第74話 残念美少女、遠足に行く16 

 軽い食事をとった後、仮眠を取っていると、メタリに揺りおこされた。


「レイチェルさん、起きて!」


「う~ん、あと少しだけ」


 私はミーちゃんを抱きしめ、身体を丸めた。


「大変よ!」


 悲鳴のようなメタリの声で、やっと目が覚める。


「あれ? ここは?」


「何言ってるの! 宿泊所のロッジに決まってるじゃない!」


「そ、そうだったわね」


「なにのんびりしてるの! ハイエク先輩が、すぐ来てくれだって」


 私は寝ぼけまなこを擦りながら、ベッドから降りる。

 ミーちゃんが飛びついてきたので、胸に抱いて部屋を出た。

 ハイエク先輩が大部屋の長椅子に座っていた。ラサナが彼にぴたりとくっついている。暑苦しいわね、全く。

 先輩は暗い顔をしていた。  


「先輩、ここ、女子専用のロッジですよ」


「緊急時だ。それにもう、そんなことを気にする者はいない」


「どういうことです?」


「レイチェルさん、落ちついて聞いて」


 ラサナが先輩から離れ、こちらを向いて座りなおす。

 なにをかしこまっているの、このは?


「ワイバーンが目撃されたの」


「ふーん、ワイバーンってなに?」


「あなた、ホントに知らないの?」


 ラサナが呆れたような顔をする。


「もったいぶらないで、早く教えなさいよ」


「亜竜とも言われる魔獣よ。空を飛ぶの」


「ふーん、それで?」


「あなた、バカなの? 空を飛ぶ魔獣と、どうやって戦うのよ!」


「……」


「もう、お終い。先生方も、みんなの好きにしなさいって」


 そう言うと、ラサナは再びハイエク先輩にしなだれかかった。

 だから、暑苦しいっちゅーの!


 ◇


 結局、トゥルースさんに言われていた通り、私とハイエク先輩だけが壁の外に出ることになった。

 宿泊地南側の壁を背に、魔獣が現われるのを待つ。地面にはオーガとの戦闘でできた窪みがあちこちに残っていた。


「レイチェル、本当に一人で大丈夫か?」


 先輩は、不安と心配が入りまじった表情をしている。


「うーん、どうでしょう。まだ空飛ぶ魔獣とは戦ったことがないから、どうなるか分かりません」


「師匠は厳しいが、こんな無茶を言う人ではなかったはずなんだが……」


「あの人、ほんと無茶苦茶なこと言いますよね」 


 私がそう言った時、先輩が震える手で空を指した。


「来たぞ! ワイバーンだ!」


 森の上を鳥のようなものの群れが舞っている。

 その群れは次第にこちらに近づいてきた。


「で、でかっ!」


 近づいてきて分かったが、ワイバーンは凄く大きかった。

 空を飛んでいるから正確なサイズは分かりにくいが、頭から尻尾まで少なくとも五メートルぐらいはありそうだ。

 灰色がかった大きな翼をゆっくり動かしている。

 巨大な魔獣は十匹ほどいた。 


 ドン


 後ろでそんな音がしたので振りむくと、さっきまで横に立っていたハイエク先輩が、まっ青な顔で壁に背中を着けていた。それも壁ドンって言うのかね。

 やれやれ、これは本当に一人だけで戦うことになりそうね。

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