第6話 魂ノ尾
「結論から言いますと、銀色の紐は肉体と魂を繋ぐ〝魂の尾〟ということでした。」
タマシイのオ、ってことは、尻尾が生えてるのか、魂に。
「生きてる時はしっかりと肉体と魂は繋がっていますが、死ぬと魂と肉体から抜け、魂の尾も切れるはずなんですが、稀に瀕死状態の人はこうして魂の尾が繋がったままあの世に来てしまうことがあるそうです」
あー、なるほど。つまり、俺は臨死体験を今まさにしてるってことなのか?もしそうなら、まだ生き返る可能性も、あるのか?胸が温かくなるが、どこかざわつく心地もする。
「ところがですね、いわゆる臨死体験のような場合、一時的に魂が肉体から抜けちゃってるだけなので、魂の尾は肉体と魂とをしっかりと繋げているそうなんですが、あなたの場合は、どうもそれとも違うらしくて・・・」
喜びも束の間、また話が不穏になりそうな気配が。
「ネコさん、この方の魂の尾って、短くて繋がってないですよね?」
「えぇ、短いですね。それに、よく見ると、何かを指し示すような、引っ張られているような気もしますね」
「おそらくこれは一度完全に死んだものの、肉体が蘇生しつつあるという事を表していると思われます。実際、この村には臨死体験の人は一度も来たことがありませんし、本来入らないはずなんです。ここは死者の世界なので。なんというか、死んで魂が死者の世界にたどり着いてしまった後に、肉体が蘇生した為に、いわば魂が死者の世界に囚われ、こんな事態になっているのだろうと、上役さんの見立てはこんな感じでした」
異例の事態というのは、分かったが、なんだか、生き返るにしても望み薄の話のようだが・・・なんだろう。生き死にという重大な話なのに、現実感が全くない。まっ、こんなわけのわからない状況で頭が追いついていないだけかもしれないが。
「状況は、なんとなく分かりました。けど、俺はどうしたらいいですか?なんだかとても中途半端な感じですけど・・・」
完全に死んではいない。けれど、生き返る可能性もなんだか低そうなこの状況で、俺は死人として振る舞っていいものか、悩んでしまう。
サクラさんとネコさんは2人して腕を組んで唸りながら考え込んでいる。よっぽど異例の事態なんだろう。
「・・・ひとまず、この村でゆっくり過ごしてください。今後のことは上役さんとも相談しながら、決めていきましょう」
サクラさんの提案は実に当たり障りないものだが、実際、こうするほかないだろう。
「あまり、希望的観測の話をするものではありませんが、あなたが現世に帰れる事を祈っています」
サクラさんの優しい言葉に礼を言いつつ、サクラの家を後にする。
ネコさんに再び死者の村、姫神村を連れられていく。風は暖かく、優しく頬を撫でていく。
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