第2話Regrets - 未練
2
"知らなかった夫の顔2"
「はいはい、分かったよ。それで? 妻は女子社員たちに何て言った?」
俺の質問を待ちかねたように関根の目がメラキラッと光った。
「ほらっ、今年入社したばかりの田中さん、彼女ったら奥さんが目の前に
いるっていうのに、あなたが自分の憧れでどれほど素敵かっていうことを
熱弁して奥さんに向かって羨ましいって言ったのよ」
「あんな素敵な
羨ましいですぅ。いいなぁ、羨ましい……」
「あげるわよ。
夫を堕とせたら夫をあなたにあげる。
私がいいと言ってる今なら不倫しても慰謝料も取らずにほいほいっ
あげてしまうわよ?
我こそはと思ってる人は、さぁ……どうぞ~」
樋口眞奈の申し出に、その場で話を聞いていた若い女子社員たちは
色目気だった。
そんな中、ただひとりお局の関根槇子だけが眉を顰めていたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
俺は当時の女子社員と妻の会話を聞かされ、愕然とした。
当然のように俺を捨てようとするかのようなその妻の言動に。
あれから妻との生活の中では、そんなことがあったなんて感じさせる
ような素振りが微塵もないから、よけいに狐につままれたような
気持ちになる。
俺はいくら考えても心あたりがなく、きっと妻は妬ましく取れる
ような新人女子社員の言葉が疎ましくなって、挑発したのだろうという
結論に達した。
そして、日々の暮らしの中で、関根から聞いたこの時の話も
俺は徐々に忘れ去ろうとしていた。
◇ ◇ ◇ ◇
私たちは互いに年収の高い夫婦でおしどり夫婦として
12年間の結婚生活を過ごしてきた。
妻の家族にも気配りしてくれるやさしい夫、尊敬していた夫、
ストイックでアダルトビデオなんて見たことがないという夫。
そんな彼のことを信じもし、とても愛していた……のに。
今まで夫のスマホなど見たことがなかった。
たまたま夫が家にスマホを忘れて行った日、私は自身遅出だったことから
好奇心で彼のスマホの中を見てしまい、自分の知らない夫の外向けの姿を
知ることになってしまった。
LINEなどで夫が言葉遊びしている相手は2~3人いるようだった。
下品な話題でモリモリ盛り上がっていて、すごく楽し気な様子が
分かるものだった。
私は軽くめまいを覚えた。
もう読むのを……自分の知らなかった夫の姿を知るのを……やめなきゃ
って思うのに、私はやめることができなかった。
その日、職場に病欠の届を出し、私は続きを
読み耽った。
-
夫は全く削除というものをしてなくて、面白いほど外面の彼の姿を
その小さな機器スマートホンから伺い知ることができた。
実際にデートなどしている
年齢は皆私たち夫婦よりかなり若かった。
世間では、男性というものは女は若ければ若いほどいいと聞いてはいたが
我が夫だけは違うと私は思い続けていたのだ。
笑えるぅ~何の、どんな根拠があって私はそんな世迷いごとを信じて
これたのか、本当におめでた過ぎる。なんなの、まったく。
頭はかなり混乱していて、とても動揺失くして続きは読めなかった。
めまいのあと、動機までしてきて手の震えが半端なかった。
どういうわけか、読めばよむほど途中で忘れたスマホを夫が取りに
帰ってきそうな気がして、焦りながら各々とのやり取りを読み進めた。
あぁ~とうとう、こんなものまで。OH MY GOD!
神様嘘だと言って……ウソだと。
女から下半身の裸体画像が送られてきていて、その返しだろうか
夫は自分のナニがもっこりと分かるボクサーパンツ姿のはっきりと
映った画像を相手の女に送信していたのだ。
私の怒りはMAXを迎えた。
もしも目の前に夫本人がいたなら、私は泣き叫び、どういうことだと……
私を騙してこんなことしてと……問い詰め暴れていたかもしれない。
それほど目の前の現実は、私を発狂させるのに充分だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます