第18話 残念〇少女、レベルアップする

 殺意をみなぎらせた巨大ゴリラに狙われ絶体絶命の私。

 その私は、さっき何かを「ぴきっ」と踏んだ時から、身体に変化が起きていた。

 青い光が強くなっているのだ。それは次第に強くなり、近づいてくる巨大ゴリラが、腕でその目を隠すほどになった。


 骨折していた右肩の痛みが、すうっと引いていく。

 右手を握っても、肩に痛みが走らない。

 なにより全身に力がみなぎっており、さっきまでの倦怠感が嘘のようだ。

 強い光が落ちついた時、私は燃えあがる闘志で巨大ゴリラと向かいあった。


「来いや、ゴリラ!」


 その言葉にゴリラがすぐさま反応する。

 こちらに殴りかかってきたその動きをかわすと、ヤツの目の前で両手を強く打ちつける。いわゆる猫ダマシだ。

 目を閉じたヤツの股下を潜りぬけ、背後に回る。

 ポーチからブラを引っぱりだすと、それを巨大ゴリラの頭にかける。


 ブラは、ちょうどカップの所がゴリラの目を隠している。

 目が見えなくなり、とまどったヤツは、棒立ちになっている。

 部屋の一番奥まで走り、壁を蹴って反動をつけ、全速力で巨大ゴリラに突進する。

 身体強化のせいか、思わぬスピードが出た。

 三メートルほど手前でジャンプ。

 そして、巨大ゴリラの顔面に頭突き!


 ゴーンンッ

 

 ブラに目を覆われたまま、巨大ゴリラが後ろへ吹っとんだ。


 ドン

 ゴロゴロゴロ


 床を転がった巨大ゴリラは、上向きに倒れたまま起きあがってこない。

 近づいて大きな鼻に手を近づけると息がある。

 ブラを回収すると、ポチ(カニ)をポーチから出した。

 巨大ゴリラのへその辺りに彼を降ろす。


「出力極小」


 ビリッ


「ウウウウ」


 電撃でゴリラが目を覚ます。


「あなた、恋人をあんなことで捨てちゃダメでしょ! 彼はまだ、タマタ〇が片方付いてるのよ。役立たずじゃないの! それなのに、どうしてあっさり捨てちゃうかなー」


 いつの間にか、巨大ゴリラは私の前で正座している。

 こちらの言葉が分かっているようだ。


「いい? すぐに優しくしてあげなさい」


 巨大ゴリラは土下座するように頭を下げると、倒れている小猿の方へ近づいていった。

 優しく猿を抱きおこしている。

 意識を取もどした猿が、ゴリラと目を合わせる。

 二人の唇が近づいて……。

 あー、またそれ。やってらんないわ。


 ゴリラ充、ぜろ!

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