可愛がりたい
むらた
第1話
ソファに倒れこんだ友達の手から赤ん坊が滑り落ちた。私が見ているから寝てていいよ。友達はぐっすり寝ている。私の手の中で赤ん坊は寝ている。目をつぶっている様は蛙のようだ。よちよち歩く頃になると可愛くなるのかな。今はまだ人外だ。むずがるところを私は可愛いと思えないだろう。とても静かに赤ん坊は寝ている。手の中からいつのまにか滑り落ちたのかソファの上にいる。あわてて抱き直すがソファの上にいつの間にかいる。このままではソファのすき間に入って潰れてしまう。赤ん坊はとても柔いのだ。私は赤ん坊が動かないようソファと赤ん坊の間に手を差し入れる。くるまっていた布が少しずれて赤ん坊の足の方が見えてしまう。直そうと布を掴むと小さな顔が見えた。赤ん坊だ。赤ん坊は2人いたのか。布のさらに下のラップにくるまっている。口のあたりが丸く空いていて、そこから息をしている。布をどかすと、ぷはっと音が聞こえた。息がしやすそうだ。ラップはこのままでいいのだろうか。友達は深く寝入っている。反対側の赤ん坊に目をうつすと布がすっかりずれてしまっている。何か口のあたりから管が出ている。生の鶏肉についてる管のような。血がまとわりついている。まずい。これは赤ん坊の口から出ているのか。布がかぶさっていてよく見えない。布をずらす。蛙のような目の下の体はラップにくるまっていた。ところどころ赤黒い。私が布を触ったことでラップも剥がれ、痛んだ皮膚が外気にさらされることになった。赤ん坊は静かに管を吐いた。さらに何か出てきた。にょろにょろとした細長くて白い物。ラップは戻さなければならない。剥がしてはいけなかった。どんどん赤ん坊から赤や黄色や緑の液体が流れ出て赤黒い管のようなものだけが残った。口から出たものはそのままだ。すっかり布が剥がれて気づいたが、この赤ん坊は2つの頭を持っていた。足があるべき場所に第二の頭がある。第一の頭より小さく浅黒い。友達を起こさなければならない。私は何もしていない。本当だよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます