レイヤー3 【1/5】
一回、二回、三回。硬質なシグナルが脳内に
仕方なく
「──はい、もしもし」
眠たげな声で答える。
『あ、
低い張りのある声が耳元で
工兵は
「はい、そうですけど。……どちら様ですか」
『なんだよ、まだ寝惚けてるのか。
「……オレオレ……
『そうそう、あなたのお
ああ……。ようやく
『ったく、
「メール……?」
そう言えば入社以来
「……ごめん、ちょっと
『何かって、今晩のことに決まってるだろ。出席でいいんだよな? 例の飲み会』
「例の飲み会?」
『ゼミの連中で飲もうって話してただろう? 卒業後、初飲み』
ああ。
そう言えばそんな話もあったっけ。卒業後最初の休日に大学時代の友人で集まり
──今日、今日の夜か。
………。
「ごめん。ちょっと無理そう。みんなによろしく言っといて。──おやすみ」
『あ、桜坂。おい、待て。待てったら』
通話を打ち切りベッドの下に携帯を置く。
トゥルルルルル。
一体どこの
──くそっ……。
二十回目の呼び出し音で工兵は飛び起きた。布団を
「はい、
『あ、お
実家からだった。
今年で中三になる妹は
『もう、全然連絡つかないんだから。お
ああと
「仕事忙しかったからしょうがないだろ。今も寝てたところなんだから、またあとで電話するよ」
『だめ! お兄ちゃんから連絡ないとお母さん、ずっと私に電話かけろって言ってくるんだから。ちょっと待ってて。……お母さん、お兄ちゃん起きた!』
止める間もなかった。受話器の向こうからパタパタと足音が近づいてくる。ややあって電話向こうの相手が替わった。
『工兵?』
母の声だった。工兵は
「うん。……ごめん、ちょっと電話できなくて」
『元気でやってるの? 会社はどう?』
思わず
実はひどい会社に入ってしまったんだ。就活サイトは
なんてことを告げれば、母親は間違いなく「帰ってこい」と言うだろう。ほら、やっぱり聞いたことのない会社なんて
………。
だから
「うん、まぁぼちぼちやってるよ。大変だけど大丈夫」
母親は疑わしそうだった。だが特に問い詰めてくることもなく、話題は工兵の食生活に切り替わった。ちゃんと三食食べてる? 外食ばかりしていないでしょうね。肉だけじゃなく魚も食べるのよ。
上京以来何度も
「ねぇ、働くって大変だね」
気づけばぽつりと
『あたりまえじゃない、何言ってるの。みんなその大変なことをやって暮らしてるのよ』
すっかり目が覚めてしまった。
脱ぎ散らかした服を片づけ
さて、どうしようかな。
本当は昼過ぎまで寝ている予定だったから、微妙に時間が
人と会う元気はない。かといって家に居続けても気が
──飯でも食いに行くか。
考えた末、
外食してゲーセンでも行って、漫画を買って
あーあ……。
盛大な
やっぱり、無理だ。
絶望的な気分で独りごちる。
──とにかく二週間、……あと二週間だけ
重い足取りで
どこに行こうか。
ただ──
神保町と
(かといって、電車を乗り継いで
何と言っても神保町なら地下鉄で一本、十分もたたずたどりつけるのだ。わざわざ遠出して疲れに行くのも
……よし。
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