lesson.6 大きな目標を掲げよう


「体力、付いてきたな。いいことだ。延命にも繋がるからな」

 お墨付きもらった。やったね。体力面に関しては、少なくともアイドルをやるだけは付いてきたみたい。歌唱とダンスを同時にこなせそうなのは有難い

「進捗どう?」

「ダンスをマスターしたところです。歌いながら踊れるかはまだ分からないですけど」

「ふむ、今の体力を鑑みると余裕だと思うぞ。自信を持ちなさい」

「はい。シズネ先生ありがとうございます」

 自信を持つっていうの、私の課題だね。病気のことでつい引っ込み思案になりがちだもん

「失礼します。玲奈はいますか?」

「ああ川崎。ちょうど診察が終わったところだよ。そうだな、『異常はないが、異常なほどにスタミナの最大値が増えている』といったところかな」

「あはは、そりゃよかった。玲奈お借りしても?」

「ああ、寧ろアタシが借りてたからね。行っといで」



「皆もう着替え始めてるかな」

「着替え?」

 ダンスレッスンの途中で呼び出された私としては何が何だか。セイラはそんな私を見てニコニコしてるだけだし

「ああそうだ、屋上に戻る前に部室に寄るよ」

「え?」

 部室では確かに着替えが始まっていた。しっかり汗ふきしてる子もいるし、髪型を整えてる子もいる

「あ、玲奈先輩!待ってたっスよ」

「今日はもう終わりなの?」

「どうかしらね。ほら、玲奈のぶん」

「これって…まさか……!!」

 水色と白のタータンチェックにオレンジの矢印模様のワンピース。背中にはロゼットがついてる。お揃いのブーティやヘアアクセも可愛い

「名付けて『アクアマリン・アローコーデ』 玲奈の為の衣装だよ……おまたせ」

 着てみるとサイズがぴったりでまたびっくり。スリーサイズとか測ってないのにね。まぁ何百人のアイドルを写真に収めてきたセイラなら見ただけで分かるのかな。というかそれ以外考えられない

 せっかくだからメンバー全員のカラー紹介!

私が水色、セイラは白、沙織先輩が緑で涙先輩が紫美玖ちゃんは黄色、なほちゃんがピンクだ!

 今回の衣装もそれに準拠しているね

 色の名前はさっきの紹介順にアクアマリン、ピアノブライト、シークレットリーフ、ミステリーポイズン、シャイニースター、バタフライブルーミングで押し通すってことになっているらしい

「早速だけど、ミュージックビデオの撮影をするよ。屋上に再集合だ」

 そうして撮影されたミュージックビデオ、再生回数が生徒の数のおよそ百倍になるのだけれど、それはまた別の話


「さて、本格的にアイドルとして活動を始めた訳だが、ゴールを決めてみようじゃないか」

「ゴール、ですか」

 そうは言っても、というような空気が流れる。アイドルを始めたきっかけ自体、アニメによくある廃校の危機から救い出すとかではなく、私が死ぬまでの思い出作りとかの内輪のノリだし、仮に動画投稿サイトでミリオン再生回数突破を!ってのもあまり燃えないし


「……アイドルキングダム」


 涙先輩が呟いたその一言に凍りつく。アイドルキングダムというのはいわゆる人気番付のようなものだ

「る、涙?アレはプロのアイドルだけのモノだよ。ボクらが参加できるものじゃない」

「沙織、知らなかった?最近プロアマ問わずってことになってるのよ」

 週に八回は確認してたけど、参加資格までは見てなかったなあ。え?ってことは

「私達6ix waterも参加できるってことですか!?」

「ええ。あ、因みにこの間のミュージックビデオ、アイキンのMV部門に投稿しておいたわ」

『えええええええ!?』

 アイドルキングダムには二つの部門がある。プロフ部門とMV部門。MV部門の注目度はドルオタ間では低いけれど、音楽性などを軽く品定めをする程度はできるから、アイドルにとっては重要だから、ちゃんとアイデア満載で予算を組ん で撮影したものをアップロードする。そんな所に屋上で、しかも定点カメラで撮影しただけのものを載せるなんて考えられない。やるなら色々編集したほうが絶対いいのに

「無策に投稿した訳じゃないわよ。引き目の定点だから、イベンターはステージのどこからどこまで動かれるかをシミュレーションしやすいし、視聴者には全員の動きの特徴が分かりやすいので似た衣装を着た時に遠くからでも推しメンをみつけやすい」

 勿論、相手がいることが前提だけどねと付け足す涙先輩。そりゃまぁそうなんだけど、定点のメリットを陳述しただけにも見える

 ただ、もう投稿済みってなると目標は決めやすい

「両部門で一番になる。それはさすがに難しいけど、スタブルに勝つ、というのはどうかな?」

 STAR☆BLUEに勝つ。それは沙織先輩の夢でもある

「ふむ、ボクは玲奈の意見に賛成だが反対の人はいるかい?」

「反対なんてある訳ないス。ウチらは玲奈先輩の英断は全員で支持するんスから」 

「くく、そうだったね。では改めて。ボクらドル研、6ix waterの最終目標は、アイドルキングダムにおいて各部門で順位を問わずSTAR☆BLUEの上に立つことだ。相当高い壁だけど、力を合わせ全力で臨もう」

『おー!』


 ……二曲目、書かないとね

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