉に此方を見てくるのだ。少し恐怖を感じても仕方ない。
「……すまん。今行く。」
「頼むよ。じゃあ、エレーン。会えて嬉しかったよ。次はオーディーの誕生会でね?そうじゃなくても、いつでも遊びに来ると良いよ、くれぐれも体に気をつけて。ギルバートも……お前は心配いらないか。」
ベルンハルトはエレーンの頭をぽんぽんと軽く叩くと、人垣をするりと通り抜け、すっかり姿が見えなくなった。……人垣を難なくすり抜ける技術が達者なのは、ノーマン家特有なのだろうか?そんな事を考えていると、ギルバートはエレーンの手を取り、ベルンハルトとは反対側に体を向けた。
「ギルバートどの、その、妹君を是非紹介……」
「私も是非ご挨拶を……」
ベルンハルトが去った後、人垣が堰を切ったようにギルバートに集まり始めたが、
「断る。」
あんなに面倒そうだったギルバートは一瞬にして、眼光鋭く周囲を見渡す。体が大きく、只でさえ威圧感があるので、その迫力は言わずもがな、満点だ。……背格好は違うのに、なんとなく父に近いものがある。
周囲が怯んだ隙に、ギルバートはどんどん歩を進める。流石に追いかけて来る者は居なかったが、二人の斜め後ろでくすくすと軽やかな笑い声が上がる。振り向くと、カレイラが二人を見ていた様で、此方に向かって来ていた。カレイラは目の覚める様な鮮やかな青の、膨らみを押さえたドレスを身に纏い、黒い髪は綺麗にまとめられて、いつもより更に増して艶やかな雰囲気を醸し出している。
「カレイラさん、ご機嫌よう。とても素敵です、そのドレス。」
「ご機嫌よう、エレーンどの。ふふ、どうもありがとう。エレーンどのも、そのドレス、色味が髪と良く合っていて素敵だぞ。ギルバートどのも、お久しぶり。」
「ああ、カレイラどの。久しぶり。」
「お知り合いでしたか?」
カレイラは頷くと、やっと二人に追い付き、向き合った。
「ああ、騎士団で度々交流戦を行うからな。西の砦はそう遠くも無いし、年に何度も行ってると、大抵顔見知りになるんだ。ギルバートどのとは、クロードどのに世話になっていたから、その縁で。」
「カレイラどのは良くも悪くも目立つからな。自然と顔も覚える。」
「小兄様!」
全く、綺麗だから目立つと言いたいのだろうか?それとも腕前で?何れにせよ、これではあまり良い意味で伝わらないだろう。
「エレーンどの、気にするな。もう慣れているから。ギルバートどのは相変わらずだな。いや、兄妹揃って皆にモテてているから、見ていて楽しかったぞ。」
「いえ、その様な事は……」
「……奴ら、エレーンを紹介しろだのふざけた事を言うからな。次の交流戦は全力を持って対処する。」
「ふふ、ギルバートどのに全力を注がれるなど、其奴らには御愁傷様としか言えないな。」
「…………。」
正直な所、ギルバートと手合わせは数えるくらいしかした事は無いが、恵まれた体躯から振るわれる大剣は一撃でも喰らってしまえば倒れるどころかエレーンの体は簡単に吹っ飛ばされて、下手をすれば立ち上がることも難しくなってしまう。その豪腕の割には動きが早いのもあって、攻守に固く、彼が西の砦最強と謳われるのも頷ける。
ーなどと考えていると、不意に視線を感じ、エレーンは視線の先へと顔を向けた。しかし、此方を見ている者は見当たらない。人が減り始めたとは言え、会場内はそれでも十分に人が溢れ、絶えず流れている。その中に、深紅のドレスを身に纏い、自身も真っ赤な髪を見事に結い上げた女性が、数人の男性に囲まれて談笑している姿が目に入った。
「……ああ、あれは赤珊瑚夫人だな。今日も目立っている様だ。」
エレーンの視線の先に気付いて、カレイラが説明してくれた。
「赤珊瑚夫人?」
「ああ、社交会では有名な方だ。赤い髪にいつも真っ赤なドレスを着ているから、『赤珊瑚夫人』と通称になっているみたいでね。……確か、グエル公爵の姪にあたる方じゃないか?私と年もそんなに変わらんだろう。今日は一応オレリアス殿下の妃選びの筈だが、……催し物が好きな方だ。病欠のグエル公爵に変わり名代として顔出しに来たのだろう。」
「……グエル公爵はそんなにお加減が?」
「どうだろう、今シーズンは何処にも顔を出して無いらしいが……。」
ここから見える赤珊瑚夫人は、さぞ社交慣れしているのだろう、常に数人に囲まれて、楽しげに話している。くるくると表情が変わる様は、大人の女性の中に少女らしさが垣間見れる様で、不思議な魅力に満ちていた。……自身も、彼女程とは言えなくとも、もう少し会話力が何とかならないのだろうか……と、エレーンは今度は別の意味で落ち込んだ。
「ここに居たか、カレイラ。」
カレイラの後ろから、立派な口髭を短く蓄えた男性が声を掛けて来た。歳はエレーンの父、サイラスと同じぐらいだろうか?なんとなく、面差しがカレイラに似ている。
「ああ、父上。もう帰りますか?」
「うむ。……あの小僧、逃げ足が早くて敵わん。全く、要領が良いと言うか、悪知恵が働くと言うか……」
「……まだ追っているのですか?我が父ながら諦めが悪いと言うか……。ああ、これは失礼した。父のフェルナンド・ル・アロイスだ。父上、此方マルシュベンのギルバートどのと、エレーンどのです。二人とも良く世話になっているので、お見知りおきを。」
「初めまして、ギルバートです。」
「初めまして、エレーンと申します。宜しくお願い致します。」
「ああ、宜しく。両殿下とのダンス、とても素敵だった。毎年逃げる口実に家のカレイラを使われて、正直そろそろ文句を言おうかと思っていた所だ。それが、今回貴女が現れてくれて肩の荷が下りた思いだ。いや、真にありがたい。」
「い、いえ、とんでもございません……」
「父上、エレーンどのが困っているだろう。お互いそれで助かる所もあったのだ。文句は言えないでしょう。」
カレイラは困った風に溜め息を吐き、父親の肩に手を寄せ、この場から追い出したいのか強く押して見せた。しかし、フェルナンドは慣れているのか動じない。
「いやいや、あのヘンベルクの小僧をいつまで経っても擁護しよって。一度ガツンと言ってやらんと気がすまん。そうだ、エレーン嬢、貴女からも一言言ってやってくれないか?いい加減、責任取ってカレイラをよ……」
「父上?それ以上口にしたら怒りますよ?」
「……いや、ほんの軽口だろう。カリカリしおって。」
「父上?」
「……分かった。この父を黙らせるとは生意気な娘よ。全く、誰に似たのやら……さて、これ以上怒らせない為にもそろそろ失礼しようか。彼方で挨拶をしたら出るから、カレイラもそのつもりで。」
「……はぁっ全く。分かりました。世間話も程々になさって下さいね。」
「それではお二方、またの機会に。」
そう言うと、フェルナンドは颯爽とこの場を後にする。カレイラはこめかみを抑え、首を小さく振る。これがこの親子のいつものやり取りなのは明らかだ。
「……父がすまない。今の会話は忘れてくれ。思い返すだけで頭の痛い……」
「はい……あの、ルーカスさんが何か……」
「……それも含めて忘れて欲しい。頼む。この数年の頭痛の種なのだ。」
「……差し出がましい事でした 。失礼しました。」
「……いや、此方こそ。さて、私はあの父を引っ張って帰らねば。ニコルは見なかったか?今日はこの人手だ、会えなくてな。」
それを聞いて、エレーンは思わず横のギルバートをちら見してしまった。ギルバートと言えば、背の高い特権だろうか、話しを聞いているのかいないのか、会場内を悠々と見渡している。……この兄に見送られ、ニコルは無事に帰れたのだろうか?
「……ニコルさんは先程帰られました。カレイラさんに挨拶をしたかった様ですが、私が変わりにと、受けていたんです。無事にお会い出来て良かったです。」
「そうか、ご両親は元気そうだったかな?いつもニコルのじゃじゃ馬っぷりを心配しているみたいでな、宜しくと頼まれておるのだ……」
「?、ああ、親御さんなら元気そうだった。何事も無く無事に帰って行ったぞ。」
カレイラは突然ギルバートから返事を貰って、ぴしりと表情が固まってしまった。どうやら、彼女もエレーン同様の懸念が浮上したらしい。
「……兄がニコルさんを送ってくれたんです。」
「ニコルを送って頂いたのか?ギルバートどのに?」
「……は、はい……」
「……そうか。なんとも無謀な……いや、何でも無い。では私は帰るとしよう。ギルバートどの、エレーンどの、ではまた。」
「ああ、次の交流戦楽しみにしていると団長に伝えて欲しい。」
「カレイラさん、ご機嫌よう。」
カレイラは頷くと、二人の元から去ってしまった。カレイラの父が追っているなんて、一体ルーカス・ヘンベルク子爵は何をやらかしたのだろう。そして数年の間、逃げ切っているのも同じ王城勤務でおかしな話しなのだが。そして、カレイラを固まらせる我が兄は……ニコルに失礼な事をしていないと良いのだけれど。
「小兄様、私達も帰りますか?母様を迎えに参りましょう。」
エレーンはギルバートを見上げるが、肝心の兄は顎に手を当て何やら思案している。
「……小兄様?」
「……思い出した、何処かで見た事あると思ったら、あの小さい娘、『騎馬隊の暴れ馬』か!カレイラどのを見て、何か違和感があると思ったら……!二人いつも一緒に居るから、それで……」
エレーンは思わず一人納得しているギルバートの脇を小突いた。
「小兄様?それ、絶対、絶対ニコルさんの前で言わないで下さいね?!失礼です!」
「分かっているよ。まあ、滅多に会うことも無いだろうし。」
「約束ですからね??」
兄が今ここでニコルの渾名を思い出してくれたのは不幸中の幸いか。はたまたこれ以上に失礼な言動をしていないだろうか……。エレーンは人知れず溜め息を吐くのだった。
「……そろそろ帰りたい。母上はまだ話しているのか?」
ダンスの時間も終盤に差し掛かり、誘って来る令嬢も帰り始めたのか何とか居なくなってくれて、アレクシスは会場の隅でルーカスに寄りかかりながら、ぶちぶちと文句を吐き出していた。そうでなくとも、エレーンに他の女性と踊っている所を見られて、気分は下降の一途を辿っている最中なのだ。お陰で愛想笑いも限界に近い。大体、始めから仕事だと割り切っていた筈が、ダンスを見られた事も、また、エレーンが他の誰かと踊るなどと思ってもいなかったので、それが覆された事実がずしりと心的ダメージをアレクシスに与えていた。……翌々思い出してみれば、エレーンの隣の男はノーマン家の嫡男であった為、親戚同士踊るのは当然なのだが。彼女の兄ギルバート以外とは今回絶対踊らないだろうと何処かで思っていたとは、自分の狭量さに乾いた笑いさえ出て来る始末だ。
「もうぼちぼちでしょ?もう少し頑張って下さいよ、子供じゃないんですから。……まあ、どう見ても子供だけど。」
アレクシスが令嬢と渋々踊っている間、他の令嬢達に囲まれて談笑していたルーカスは疲れた様子も無く、会場を見渡している。人が多い場では、チャラチャラしているクセに意外と気を抜かないのがこの男だ。先程は社交会名物と言える赤珊瑚夫人を見付けて、渋い顔をしていた。曰く『本能的に何故か受け付けない』そうで、公の場だろうが頑なに自分へと近付けさせないのだから、過保護と言うべきなのだろうか?普段の扱いは誰よりも雑そのものなのに。
「……何ですか?じっと見て。飲み物でも取って来ましょうか?……駄目だ、マルシュベンと違って置いておけないんだった。……面倒臭い。」
「おい、子供扱い止めろ。」
「ぶっぶー!犬扱いですー。」
「おい!もっと駄目だろーが!」
暇を持て余すと、録な事を言って来ないからこの男は厄介である。アレクシスは一度本気でアロイス伯にルーカスを売り渡したい気持ちになる。何故か、アロイス伯はルーカスに会うと嬉々として男としてだの、王城勤務の心得だの説教を始めるから、自分も面倒な事この上無いのだが。しかし、上手い具合に逃げ切っている所を見ると、アロイス伯に何らかの罪悪感でも持っているのでは無いのだろうかというのが、アレクシスの最近のルーカス推察結果である。でなければ、それは嬉しそうに熱い口論(と言うなの喧嘩)を展開する筈なのだ。
「ほら、待望の陛下が戻りましたよ?挨拶して帰りましょう。」
そうとは知らずに、この男は面倒臭気に壇上へ向かう様に促すと、まるでかしづく模範的な騎士の様に後ろを黙って付いて来る。こういう所が婦女子に人気なのだろうが、アレクシスにとっては納得の行かないところだ。ルーカスへの悪態を考えつつ、次々と割れる人垣を難なく進み、程なくして壇上の自分の席へと着席する。と、同時に、
「……なんだ、この場で母に紹介しないままでおくつもりか?早くあの令嬢を連れて来い。」
大人達だけでどうやら話し合いが一段落着いたのか、少し疲れた様子の母ベアトリクスは、それでもにやにやしているであろう口元を扇子で器用に隠し、アレクシスに顔を寄せて話しかける。無理に決まっている事を勧めて来るから、この母は扱いに困ったものだ。
「……とりあえず、私達は引っ込む挨拶をして帰りましょう。後は皆好きにするでしょうし、もう正直帰りたいです。」
「あーつまらん。もっとどぎまぎするなり、動揺したりしないのか。」
「人前でそうしない様に勉強させてるのは何処のどなたですか??」
全く、遊び心なのか試しているのか。母の期待に応えられる気がしないのは、自分が悪いのだろうか?
「……陛下?駄目ですよ、こんな所で。皆の目がありますから。」
珍しい。兄オレリアスが話しに乗るどころか、苦言を呈した。……何か狙っているとしか思えないのは、兄弟なのに悲しいところだが。
「さて、帰るのであれば締めのダンスはエレーン嬢に頼むとしようか。今呼んで貰いますね。」
「兄上?!止めて下さい!!」
思わず大きな声が出てしまい、アレクシスは慌てて口を閉じた。ダンスの締めに指名するなど、その者に決めたという事と同義だ。開始のダンスは許せても、それだけは絶対に許容できない。アレクシスの狼狽え振りに驚いたのか、ベアトリクスは扇子を口元に当てたまま、目を大きく見開いて凝視していたが、暫くすると息を殺しながら必死に笑いを堪え出した。
「……成る程、私はどうやらセンスが無いらしいな。オレリアス、上手いじゃないか。」
「北の城に隠ってばかりいるから鈍るんです。早くお戻り頂かねば。」
二人して自分を何だと思っているのか。アレクシスの思いと裏腹に、その言葉を聞いてベアトリクスは笑うのをやっと押し殺した。瞳は妙に厳しさを称えている。
「……いや、例え小競り合いが終わったとしても、私は居を此方に戻すつもりは無い。近々そう声明するつもりだ。……意味は分かるな?」
「………それは、」
「いや、ここを公の場にするつもりはまだ無い。オレリアス、覚悟だけはしておけ。返事は公式の場のみでよい。アレクシスも、良いな?」
「……畏まりました。陛下。」
「……陛下の見心のままに。」
「……だから、とっとと妃を娶って貰わねば困るんだが?いつまでごねるつもりだ、この仕事馬鹿は。自分を一体何歳だと思っている。」
「……それは、もう少し考えている事がありますので、声明もそれら結果を見てからにして頂いて宜しいですか?」
「……早めにな?それで構わん。」
「ありがとうございます。」
まさかこの大衆の面前で重大な密約が交わされたなどとこの場の誰が思うだろう。第一王子殿下の妃選びの舞踏会は、殿下が『誰も選ばず』に唐突に終わりを告げたのだった。結局、オレリアスはエレーンを呼ぶどころか、誰とも踊ることはしなかったのである。女王の懸念を鑑みれば、この場、もしくは近々決めておかなければならない話しなのだが。それを知らず、気合いを入れて馳せ参じた令嬢達は、また次こそ!と気持ち新たに会場を後にするのだった。
エレーンは帰ろうとした矢先に早めに締める女王の宣言に驚きつつ、人も疎らな会場をギルバートと共にイザベラを迎えに壇上の近くまで来ていた。後は残りたい者だけが残り、夜通し社交に花を咲かせるのだ。まあ、自分達は帰るつもり満々なのだが。そもそもが社交場慣れしていないマルシュベンの兄妹である。出来るものなら今にでも走って会場を後にしたいのだ。
「母様、部屋に帰りましょう。」
イザベラを見付け、声を掛ける。マルシュベン家は王都に町屋敷を所有していないが、公爵位な為以前クロードが宿泊した時同様王宮に部屋を用意されているのだ。イザベラとギルバートを部屋へと見送ったら、エレーンも自室へ帰るつもりでいる。
「私もう少し陛下とお話ししなくちゃいけないから貴女達は部屋に戻りなさい?明日また改めてお話ししましょう。」
そう言うと、イザベラはロバートとライルらと共に会場脇の通路へと消えて行った。
「……帰りましょうか、小兄様。」
また蚊帳の外にされた二人は、本来の出入口である通路から、用意されたギルバートの部屋へと向かった。部屋を用意されている者は少ないのか、はたまたまだ会場に残って宴の余韻に浸っているのか、辺りに人の気配が無い。
角を曲がると、ルーカスが二人に向かってちょいちょいと手招きしていた。
「お久しぶりです、ギルバートどの。ご健勝そうで何よりです。」
「ルーカスどの、暫くだな。貴殿も元気そうだ。どうだ?久しぶりに明日手合わせしないか?」
会って二の句にこれなのだから、兄は揺るぎが無い。
「勿論ご一緒します。で、ですね?少しの間妹君をお借りしたいのですが……宜しいですか?直ぐ済みますから。待っている間、俺と話しましょう。向こうの様子も聞きたいですし。」
ギルバートは訝しげにルーカスを見ていたが、腕を組むと、何か合点が行ったのか、静かに頷いた。
「……ほお、成る程。……ルーカスどの?いや、ルーカス。」
「はい。」
「今日は付き添いが俺で良かったな?」
「仰る通り。理解して頂いて有難いですね。」
「分かった。少しだけだぞ?信用しているからな?」
「勿論です。俺とギルバートどのの付き合いではないですか。」
何の事かさっぱりなエレーンは、二人のやり取りに付いて行けない。それより、この兄の察しの良さは何なのだろうか?少しはそれを女性との会話に生かせてくれれば、自分の心配が少し減るというのに。そう思っていると、ルーカスがくるりと反転し、此方を向く。
「じゃ、エレーンちゃん?ここに入ってくれる?暫くしたら呼ぶからね?」
「え!何ですか??あの、ちょっと」
ぐいぐいと肩を押されて部屋へ入らされる。中に入ると直ぐに扉は閉じられてしまった。薄暗い中、エレーンが恐る恐る様子を伺うと、
「エレーン?」
アレクシスがソファに座り、自分を手招きしていた。予想外の展開にドキリとしながらも、エレーンは静かにアレクシスの側へ近付いた。
「エレーン、座ってくれ。」
促されるままに隣へと座ると、手を取られ、二人向かい合う。会えて嬉しい筈が、恥ずかしくて目を合わせる事が出来ない。ギルバートはこの事を察していたと言うのだろうか?そうなると、母イザベラにも必然的にバレバレな訳で……何より、許可を出したということは、公認だと言ってる様なものではないだろうか?その認識が、更に恥ずかしさを増長させる。この部屋が薄暗くて良かった。また顔は真っ赤に色付いているに違いないのだから。
「……ごめん、いきなり。驚いた?」
「……はい、驚きました。今日は会えないだろうと思っていたので……」
「……敬語、取って?」
「……はい。」
アレクシスは困った様に笑うと、次に大きく深呼吸をした。
「……この前の今日で、返事を急かす様な真似はしたく無かったんだけど、どうしても俺が……無理なんだ。気持ちをエレーンに打ち明けたら収まると思っていたのに……どうすれば良いと思う?」
「どうすればって……」
『ずるい!』とっさの脳内の返事はそれだった。それを自分に問うとは、返事してくれと暗に言ってるものではないのか。今日だって、自分のモヤモヤに落ち込んだ所なのだ。それを上手く言葉にしろなんて、なんて難しいお願いをして来るのだろうか。話す言葉を選んだ……筈が、エレーンの口から出た言葉は、
「……ずるい。」
「……ずるい?」
その言葉に、アレクシスは訝しげに顔を覗き込んで来る。当然だろう。けれど、その表情だって最早『ずるい』以外の何者でも無い。
「……だって、私、この気持ちに気付いたのだって最近なのに、それが……両思いってだけで胸が一杯なのに。今日だって、……アレクシスが他の方と踊っていたのを見ただけで胸が苦しくて……っ。自分でも毅然としなくちゃって分かっているのに、もう一杯一杯で、それを上手く言葉にしろなんて、……ずるいです。」
「……!?」
アレクシスは片手を両目を覆うように顔に当てると、急に天を仰いだ。どうしたと言うのだろうか?エレーンは恐る恐るもう片方の手を引っ張る。
「……アレクシス?」
「……可愛い。」
「??!」
空耳だろうか?いや、……でも、まさか。その一言から、アレクシスはまだ天を仰いだままに、無言でいる。暫く次の言葉を待っているのに、反応が無い。
「……あの……?」
「あー……すまない。全部俺が悪い。兄上の事があって焦り過ぎた。その言葉だけで十分だ。うん。」
やっと向き直すと、アレクシスの顔には笑顔が浮かんでいた。
「……でも……。」
「……実を言うと、後半年ぐらいでバタバタするかも知れないんだ。……多分、兄上の誕生日ぐらいかな?それで、俺の……俺達の立場は今より大分変わると思う。……だから、エレーンの気持ちを聞きたかった。でも、今ので十分。後はエレーンのタイミングを待てると………思う。……多分。」
歯切れの悪さに、少し笑ってしまう。何とも、そんな所が彼らしく、また可愛らしく思ってしまうのだからどうしようも無い。
「……随分余裕なんだな?」
「っ!!そんな事は、」
慌てると、彼は悪戯っぽい笑みを浮かべる。どうやら、からかわれた様だ。……本当に、全てにおいて質の悪い。一人拗ねると、手を取られ、抱き寄せられる。泣いて放心していた前回と違って、直ぐに心臓が破裂しそうに脈を打つ。耳まで真っ赤なのは確定的だ。
「……俺だって、今日は妬いてばっかで大変だったんだ。エレーン、ちゃんと分かってる?」
そんな行動をした覚えが無いので、何の事なのかはさっぱり分からなかったが、そう言われるだけで、エレーンの胸の内は満たされる様な、けれど気恥ずかしい様な、不思議な満足感に溢れた。
「………さて。ギルバートどのが待っているし、また明日だな。エレーン。」
「……はい。」
体を離され、安堵したものの、寂しく思うのは何故なのだろう。エレーンは手の平で頬の熱を取ろうと、目を瞑り両手を当てた。それでも、赤みが収まる気配が無い。
「…………。」
そんな行動を見て、アレクシスはまた一人天を仰いでいたのだが、エレーンは目を瞑っていて気付かなかった。
……そんな事を繰り返していると、外からノックされて、エレーンは両手を頬に付けながら、退室したのだった。勿論、ギルバートとルーカスに生暖かな眼差しを向けられ、その上頭を撫でられ、尚且つ……
「いざと言うときは、俺を頼れ。大丈夫、親父と兄貴の説得には必ず参じるからな。任せろ。」
と、良い笑顔で言われたのだから、恥ずかしさを通り越して居たたまれない思いで一杯になるのだった。先刻は、挨拶したがる人達をバッサリ切っていたと言うのに、この落差は一体。兄妹では、何となくだが、ギルバートと姉のアリーシャが似ている様な気がするのは何故なのだろう。そう考えると、アリーシャに知れた時を考えて、エレーンは少し先の未来に恐怖した。根掘り葉掘り聞かれるに違いないのだから。
一人部屋に残ったアレクシスは、目頭を押さえた手の肘を膝に立てて俯いていた。エレーンの行動の破壊力足るや、アレクシスの胸を突き破って、最早片想いの頃より胸が痛い。胸が一杯で、その分痛いのだ。何とも不思議な現象もあるものだ。自分は良く自制したと思う。これを誰かに褒めて欲しいくらいだ。
……どうも、上手く兄に転がされている。
そもそも、兄がエレーンにちょっかいを出さなければ、自分はこの思いに気付きもしなかったし、ダンスに指名したりしなければ……今日の様な親族が居る前で呼び付けるなんて非常識な事、絶対しないのだ、ルーカスじゃあるまいし。ギルバートが変に思っていなければ良いが、いや、どう考えたって後の祭とはこの事だろう。……自分はもっとしっかりしなければならない。そうでなくとも、予想では後半年の内に自分も周りもガラリと変わる。その中で、エレーンの立場を崩さない力を付けなければならないのだ。……それには、自分かマルシュベンを狙っている者を捕らえなければ、安定はやって来ない。恋にうつつを抜かしている場合では無い……筈なのだ。けれど、
「……だって、あれ、可愛い過ぎだろう……。」
もう抑える力も残って無いのか、口から本音がポツリと出てしまう。恐らくは頬の赤みを取ろうと一生懸命だったのだろう。むにむにと自身の頬を抑えるエレーンの姿を思い出して、アレクシスはまた深い溜め息を吐いた。想いに気付いたら収まるどころか、膨らむものだとは思いだにしなかったのだ。また何食わぬ顔をして共に仕事をするなんてどんな拷問でも敵わない気がする。しかし、公然でイチャイチャしたいとは不思議と微塵も思わないので、解決が難しい。一体、世の中の男性はどうやってこの気持ちを押さえながら生きているのだろうか。
何だかんだ公私を分ける自覚が芽生えつつあっても、アレクシスは十四歳。恋に胸を踊らせる年なのである。歳を重ねれば落ち着くのだろうが、それを今の彼に求めるのは大変酷な話しで。
第一王子殿下の為の舞踏会が、まさか第二王子殿下の胸を焦がす結果となるとは、本人達は元より、恐らくオレリアス以外誰が予想しただろう。この結果を受けて、今密かにほくそ笑んでいるのかと思うと、アレクシスはまた少し、地味に兄に苛立つのだった。
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