第14話14 女の子って その2
生理ネタありますご注意を。
「 頭痛い。お腹も痛いのに、熱は無し。でも体はダルい」
広島から戻って数日。今日から八月だ。
まだまだ夏休みだし、編入試験済んだし、遊ぼうかなって思ってたのに、とある事情で、ダルいんだよー。何かしようにも、イライラするしね。
なので、ブルーのTシャツに黒いスウェットの短パン姿で、部屋でゴロゴロしてます。
「 夕陽、おる?」
俺のスペースに、入って来たのは、俺の義理のお姉さんで、仁の双子の妹 雫ちゃんだ。余談だけど、俺は、晶と同じ部屋なんだ。十二畳程の部屋の真ん中を本棚で仕切ってあるんだ。
雫ちゃん手にはドラッグストアの袋。何買ってきてくれたんだろ?
「 何? 雫ちゃん」
「 ナプキン買ってきたよ、ストック切れとったけぇ、はいこれ夕陽の分ね」
「 あっありがとう」
雫ちゃんから袋を受け取り、その中身に、ちょっとげんなりする。
ナプキン。正確には、生理用ナプキンだ。
あーあ、知識としては生理について、わかってたつもりだけど、実際になってみると、こんなにしんどくて、面倒なものだとは思わなかったな。
と俺は、今朝の惨状を振り返る。
朝六時。耳元で、ピピピとやかましく鳴る携帯のアラームで、目が覚めた。
いつもなら、アラームが鳴るより前に、目が覚めるのにおかしい。まぁいいか。
枕元の黒いガラケーを取ると、アラームを止めた。
寝ぼけた頭で、トイレに行こうと、起き上がると、股のあたりから、ぬるりともドロリともつかぬ嫌な感触。
――なんだろう?
ダッシュでトイレへ駆け込み、数秒後
「 ひょええ、なんじゃこりゃあ」
血!血が出てるよー。おろしたパンツが、血で染まってますよ。
うわーん。俺、変な病気になったよー。
「夕陽、どしたん? 」
こんこんとノック音と一緒に、雫ちゃんが呼ぶ声。俺の叫び声を聞き付けたのかな。
「雫ちゃん。血出とるよー」
「 血?ああ」
ごめん入るよと、トイレに入ってきた。
便座に座った俺の困った顔と、パンツを一瞥して、やっぱりね。と言って、優しく話しかけてくれた。
「 生理になったんじゃね。いきなり、血出とるけぇ、びっくりしたよね」
「 うん 」
「 とりあえず、汚れたパンツ変えんと。
ナプキンと新しいパンツ持ってきてあげる」
「 うん、ありがとう」
その後、雫ちゃんに教わった通り、処理をして、恥ずかしながらも、母さんに報告した。
そして今に至る。
「 あっそうそう。これもあげる。学校に行く時、ナプキン入れときんさい。出来たら、いつも入れとった方がええよ」
と、可愛いポーチだ。学校に行く時は、これにナプキンを入れとくみたい。
母さんや先日ひなちゃんから、聞かされた話だと、休憩時間ごとにチェックした方が無難だと言われたっけな。
はああ、本当に憂鬱だなー。これから、毎月なんだよー。面倒くさい。男の子に戻りたい。
ため息つきつつ、ナプキンやポーチをしまってたら、雫ちゃんが爆弾投下してくれた。
「 夕陽、今男の子に戻りたい。とか思わんかった?」
「はう?!」
なんでわかるのさー。勘よすぎだよ。
恐る恐る雫ちゃんに告白しましたよ。
「 思いましたよ。こんなに女の子が面倒なら、男の子に戻りたいです」
雫ちゃんは、思いを吐き出した俺を冷えた目で見てる。こういう時の雫ちゃんは、相手が大人だろうと子供だろうと、容赦なく理路整然とズバズバと言いたい事を言ってくるんだ。
「 夕陽、あんた馬鹿?」
「 馬鹿じゃないし」
「 いや馬鹿じゃし、ええ?(いい?)
必死に十三年近くも、あんたに秘密を隠して通して、女の子に戻してくれた朝陽兄さんやあんたの病気の事を調べるのに、協力してくれたひなや拓人の気持ちをあんたの今の『男の子に戻りたい』の一言で、踏みにじった事になるんよ。それを馬鹿じゃなくて、他に何て言うんね?」
「 ……ほうじゃね」
雫ちゃんの言った事は正論だ。目先の事に捕らわれて、『男の子に戻りたい』なんて、自分勝手過ぎる。
雫ちゃんの言う通り、兄貴や拓人さん、ひなちゃんの気持ちを踏みにじる事になるんだ。
「 夕陽の気持ちも分からん事もないけどね。生理が面倒なと感じるんは、私も一緒じゃし。じゃけどね、さっきの一言は、夕陽。あんた自身を否定しとる事なるって、私は思うんよね」
「 そうじゃね」
「 まあ、あんまし、難し考えさんな。今日は、しんどいんなら、ゆっくりしんさいね」
「 うん」
雫ちゃんが、出ていったあと、俺は、一人で、この体に起きた変化について考えてみた。
この前唐突に死にかけたのは、、第二次性徴期による体の変化に伴うものであるって、あの手記には、書いてあった。
あの時は、何の事かさっぱり分からんかったけど、今は理解出来る。
今日初潮を迎えた事で、俺の体は、大人の女性へとまた一歩近づいた訳だ。
「 気持ちは、まだまだ子供なのね」
子供から大人になるのって、色々な経験積み重ねって事なんだろうね。よくわからないけど。
俺は、そう結論付けたのだった。
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