レイヤー4 【5/7】
「で、でも室見さん」
納得いかなかった。こんな
「どんな状況だろうとベストを尽くす。それが私達技術屋の役割よ。クライアントがどんな人間でも扱うプロトコルやパケットは変わらない。いつもと同じことをするだけ」
息を
「
指示に従いクロスケーブルを取り上げる。PCとルータを直結、ルータのLEDが
室見の指が流れるようにキーボードを
室見は小さく息を吐き、小指で
「サブミットかけたわ。
速い。
工兵はぶるりと
パワーランプの点滅がおさまりインタフェースランプが点灯する。ケーブルの片端をルータに挿し室見を
「LED、安定しましたけど」
「こっちもプロンプト来た。いいわよ、本番系につないで」
ケーブルのもう一端を上下の機器に接続しろということだ。設定さえ間違っていなければ、これでデータが流れ出す。以前ラボルームで見せてもらった時と同じだ。pingを打ってパケットの行き来を確認できる。
ネットワーク図を確認しながらケーブルの
初めての……本番
ごくりと
「
「は、はい!」
──よし、正常。
「
答えを聞き終える間もなく室見がキーボードを
彼女はモニタに
「IKEよし、IPsecトンネルも──上がってる。グローバル
LAN側インタフェースをソースにして対向
だがそこまで作業を進めた時、不意に室見の顔が
「………」
もう一度、エンターキーを叩きping。時間をおいて再度コマンドを投入する。テンキーを押してエンター。CTRL+Cでブレイク、再実行。──
室見の表情は晴れない。彼女は顔を石のように
「ど、どうしたんですか、室見さん」
室見はゆっくりとかぶりを振った。
「……こない」
「……え?」
「pingのレスがない」
予想外の答えだった。室見は
「typo……? ……ううん、
つぶやきながらキーボードを叩く。機器の状態を再確認しているのか。だが
異常に気づいたのか、顧客担当者が歩み寄ってくる。
「……ちょっと、なんかあったの? 遅れるとか困りますよ、一時から処理が動くんですから」
「──
「確認中ってあなたね」
詰め寄ろうとする担当者を
「ちょ、ちょっと待ってください! 今試験中ですから、あとちょっとだけ時間をください。すぐ終わりますから」
「すぐ?」
「はい、……えーっと」
資料から作業スケジュールを取り出す。確認用に確保された時間は十二時二十分から四十分。現時刻は十二時半だからまだ余裕がある。
「ほら、今この作業ですから。大丈夫です、予定通りです」
資料を指し示す。
「……まぁいいですけど。頼みますよ、本当」
鼻を鳴らし
───。
「
息詰まるような
「ONU? なんですかそれ」
「
「ああ……はい、これですね」
「再起動しました」
「ありがと」
………。
沈黙、
「WAN側のケーブルを
「はい」
「……LAN側も」
「はい」
「ルータの電源オフオン」
「……落とします。──立ち上げました」
「なんで……?」
「ちょっと! ちょっとどうなってるんですか、一体。まだ
「状況は? 状況はどうなってるの」
室見は
「
「はぁ? なんですかそれ、拠点の通信が受けられなかったら何の意味もないでしょ。設定はちゃんと
「……アドレスは何度も確認しています。
室見は下唇を
「え? 何それ。それでどうするんですか、じゃあ」
「──切り戻しましょう。さっきの機器、持ってきてください」
「いや、……いや、それは無理。無理ですよ」
顧客の顔からさっと血の気が引いた。
「もう一つの現場も古い機器は送り返しちゃっていて、新しい機器が届かないと午後の業務に支障を
「な……」
工兵は
「と、とにかくなんとかしてください。
顧客は泡を食った
なんなんだ……あの人。
「……コンフィグをもう一度入れ直して、
室見がかすれた声でつぶやく。
だが今の自分にできるアドバイスはない。
……あれ?
何かが引っかかる。
胸の奥になんとも言えない違和感があった。室見の教えてくれた仕事のやり方と今の状況。そのわずかな差異。
───。
考え込んだ
そうだ、……ひょっとして。
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