第14話 みそなわす理由
「実は、世界は粒々の塊でできているのです!」
サクラさんは得意げに世界の真理を語り始めた。
「科学的に言うと、原子とか素粒子とかって物になるんですけど、要は世界を形作る粒々は普段波の状態で、形を持たない存在なんです。ところが私たちのように魂を持った存在が見る事で、初めて波から物質へと変化し、形を得るわけです」
「ほぅ・・・」
「この間の世界でも、霊界でも基本的にこの構造は変わりません。現世の場合は、神様達が24時間休むことなく世をあまねくみそなわしてくださっているので、問題ありませんがですので、誰かが世界をみそなわし、世界を形あるものとして見続けなければならないんです。でも、この村のように小規模な世界は、そのお役目を言いつけた人間に任しているんですよ。いずれ霊界に帰り、本来の自分に戻った時のために」
「色々と衝撃の事実が連発してますけど、ひとまず納得しておきます。神様もいれば、見てないと世界が形作れないということも」
「いきなりこんなこと言われてもびっくりですよねー。でも、大丈夫ですよ。この村にいると、色々と思い出してくることもあると思います。私たち人間がどこから来て、どこへ行くのか。元々、私たちは魂が本体で、霊界こそが本来の居場所ですから。とはいえ、あなたはおそらく早めに生き返ると思うので、この辺りの話は頭の片隅に置いておくぐらいで大丈夫ですよ」
「はぁ・・・。じゃあ、頭の片隅に置いておきますね」
唐突な世界観の説明に、こちらも驚きと衝撃が隠せない。死後の世界というだけでも、まだ信じきれてない自分もどこかにいるというのに。
その後も、村を見渡すだけではなく、新しく来た村人の案内だったり、村での困りごとの対応などをしていることを説明された。
便利なことに、上役さんから渡された仕事道具に、スマートフォンを渡された。なんでも、本来霊的な存在に戻った魂にはわざわざ機械を使わなくても、テレパシーのようなもので意思疎通も可能らしいが、死後間もない魂には、まだそうした能力がすぐには戻らず、また、混乱しないようにできるだけ現世に近い生活様式で過ごせるように日用品にも配慮してるらしい。
早速操作してみるが、機能としては通話とチャット、メールができる程度のスペックらしく、ネットに繋ぐことはやはり出来なかった。これはこれで、心にぐさっとくるものがある。些細な事だが、現世と隔絶されていることを嫌でも感じざるを得ない。
ここで、またふと自問する。
俺は本当に生き帰りたくないのかどうか。
この事を考えると、また胸の奥が締め付けられたかのような痛みを感じる。肉体のない存在であるはずなのに。
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