第24話 続続、男同士の話
「私の後任を君が務めてほしい。是非に」
「こっ…、後任ですか?」
「はい、あなたがよければ、サクラと上役さんにもお話しするつもりです。後は、あなた次第です」
「いやいやいやいや、俺にそんな務まりませんよ。まだこの村に来て日も浅いし…」
「もちろん無理にとは言いません。ですが、お願いだけはさせてください。私もそろそろ、妻の元に行きたいのです」
「…⁈奥さんは、先に霊界に行かれたんですか…?」
「いえ、他の場所でで今サクラがやっている仕事をしています。上役さんの他の方々と」
「あっ、そうなんですね。って、他にもあるんですか?この村みたいな場所が」
「えぇ、この国にはこうした村がいくつもあるそうです。特に、霊界に通じやすい場所、というものがありまして、そうした場所に存在しているそうです。ずっと妻の手伝いをしたいと思っていましたが、何分、サクラは若くして亡くなり、まだまだ何かと心配で他所へ行く妻の代わりに面倒を見ていました。ですが、こうしてあなたがやってきてくれたのも、何かの縁だと思います。それに、2人はお似合いだと思いますよ。この村をまとめていけると思います」
2人はお似合いです。この言葉に、俺はなんとも都合の良い妄想を頭の中に描きだしていた。サクラと一緒に、この日常が続いていく。それはとても、魅力的だ。魅力的だが、何かが頭の中で引っかかる。
ネコさんにどう返事をしたらいいか答えを考えている間に、ネコさんは、見回り終了です、お疲れ様でした。と、徐々に高度を下げていく。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。あの、さっきの返事なんですが…」
「…はい。もちろん、すぐに答えなくて大丈夫です。全てはあなたの自由意志によらなければならない。そもそも、あなたはまだ生き返る可能性もあるお人だ」
「あっ、そういえば」
そうだ、その通り。俺はまだ生き返る可能性があった。異例の事態で、生き返れるはずが生き返れていない状態であったはずだ。自分のことなのに、サクラとの日々の生活を満喫してすっかり忘れていた。
「……本来であれば、あなたの状態が確定してからするべき話だった。申し訳ありません、私の願いばかり優先して、あなたをこの世界に繋ぎ止めようとしてしまいました」
ネコさんが見せる苦々しい表情を、初めて目にした。ネコさんも、色々思い悩んでいたことが、嫌というほどわかる。
「ネコさん。俺はむしろ俺のことをそこまで買ってくれてることに感謝です。ただ、そうですね…。せめて、自分の生死がはっきりしてから、お答えしてもいいですか」
「はい、もちろん…」
ネコさんは深々と頭を垂れ、丁寧に謝罪をしてくれた。俺は慌てて、頭を上げるようお願いしたが、太陽に照らされ反射するネコさんの後頭部ばかりが目に映るばかりだった。
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