侵略☆宇宙人!!

こざくら研究会

侵略☆宇宙人!!

 そいつはトマホークのように空から突っ込んで来た。轟音の後、一つの大きなクレーターが出来、その中心にそいつは埋まってたんだ。


 そいつをたまたま、ベルヘンタイン将軍と、愛人のイザベラ(81)が、戦場で見付けたのさ。

 ベルヘンタイン将軍は妻の顔は見たくないと、参謀本部に頼み込み、不倫相手と共にこの戦場に逃げて来た。何時だって一番恐ろしいのは、家庭と言う狂気の戦場だ。そこにくらべりゃ、ここは天国だったという訳さ。

 何で戦場に愛人を連れて来たのかって? イザベラは何時も言っていた。戦場の轟音の中では一際、燃えるのよおぉぉ!! と。焼夷弾にでも焼かれるのか? まあ、だから、将軍とイザベラは、逢瀬の場所として、戦場で移動中の装甲車を使っていた。同乗している兵士には同情するぜ。

 ちなみに、骨と皮みたいな姿のイザベラは、死体の山に紛れて横たわると、それと完全に同化する。まさに墓場のゾンビそのものさ! ジョージ・ロメロもビックリだ! そんな風貌のお陰で何度も戦場を、死体のふりして生き延びたと言ってやがった。ヤツを仕留めたくば、死体撃ちを積極的に行う事だ。

 で、将軍は逢瀬中、紙袋を頭から被ってる。イザベラ(81)の顔を見ずに8歳のミランダ(実在しない)を空想するためだ。

 そうしていると、どんな女と会っていようとも、どうでもよくなるんだそうな。なかなかハイレベルな男で、そうなってからはどんな女ともベッドイン出来るようになったそうだ。

 それ、なんで妻に試さなかったの?

 その日も、

「お兄ちゃんもう我慢できないよ!!」

そう言って将軍がイザベラ(81)にのしかかろうとしていた時、派手にすっ転んだ、装甲車ごと。

 ひっくり返った装甲車の搭乗員で、生き残ったのは将軍とイザベラ(81)だけだった。

 将軍がイザベラ(81)の手を振り払いながらひっくり返った装甲車から抜け出すと、そこはミサイルででも出来たようなクレーターだった。そしてその中央で、埋まっているそいつを見つけたんだ。何を見付けたかって? それはもう、ベコベコにへこんだ金属バットだった。べこべこさ!


 それを手にした時から、将軍はおかしくなった。おっと、間違えては困る。元々おかしかったがその比じゃない。元がクレイジーだとしたら、金属バットを手にした将軍は、宇宙勇者並だ!! フラッシュゴードンも顔負けさ! 毎日司令部でそのバットを持ってフルスイングを始めたんだ。

「乾坤一擲、乾坤一擲、蒼天已死、黃天當立、乾坤一擲、歲在甲子、天下大吉」

とか訳のわからない事まで言いやがる。危ないったらありゃしねぇぜ。色んな意味で。

 そんな時に敵国との講和が持ち上がった。将軍の元に、外交官が交渉方針の相談にやって来たんだ。

 司令部に来た外交官は慌てたね。なんせ将軍の頭があじゃぱーで、司令部は機能してなかったんだから。

 外交官は言った。

「シュールストレミング」

そう念仏のように唱える外交官に、将軍はつかつかと近寄ると、フルスイング!! 外交官の頭をホームラン! その頭は360度、ぐるんと回ってこう言った。

「ただいま」

えらく渋い声に、周りの将兵達も慄然としながら声を揃えて言ったんだ。

「おかへり」

と……。

 一方将軍は、スカッとしたのか、へらへら笑いながら、失禁して、よだれを垂らして、床に座り込んだ。まるで急に魂でも抜けたみたいに。だが元々人望のない将軍の事等、誰も気にはしなかった。

 外交官は、将軍の手から、そっとバットを引き抜くと、

「世の光速物体は神からの啓示」

と訳のわからない事をブツブツ言いながら将兵に襲いかかった。数時間後、司令部にいた人間はすべて……。

 おっと、俺は怖くてその時の状況は語れねぇな。

 だが一つ言えるのは、その金属バットで叩かれたヤツはみんなおかしくなっちまうって事だ。そしてその殴られたヤツの中から選ばれたヤツが、そのバットの次の持ち主になるんだ。そいつを手にしたヤツは、また他のヤツを殴りに行くって訳さ。

 語っちまってるじゃねえか。


 で、それからだ、世界がおかしくなったのは。まず敵国が腑抜けになった。ついでに他のなんかそこらへんの国もだ。なんか、そこら辺。特にシーランド公国辺り。どこの国も切手と称号を売り始める始末。

 まあ、そんな事はどうでもいい。そしてそんな風になった場所には必ずあるんだよ、あの、べこべこ金属バットがな。ホープダイヤモンドか? ヒトラーのワルサーPPKか? ムラマサか?

 ある日、俺らの国の大統領が演説してたんだ。

「俺様はカエサルに学んだ!! クルデリタス、クルデリタス! 俺様はキングだ! 銃を讃えよ!! 自衛せよ!! クルデリタス、クルデリタス! エベール万歳!! 黄色いサルと、くろんぼはガス室に投げ込め!! 移民に人権はない! 俺達がナンバーワンだ!!」

何時もの合言葉をバカの一つ覚えのように喚き散らす、我らがアータマイ・カレ・テルール大統領の登場だ。

 その後ろに一人の男が歩いて来た。手にはあの金属バット。もちろんシークレットサービス の奴らは誰も止めやしない。だって、大統領は早く暗殺されねぇかなって思ってたんだから。

 そいつはおもむろにそいつを振りかぶり、大統領の頭への強打!! うっほ~と、それを見ていたヤツ全員が声を上げたね。だってみんなそれをやりたかったんだもん! 大統領の頭を殴ったヤツは一気に英雄になった。お前がナンバーワンだ!! 次の大統領だってね。

 で、そいつはマイクに向かってこう言ったんだ。いや、そいつじゃない。そいつの持っていた、べこべこの金属バットが話し始めたんだ!! 俺達はシンプソンズの登場人物のように、平然と受け止めたね!

「ばーっとばっとばっとばっと。俺様は七つの銀河を股にかける、バット星人、宇宙海賊Kinzoku the BAD!! 貴様ら人間共は、バットを遊具だと思っていやがるが、お前たちこそ、俺達バットの遊具だったんだよ!!」

 それを聞いていた人間たちは思った。

「確かに!!」

そうさ、考えてみれば、バットを持ったヤツはみんなスイングをし始めるじゃねぇか。誰に言われるでもなく、まるで体を操られたように!!

 宇宙海賊Kinzoku the BADは言った。

「今日から俺は大統領だ!! お前たちは今日からバットにひれ伏して暮らすんだよ!! ばーと、ばっとばっとばっと!!」


 そうして俺達は、新たな大統領を迎える事になった。新たな大統領の名前はジョン。アータマイ・カレ・テルール大統領の飼い犬で、chyuitterに写真が載るなり大人気だったんだ。そのかわいらしい仕草に、俺もつい……、イグッ!! 他の大統領候補もその人気には勝てなかったって訳さ。

 宇宙海賊Kinzoku the BADはどうしたかって? 国境沿いにある、隣国の塩湖に棄てられたさ。だってこの国は移民お断りだからさ。

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