第4話 お勉強の妖精さん

 私は現在、某難関国立大学に通っています。

 頭良いねって? いや~照れるなぁ~!


 私は、塾に通った事が有りません。

 勿論、人間の家庭教師を雇った事は有りません。

 そして、大学は一発合格しました。


 まぁここまで言えば、お分りですよね。

 妖精さんに答えを教えて貰った?

 まさか! それではカンニングじゃ無いですか! そんな事を私はしません。


 そもそも、妖精さんがカンニングに興味を示しません。

 って事は、カンニングしようとした事有るだろって。

 まぁ子供の頃に、ちょろっとお願いだけした事有りますよ。

 でも、そんなお願いを聞いてくれる妖精さんは、居ませんでした。


 答えは、お勉強の妖精さんに、勉強を教えて貰ったです。


 お勉強の妖精さんとの出会いは、小学校の頃です。

 算数の宿題で頭を悩ませていた私の所に、ポンと現れたのがお勉強の妖精さん。


 その時お勉強の妖精さんは、私に問題の答えでは無く、解き方を教えてくれました。

 それ以来、試験の度に現れては、私に勉強を教えて帰って行きます。


 お勉強の妖精さんの教え方は、しっかりとポイントを突いて教えてくれるので、とても解り易いです。

 おかげで私は、成績は小中高と常に成績は上位でした。


 学生の私にとって、恐らく一番役に立つ妖精さんが、お勉強の妖精さんだと思います。


 すごいですよ。

 勉強以外の事でも、知りたい事を尋ねたら、何でも教えてくれます。

 検索サイトも真っ青ですね。

 でも興味の無い事や専門的な事を、お勉強の妖精さんに尋ねてはいけませんよ。


 わかりませんか?

 例えばリンゴについて教えてと、お勉強の妖精さん尋ねたとしましょう。

 そうすると、リンゴの種類から育て方、果実に含まれる成分、料理方法等、事細かに教えて来ます。

 そこまで聞いてないしって、適当に聞いた振りをすると、大泣きして訴えて来ます。

 尋ねなきゃ良かったってなりますよ。


 大抵の妖精さんは、妥協する事を嫌がります。

 お勉強の妖精さんも同じです。

 私が理解するまで、お勉強の妖精さんは授業を止めません。

 どれだけ眠かろうと、瞼をこじ開けられます。痛さで目が覚めます。

 覚えの悪い私が、大学受験でどれだけ頑張ったか・・・


 一度お勉強の妖精さんが、授業中に現れて私の肩に乗り、教師の説明を耳元で補足する事が有りました。

 流石に私は、お勉強の妖精さんに土下座をして止めてもらいました。

 だってそんな副音声要りませんよ、教師の説明が頭に入って来ないし。

 家に帰って理解出来なかった所を、お勉強の妖精さんに聞けば良いんです。


 私の成績は結果だけみれば、順調に見えるでしょうが、影では努力をして来たんです。

 そんな私は昨年調子に乗り、三つの国家資格に挑戦しました。

 お勉強の妖精さんによるスパルタ授業のおかげで、全て合格しました。

 他の妖精さん達の万全サポート付きです。


 正直大学の授業と三つの国家資格を、同時に進行するのは無理が有りました。

 大学の友人達からは、隈女クマオンナと呼ばれました。酷くないですか?


 でも、人間やれば出来るって事ですね。

 お勉強の妖精さんが幾ら私に教え込んでも、試験を受けるのは私ですからね。

 睡眠時間を削りひたすら勉強をし、何故そんなにストイックって自分ながらに思いましたよ。


「まぁそんなこんなを乗り越えて、今の私が有るのだよ!」


 友人に語って聞かせましたが、当然理解はされませんでしたがね。

 頭が良いくせに残念な子と言う扱いは、大学生になっても変わらない様です。

 でも裕子ちゃんだけは、お料理の妖精さん達の件以降、理解をしてくれる様になりました。


「あんたって、何時もやたらと必死だよね」


 ひたすら単位を取りまくり、おまけに国家試験を受けまくる私を、呆れた口調の裕子ちゃんが言った事が有ります。

 私はもっとのんびりとした、大学生活を期待していたんですが、何故こうなった。


「あんたは、何を目指してるの?」


 裕子ちゃん、私も知らないよ。何と無くノリでやって今に至る訳で。

 それに一度始めた事を投げ出そうとしても、お勉強の妖精さんは涙ながらに訴えて来んだよ。

 お勉強の妖精さんを宥めるには、勉強するしか無いのだよ。


「だからさ、あんたは謎の料理店を開いて、大儲けすれば良いんだよ」

「嫌だよ、そんなの。裕子ちゃん、私の夢はお嫁さんだよ」

「だったら、合コンに顔出したら。あんた割とガチな美形だから、イケルとおもうよ」

「フフフフ、言ったね裕子ちゃん。そして私をアホな子扱いする気ね」

「あんたは黙って笑ってりゃ良いのよ」


 結局合コンには行きませんでした。


 良いんですよ、フン! 

 学生の本分は勉強なんですから。

 今の内に頑張るのです。


 夢は大きく! 目指せ出来る女! そして幸せな結婚!


 そして私は、今日もお勉強の妖精さんから、スパルタ授業を受けます。冬休みにもかかわらず。

 この子達に教わってれば、大学は必要ないんじゃ・・・

 それは、考えてはいけない事なのです。

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