第10話 新生活
コン、コン、と玄関をノックする音でハッと目が覚める。
「おはようございます。ネコです。朝からすいません」
時間は何時だろうか。明るさ具合から早朝ではないのは分かるが、ともかく、俺は今行きますと答えつつ、ベッドから起き上がり、玄関へと向かう。目覚めたばかりだというのに、頭はスッキリし気分も晴れやかだ。
「いやー、すいませんね朝から。でも、よく寝れたみたいですね。顔がだいぶ明るく見えます」
「おはようございます。やっぱり元気に見えます?なんだかとても調子が良くて」
「肉体から解放されると、みなさんはじめは驚かれますよ。こんなにも体が軽くなるなんて、ってね」
「そうですね。こんなに体が軽く感じたことは、今までないくらいです」
ネコさんは相槌と共に頷きながら、いかに今朝の俺の調子が良いか耳を傾けてくれている。そう、ただ、体が軽いだけじゃない。本当に爽快だった。それは体だけでもなく、心もだった。つまり、生きていた時はただでさえ調子が悪かったとも言えるが、今はそのことは脇に置いておこうと思う。
「そういえば、昨日上役さんがあの後来ましたよ今の俺の状況を説明してくれました」
「はい、こちらでも聞きましたよ。上役さんから、手助けしてあげて欲しいと頼まれましてね」
「手助け、ですか」
どうやら、上役さんが色々と動いているらしいが、果たして、手助けとはなんだろうか。生き返りのことかな?ともかく、断る理由も無いし、正直理想の家を手に入れたものの、何をして過ごせばいいのかわからないので、お言葉に甘えネコさんについていく。
サクラさんの家が見えてくると、どうやらすでに上役さんとサクラさんが出迎えてくれている姿が見えた。2人して手を振ってくれているので、こちらも手を振りかえす。
「おはようございます、朝からお呼びだてしてすいません。実は、サクラさんとネコさんとも相談したんですが、あなたの処遇が決まりました!」
上役さんは、随分とあっけらかんに言う。サクラさんは、いいお話ですよと言わんばかりのニコニコ顔だ。そう悪い話でもないのか。
「通常であれば、あなたはこの村の来訪者なので、霊界に上がるために諸々整えてもらうべく過ごしてもらうのが本来のあり方ですが、現状生き返る可能性が高いあなたには行き帰りに向けて、いわばリハビリをしていただこうと考えました」
「生き返るためのリハビリ、ですか。それはどんな内容でしょうか?」
「それは、この村の運営のお手伝いです!」
高らかに告げる上役さんの光が心なしかさらに明るくなった気がする。その傍にはサクラさんとネコさんが微笑みをたたえ、ささやかに拍手をしている。まさかのあの世で、仕事が決まるとは・・・。生きてた時は、就職に随分悩んでいたのに。
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