第12話 死して始まる社会人生活
「えー、それでは説明いたします」
サクラさんは軽く咳払いをし、これから俺がつくことになる仕事について説明を始めた。
「昨日も簡単にお伝えしましたが、この村は死んだ方々が安心して霊界へと向かうために、支度を整える場所です。強い未練があったりすると霊界に行けませんので、この村で未練を解消してもらわなければなりません」
「なるほど、ということは、未練の解消の手助けが仕事ということですか?」
「未練の解消については、上役さんのように、霊界から専門の方が担当してくださいますので、私たちはノータッチです。というか、そんな責任重大な仕事はどれも霊界の方々の範疇ですので、我々の仕事はこの村の維持が主な仕事になります」
「村の維持、ですか」
随分と現実的かつ堅実な仕事内容だ。
「この村は、現世と霊界の狭間の世界ですが、霊界寄りの世界になります。なので、想
えば叶う、物質ではなく精神的な世界になります」
「昨日も教えてもらいました。要は夢幻の世界だと」
「そうです。そんな世界ですが、一つ難点がありまして、この村を霊界と現世の狭間に存在し続けるには、誰かがこの村を見ていなければならないのです」
「見るって、村の様子をってことですか?」
「いえ、言葉通りです」
「というと・・・どういうことなんでしょうか?」
正直、意味がわからない。村を見る。文字通りに受け取ると、村の様子でも眺めていればいいのだろうか?頭の中でぼんやりと思い浮かんだ答えを見透かしたかのように、上役さんは、正解です!っと、シャッキリと声を上げた。
「まずは実際どんな感じかお手本をお見せしましょう。それではサクラさんネコさん、行きますよ!」
ハイと気前よく返事した2人は、むくむくと宙に浮き上がり、ネコさんにはママチャリが。サクラさんには小舟が足元へ現れ、それぞれ乗っている。
「・・・えっと、俺はどうしたらいいですか?」
「サクラさんの小舟なら2人乗れますので、こちらはどうぞ」
上役さんに言われるがまま、サクラさんの小舟に同乗させてもらう。サクラさんもニコニコと手招きしてくれるので、なんだか気恥ずかしい。
「さて、それでは行きますか」
ネコさんの掛け声で、自転車と小舟は宙にふわっと浮き上がり、どんどん高く飛んでいく。あっという間に、村を見渡せるほどの高さにまで上がり、驚き固まっている俺をサクラさんはクスクスと笑っている。
「それでは、お勤めを始めます!ネコさん、いつも通りお願いしますね!」
「はい、かしこまりました」
ネコさんは自転車を漕ぎ始める。宙に浮いている自転車は、前へと進み、村の上空を飛んでいく。続いて、サクラさんの小舟も、静かに浮き上がり、静かに空を飛んで行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます